吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Andre_Mehmari

【Disc Review】“Dorival” (2017) Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Andre Mehmari, Nailor Proveta

“Dorival” (2017) Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Andre Mehmari, Nailor Proveta
André Mehmari (Piano) Nailor Proveta (Alto sax, Clarinet) Rodolfo Stroeter (Contrabass) Tutty Moreno (Drums)

 ブラジリアンジャズの名手が揃ったDorival Caymi作品集。
 大将はJoyceの夫君Tutty Morenoでしょうか?それともAndré Mehmari
 いずれにしても“Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno、“nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso、“Nonada” (2008)などを制作した中核メンバー。
 上記の作品群からかなりの年月が経過し、ほんの少しエキセントリックに、言葉を変えればクリエイティブに変化した音。
 ベテラン陣はあまり変わっていないのかもしれませんが、André Mehmariのピアノが変わっているように思います。
 近年の彼の作品のようにクラシック色は強くなく、あくまでジャズピアニストな演奏。
 それも内面から出てくるモノを抑えきれないような、その場に止まれないような、激しい演奏。
 スローテンポで漂うような音の流れから始まり、徐々に飛び跳ね、突っ走るピアノ。
 過去のジャズカルテット作品でも、頭抜けた演奏力のピアノだけがぶっ飛ぶ場面はあったのですが、この期では彼のピアノが全体を支配しているようにも聞こえます。
 そんなピアノに寄り添うように伸びたり縮んだり、時に共に突っ走り、時に定常に引き戻すバンド。
 多くの場面でフロントに立っているのは流麗なサックス、クラリネットなのですが、後ろで動きまくるピアノに耳が行ってしまいます。
 郷愁漂うDorival Caymiのブラジリアントラディショナルなメロディとドラマチックな編曲、ハイテンションなジャズカルテットの演奏。
 企画、メンツどおりの心地よい、ほんの少しだけぶっ飛んだブラジリアンジャズ。
 なお、録音はノルウェー、OsloのRainbow Studio。
 言わずと知れたECMのホームグラウンド。
 ここまでの作品とは音の感じが変わってそれっぽい音?・・・・ではありませんね・・・?





 Andre Mehmariの参加作品、私が知る限り。
 他にもたくさんあるのでしょう。
 2017年は極めて多作。
 近年はクラシック色が強くなってきているように思いますが、いずれにしてもどれもハズレなしの名作、佳作揃いなのが凄いなあ・・・

edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) with Celio Barros
 “Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno 
nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso
“Canto” (2002)
 “Áfrico” (2002) Sérgio Santos
Lachrimae” (2003) 
Piano e Voz” (2004) with Ná Ozzetti
 “Ia Ia” (2004) Monica Salmaso
 “Sergio Santos” (2004) Sergio Santos
Continuous Friendship” (2007) with Hamilton de Holanda
 “Io So” (2007) Sergio Santos
de arvores e Valsas” (2008)
Veredas” (2006-2008) Omnibus
Miramari” (2008) with Gabriele Mirabassi 
 “Nonada” (2008) with Rodolfo Stoeter, Tutty Moreno, Nailor Proveta, Teco Cardoso
 “Litoral e interior” (2009) Sérgio Santos
Gimontipascoal” (2009, 2010) with Hamilton de Holanda
 “Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro (一曲のみ)
Canteiro” (2010, 2011)
Afetuoso” (2011)
 “Naissance” (2012) François Morin
Triz” (2012) with Chico Pinheiro, Sérgio Santos 
“Orquestra A Base De Sopro De Curitiba e André Mehmari” (2012)
"Macaxeira Fields" (2012)  Alexandre Andrés
 "Sunni-E" (2012) Renato Motha & Patricia Lobato (一曲のみ)
Arapora” (2013) with Francois Morin
Tokyo Solo” (2013)
“Angelus” (2013)
Ao Vivo No Auditorio” (2013) with Mario Laginha
Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014)
 ”Caprichos" (2014) Hamilton de Holanda (一曲のみ)
As Estacoes Na Cantareira” (2015)
 “Partir” (2015) Fabiana Cozza (一曲のみ)
"MehmariLoureiro duo" (2016) with Antonio Loureiro
Três no Samba” (2016) with Eliane Faria, Gordinho do Surdo
Guris” (2017) with Jovino Santos Neto
Am60 Am40” (2017) with Antonio Meneses
Serpentina” (2017) with Juan Quintero, Carlos Aguirre
Dorival” (2017) with Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Nailor Proveta
 "Macieiras” (2017) Alexandre Andrés(一曲のみ)


posted by H.A.

【Disc Review】“Ao Vivo No Auditório Ibirapuera” (2012) André Mehmari, Mário Laginha

“Ao Vivo No Auditório Ibirapuera” (2012) André Mehmari, Mário Laginha
André Mehmari, Mário Laginha (piano)

Ao Vivo No Auditório Ibirapuera
Estúdio Monteverdi [dist. Tratore]
2013-08-02


 ブラジル、ポルトガルのスーパーピアニストのDuo、ライブ録音。
 Mário LaginhaはスーパーボーカリストMario Joaoの夫君。
 彼女、あるいは共同名義の作品で、しなやかで柔らかな質感ながら強烈な疾走感のピアノを弾いている人。
 ポルトガル語圏のブラジルはもとより、アルゼンチン現代フォルクローレ系の“Andrés Beeuwsaert” (2015)でも楽曲が取り上げられていたり、どこか南米系と繋がっているのでしょう。
  André Mehmariよりも一回り以上年上のはず、柔らかな音の使い方も共通していて、南米のピアニストに影響が大きい人なのかもしれません。
 ピアノが二台の作品、音がぶつかってうるさくなるケースが無きにしも非ずなのですが、本作は違います。
 私的には“An Evening With Herbie Hancock & Chick Corea In Concert” (1978) Herbie Hancock & Chick Coreaに並ぶ心地よいコンサート。
 いずれも絶妙なバランス。
 短いイントロダクションを経て、フォルクローレ的な優しさに溢れたAndré Mehmariの名曲”Lagoa Da Conceição”からスタート。
 各人のオリジナル曲を中心に、とても優雅な音の流れ。
 クラシックの色はそこそこ、ジャズ~フォルクローレ~MPB的な色合いが強い感じ、ゆったりとしたセンチメンタルなメロディが中心。
 奇数拍子のフワフワとしたイメージが印象に残ります。
 抑え目ながら、要所では跳びはね、短く高速フレーズを散りばめているのがAndré Mehmari、オーソドックスにまとめているのがMário Laginhaなのでしょう。たぶん。
 いずれ劣らぬ名人芸。
 バトルではなく、上品なアンサンブルと、ピリッと効いたオブリガード、強烈なインプロビゼーション、ときおりの疾走と高揚、その他もろもろの交錯、あるいは融合。
 本作はもちろん、この二人が参加する作品はどれも名作です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Serpentina” (2017) André Mehmari, Juan Quintero, Carlos Aguirre

“Serpentina” (2017) André Mehmari, Juan Quintero, Carlos Aguirre
André Mehmari (Voice, Piano, Oberheim, Synth, Accordion, Harmonium, Koto, Viola de arco, Bandolim, Acoustic bass, Pandeiro, Pife) Juan Quintero (Voice, Guitar, Charango, Bombo, Percussion) Carlos Aguirre (Voice, Piano, Accordion, Fretless bass, Guitar, Percussion)



 ブラジルのAndré Mehmariと、アルゼンチン、現代フォルクローレのAca Seca TrioのJuan Quintero、現代フォルクローレのドン?Carlos Aguirreのトリオ作品。
 夢のなんとか・・・と書いてしまうのが憚られるような、あざといまでの組み合わせ。
 “Triz”(2012)André Mehmari, Chico Pinheiro, Sérgio Santosなんてブラジル人スーパーなトリオ作品もありましたが、それを上回るようなビッグネームなセッション。
 クラシックとジャズとMinasなAndré Mehmariと、元気系ポップスなフォルクローレなJuan Quinteroと、しっとり系フォルクローレのAndré Mehmari
 それらが交錯し混ざり合う音。
 穏やかな怒涛?のような全18曲。
 三人で概ね均等に楽曲を分け合い、他にブラジル曲、アルゼンチン曲を数曲。
 プロデューサーにAndré Mehmariのクレジット、また多くの楽曲でピアノを弾く彼の色が少々強いのかもしれません。
 が、さすがにつわものたち、いい感じでフュージョンし、André Mehmari諸作とは違う色合い。
 あの素晴らしくも強烈なピアノが続くと聞き疲れするかな・・・?と思っていたら、Carlos Aguirreの優しいピアノに変わってみたり、思い出したように水が滴るようなギターが聞こえたり、穏やかなだったり楽し気だったりのアコーディオンが聞こえたり・・・
 さらにはボーカリストが入れ替わりながらのさまざまなコーラスワーク。
 ・・・瑞々しい感性が有機的に絡み合いながら、自然に対するリスペクトとそこはかとない感傷、憂いを秘めた・・・とかなんとかの恥ずかしくなるような形容がそのまま当てはまってしまう音なのだから、困ってしまいます。
 André MehmariCarlos Aguirreがお互いに捧げ合っている曲もあり、まあ、そこまで演出しないでも・・・とも思ってしまいますが、それらがまた素晴らしい演奏なので、まあ、何と申しましょうか・・・
 全編、フワフワしていて、優しくて、センチメンタルで、でも前向きで・・・
 南米の郷愁感の極めつけ。
 ピアノを中心としたジャズ的インプロビゼーションのスペースもたっぷり。
 企画負けすると・・・?は全くの杞憂。
 大変失礼しました。
 期待以上の極上の出来。
 月並みな結論ですが、2017年の一番はこれでしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“Guris” (2016) Jovino Santos Neto, Andre Mehmari

“Guris” (2016) Jovino Santos Neto, Andre Mehmari
Jovino Santos Neto (piano, melodica, flute) Andre Mehmari (piano, harmonium, rhodes, bandolim)
Hermeto Pascoal (teakettle, melodica)

Guris
Jovino Santos Neto
Adventure Music
2017-07-21


 ブラジル人ピアニストJovino Santos Netoと、同じくAndre MehmariのDuo。
 Hermeto Pascoalの作品集。
 ブラジル系のアーティストにとって、Jobim、Joao Gilbertは言わずもがな、Egberto GismontiHermeto Pascoalも神のような人なのでしょう。
 ピアノ二台の音を基本として、フルート、メロディアなどで彩りを加える形。
 Hermetoさん本人も三曲ほどに参加し、得意の不思議な音を出してます。
 意外なのが二人のピアノの色合いが似ていること。
 大先輩方に敬意を払ってかどうか、Andre Mehmariが抑え気味なこともあるのでしょうが、随分落ち着いた演奏。
 実はJovino Santos Netoからの影響も小さくないのでしょうかね?
 子弟か兄弟のような、ぶつかることのない、自然な二台のピアノの絡み合い。
 でも、たまに高音でぶっ飛んだ音が聞こえるのは、いつものMehmariさんなのでしょうね・・・?
 ん・・・?
 基本的にはHermeto Pascoalの色合いのブラジリアンフュージョンというか、インスツルメンタルMPBなのだけども、全編を通じたジャジーなムード、要所でのクラシック香りは、Jovino Santos Neto、Andre Mehmariそれぞれの得意な色合いが出ている演奏、場面なのでしょう。
 Hermeto Pascoalのメロディの中でそれらが交錯する音の流れ。
 端正で上品、いろんな要素が交錯するピアノミュージック。
 ボッサやサンバとは違うけども、全体を漂う郷愁感。
 もちろんブラジル風味120%。





 Andre Mehmari参加作品、私が今知る限り。
 他にもたくさんあるのでしょう。
 ジャズだろうがクラシックだろうが、何でも凄いピアノを弾いてしまう人。
 当然、駄作なし。
 徐々にジャズ色が薄くなり、クラシックっぽさ、またタッチが強くなってきているようにも聞こえます。
 私的にはオムニバス盤“Veredas”あたりまでの柔らかい音楽、ピアノが一番好み。
 もちろん近作も格調高くて素晴らしいのですが。

edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) with Celio Barros
 “Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno 
nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso
“Canto” (2002)
 “Áfrico” (2002) Sérgio Santos
Lachrimae” (2003) 
Piano e Voz” (2004) with Ná Ozzetti
 “Ia Ia” (2004) Monica Salmaso
 “Sergio Santos” (2004) Sergio Santos
Continuous Friendship” (2007) with Hamilton de Holanda
 “Io So” (2007) Sergio Santos
de arvores e Valsas” (2008)
Veredas” (2006-2008) Omnibus
Miramari” (2008) with Gabriele Mirabassi 
 “Nonada” (2008) with Rodolfo Stoeter, Tutty Moreno, Nailor Proveta, Teco Cardoso
 “Litoral e interior” (2009) Sérgio Santos
Gimontipascoal” (2009, 2010) with Hamilton de Holanda
 “Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro (一曲のみ)
Canteiro” (2010, 2011)
Afetuoso” (2011)
 “Naissance” (2012) François Morin
Triz” (2012) with Chico Pinheiro, Sérgio Santos 
“Orquestra A Base De Sopro De Curitiba e André Mehmari” (2012)
"Macaxeira Fields" (2012)  Alexandre Andrés
 "Sunni-E" (2012) Renato Motha & Patricia Lobato (一曲のみ)
Arapora” (2013) with Francois Morin
Tokyo Solo” (2013)
“Angelus” (2013)
Ao Vivo No Auditorio” (2013) with Mario Laginha
Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014)
 ”Caprichos" (2014) Hamilton de Holanda (一曲のみ)
As Estacoes Na Cantareira” (2015)
 “Partir” (2015) Fabiana Cozza (一曲のみ)
"MehmariLoureiro duo" (2016) with Antonio Loureiro
Três no Samba” (2016) with Eliane Faria, Gordinho do Surdo
Guris” (2017) with Jovino Santos Neto
Am60 Am40” (2017) with Antonio Meneses
Serpentina” (2017) with Juan Quintero, Carlos Aguirre
Dorival” (2017) with Tutty Moreno, Rodolfo Stroeter, Nailor Proveta
"Macieiras” (2017) Alexandre Andrés


posted by H.A.




【Disc Review】“Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014) Andre Mehmari

“Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul” (2014) Andre Mehmari
Andre Mehmari (piano)
Neymar Dias (bass) Sérgio Reze (drums)

Ernesto Nazareth Ouro Sobre Azul
Andre Mehmari アンドレメーマリ
Estudio Monteverdi
2014-10-05


 Andre Mehmari、ブラジルのピアニスト、作曲家Ernesto Júlio Nazarethの作品集。 
 ソロピアノ(+α)。
 Ernesto Júlio NazarethはブラジルのChopin、あるいはブラジルのScott Joplinと呼ばれている人のようです。
 もちろんクラシック中心の作品。
 クラシックについては全く疎いので、その観点での善し悪し、その他諸々は分かりません。
 が、とても優雅でジャズの耳にとっても素敵な音楽。
 微妙なタメと強烈な疾走が交錯する音の流れ。
 全くのクラシック作品ですがAndre Mehmariの音楽だなあ・・・と思います。
 もちろん彼のルーツの大きな部分がErnesto Nazarethなのでしょう。
 初期の作品からクラシックの色合いは強いのですが、近年はそれが強くなっているようにも感じます。
 バラード的なスローテンポな曲もちろん、Scott Joplinよろしくラグタイムっぽかったり、コミカルだったり、決して高尚な感じでだけでもなく、ノスタルジックな香りをふりまきつつ進む音楽。
 ・・・と思っていたら、終盤に乱入するドラム、ベース、エレピのアバンギャルド一歩手前~ジャズピアノトリオな演奏。
 とても素敵です。
 こんな音が低く流れているカフェがあれば最高です。
 さて、私もいつかクラシックを好んで聞く日が来るのでしょうか・・・?
 さて・・・?


※ライブ映像から。


posted by H.A.


【Disc Review】“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari

“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari
André Mehmari (Piano, Accordion, Bandolim, Bass, Bateria, Cello, Clarinet, Cravo, Fender Rhodes, Flute, Guitar, Mellotron, Organ, Palmas, Percussion, Synthesizer Bass, Viola, Violin, Vocals)
Teco Cardoso (Baritone Sax) Gabriele Mirabassi (Clarinet)
Mônica Salmaso, Sérgio Santos (Vocals)



 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの2008年作。
 南米系の音源は廃盤になるのが早く、その中にはとんでもない名作があるのですが、このアルバムはその最たる作品。
  現在も流通しているであろうオムニバスアルバム“Veredas” (2006-2008)にその一部、一番よさそうなところが収められてはいるのですが、アルバムとしての素晴らしさはまた別格。
 タイトルは「木?とワルツ?」。
 その通りに全編フワフワとした優雅なビートとナチュラルな音の流れ。
 サンバ、ボッサではない、フォルクローレな雰囲気。
 計算しつくされたと思われるアレンジと、オーバーダビングによる自身での演奏、効果的な彩りを加えるゲストの音。
 柔らかな管、弦のアンサンブルと、要所に配置される自身の声、最高のボーカリストMônica Salmaso, Sérgio Santosの声。
 シンプルな編成のピアノトリオ、あるいはソロピアノではなく、いろんな優し気な音が絡み合いながら流れていく時間。
 センチメンタルだけども、暗さや絶望感とはほど遠い優しいメロディ。
 全曲、名曲名演。
 全編を通じた浮遊感と穏やかな郷愁感。
 哀し気なようでとても前向きな、あるいは、前向きなようで悲し気な音の流れ。
 南米音楽共通の質感ですが、その繊細でデリケートな版。
 そんな空気の中を漂うような、零れ落ちてくるようなピアノ。
 スローでは十二分にタメを効かせ、時には突っ走り・・・
 少し前の“Lachrimae” (2003)の素晴らしさに多言は無用ですが、そちらは少々ジャズピアノトリオ寄り。
 この後の作品“Miramari” (2008)以降はクラシックの色合いがより強くなっているように感じます。
 その分水嶺的な作品かもしれません。
 ジャズとクラシックとフォルクローレの最高のバランスのフュージョンミュージック。
 もちろん一番強い成分はブラジル的南米的フォルクローレ。
 どこを取り出しても、とても優雅で美しい音。
 この人の音はいつもどこか遠くを眺めているような音。
 どこを切り出してもその真骨頂。
 これはもう最高でしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“Três no Samba” (2016) Eliane Faria, André Mehmari, Gordinho do Surdo

“Três no Samba” (2016) Eliane Faria, André Mehmari, Gordinho do Surdo
André Mehmari (Piano) Eliane Faria (Voice) Gordinho do Surdo (Surdo)

Tres No Samba
Andre Mehmari
Imports
2017-03-03


 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariのとても穏やかなサンバアルバム。
 ボーカルとパーカッションのトリオ。
 少々クラシックに寄せ気味のピアノに、低い音で静かにビートを刻むスルド。
 その上を踊るボイス。
 ウイスパー系、可憐系ではなく、ちょっと貫禄ある系の落ち着いたしっとり系の声、決して大きな声は出さないブラジル系特有の優しく穏やかな歌。
 サンバ系の伝統曲、スタンダード曲が並んでいるのだと思います。
 どこかで聞いたことがある、誰かが歌っていたメロディばかりなのだけども、思い出せない・・・
 もちろんサンバ特有の明るいようで切ないような、いわゆるサウダージ、郷愁感・・・
 そんな感じで普通の現代サンバ作品と思いきや、普通でないのは、ピアノの動きゆえ。
 この編成であれば、本来は器楽を背景にしてボーカルが踊るはずなのですが、踊り、跳ねまわり、突っ走るのはピアノ。
 スタートはクラシカルな上品なムード、ビートが乗ってくるとジャズなグルーヴが加わり、突っ走り、転げまわるような凄まじい動き。
 バラードでは一転、たっぷりとタメが効いた伸び縮みするビート。
 歌の後ろのオブリガードだけでも普通ではない感たっぷりなのですが、さらにインプロビゼーションのスペースもたっぷり。
 遠いところに飛んで行ってしまいそうになるピアノを大地に引き留めようとしているようなスルド。
 ボーカルさえもそんな役回りを演じているように聞こえます。
 初期~“Veredas” (2005-2008オムニバス)あたりまでのピアノには丸みを感じましたが、この頃は鋭さが際立ちます。
 そんなアグレッシブなピアノを暖かく見守るようなスルドとボイス。
 これしかないようなバランスなのかもしれません
 全体を眺めれば静かで穏やかで優しい音。
 優しく、かつプログレッシブな、とても素敵な現代サンバ。




posted by H.A.

【Disc Review】“edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) André Mehmari, Celio Barros

“edição comemorativa: 10 anos de lançamento” (1998) André Mehmari, Celio Barros
André Mehmari (piano, flute, guitar, synthesizer, Rhodes, bandolim, percussion, etc.) Celio Barros (bass)
Sergio Reze (drums) Luca Raele (clarinete) Renato Martins (percussion)

Andre Mehmari & Celio Barros
Andre Mehmari アンドレメマーリ
Caravelas
2014-06-12


 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmari、若き日の、同じくブラジル人ベーシストの双頭リーダー作。
 当時の作品、アルバムからのオムニバスなのだと思いますが、詳細は分かりません。
 トリオ、Duo、ソロ、ギターやアコーディオンを交えたアンサンブルなどなど、さまざまな編成でのさまざまな演奏。
 穏やかで優し気なメロディと瑞々しく美しい音。
 この人ならではの独特の浮遊感、遠くを見るような郷愁感。
 ”Forcas D'Alma” (1999) Tutty Moreno、“nem 1 ai” (2000) Monica Salmasoなどの参加作品を聞くと、初期はジャズっぽい演奏なのですが、そればかりではないようです。
 本作、確かにピアノトリオ、あるいはベースとのDuoで現代的ながらオーソドックスなジャズな演奏も目立ちます。
 それらはBill Evansの香りが漂う最高のジャズピアノ。
 が、クラシック風あり、奇数拍子のフォルクローレ風あり、優しく穏やかなポップス風のインスツルメンタル曲あり、現代音楽的なアバンギャルド風味あり、バンドリンなどを交えたブラジリアンエスニックな演奏あり・・・
 ってな感じで、後のAndré Mehmariの音楽がこの時点で揃っています。
 ないのは歌のみ、でしょうか。
 ピアノはこの時点から圧倒的な演奏力。
 時折見せる、欧米の若手代表選手?Leszek_MozdzerTigran_Hamasyanに匹敵するような、指に加速装置が付いているとしか思えないような疾走感。
 欧米の彼らと比べるとトゲや毒気が薄く、身構えて聞かなくてもいいのがこの人の色合い。
 さらに要所でしっかりとタメが効いて、伸び縮みするようなビート。
 本作では一曲一曲が短いこともあってか、全編通じて凄まじい・・・といった感じではありません。
 また、全体で物語を綴るような構成は、まだありません。
 が、只モノではない感が漂う演奏揃い。
 冒頭のDuo、ルバートでのバラード”Prologo”から、クラシックとジャズとミナスが入り混じるような瑞々しくも美しい音。
 アグレッシブにあちこちに跳びまわるソロピアノで演奏するGismontiナンバー"Loro"なんて最高。
 やはりBill Evansもさることながら、Egberto Gismonti、あるいはKeith Jarrettからの影響は多大だったのかなあ、と思ったり、思わなかったり。
 ガシガシ弾き倒しているようでフワフワした浮遊感があるのものこの人ならではの色合い。
 ベースのCelio Barrosはおそらくジャズの人なのでしょう。
 しっかりしたグルーヴに硬軟織り交ぜカッコいい音使い。
 全部Duoで作ってしまえば、また違った凄い作品になりそうな予感。(あるのかな?)
 全編通じた浮遊感とセンチメンタルなメロディは、後の傑作“Lachrimae” (2003)が生まれる予感、十分。
 やはりこの期からタダモノではありません。
 ・・・ってもこれも廃盤なのかな?

※別の時期のトリオから。


 posted by H.A.



【Disc Review】"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro

"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro
André Mehmari (Piano, synth, electric piano, bass flute, guitar, charango, bandolim, accordion, voice) Antonio Loureiro (Drums, vibraphone, voice)
 
アンドレ・メマ





 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの最新作は、同胞のビブラフォンを中心としたマルチ楽器奏者とのDuo。
 二人ですが、例によってオーバーダビングも含めてコンボ作品に近い音作り。
 近作ではクラシックの色合いが強い作品が続いている印象がありましたが、本作もその色合いながら、ビート感も効いた曲が多く、ジャズ、ポピュラーミュージックの色合いが戻ってきた感じでしょうか。
 Antonio LoureiroはAndré Mehmariよりも一回り若い若手。
 ミナス出身のようで、なるほど、オリジナル曲の展開やそれに乗ってくるvoiceが”Still Life (Talking)” (1987) Pat Metheny的です。(Pat Methenyが影響を受けた側でしょうから、そんな形容は妙なのですが・・・)
 ふわふわとしたビブラフォンもそんな感じの浮遊感の強い音使い。
 楽曲は二人のオリジナル、共同名義のインプロビゼーション?が概ね三分の一ずつ。
 どれも淡い色合いのセンチメンタルなメロディ揃い。

 冒頭から哀愁が漂うメロディを土台に、柔らかく空から舞い落ちてくるようなピアノの音と、その周囲を漂うようなビブラフォン。
 さらには、さりげないハミングに、これまたさりげないクリーントーンのエレキギター。
 続くはミナス的な幻想感とドラマチックな交錯する漂うような楽曲。
 これはたまりませんねえ。
 以降クラシック的な演奏も入り混じりながら、美しい演奏が続きます。
 同時期?に発表された似たテイストのアルゼンチン人アーティストAndrés Beeuwsaertの “Andrés Beeuwsaert” (2015)と比べると、瑞々しさは同様ながら、そちらがせせらぎのような穏やかで緩やかな音だとすれば、こちらは流れの緩急の変化が強い渓流のような音。
 穏やかなようで性急なようで、突っ走ったり緩んだり。
 これ見よがしな派手な展開はありませんが、とても繊細で上品な音。
 ジャズでもクラシックでもポップスでもフォルクローレでもブラジル伝統音楽でもない、それらが混ざり合ったAndré Mehmariならではの音。
 終盤に集められたピアノとドラムによるインプロビゼーション集?はさまざまな表情。
 メロディアスなバラード風から、少々強面なフリージャズ風の演奏まで。
 二、三分の長くはない演奏を繋ぎつつ、何らかのドラマを描いているのでしょう。
 あの圧倒的なジャズピアノが出てこないかあ・・・と想わせながら、ピアノの強打で幕を閉じます・・・
 わかりやすさ、取っつきやすさなら“Lachrimae” (2003) André Mehmari、あるいは似た色合いの別アーティストの近作ではAndrés Beeuwsaert の“Andrés Beeuwsaert” (2015)もそう。
 が、格調高さなら本作。
 どの作品もとても優雅です。




posted by H.A.

【Disc Review】“nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso

“nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso
Monica Salmaso (Vocal)
Nailor Proveta (sax, clarinet) Andre Mehmari (piano etc.) Rodolfo Stroeter (bass) Tutty Moreno (drums) Toninho Ferragutti (acordion)

NEM 1 AI
MONICA SALMASO
DISCMEDI
モニカ サルマーゾ


 ブラジル、サンパウロのボーカリストMonica Salmaso、MPB作品。
 サポートはジャズコンボ。
 ドラムがJoyceの夫君Tutty Moreno。
 ピアノがAndre Mehmari。
 これはMPBというより、少々クラシックの色合い、フォルクローレの色合いも交錯するコンテンポラリージャズ。
 同時期、ボーカル抜きの同メンバーでジャズ作品“Forcas D'Alma” (1999) Tutty Morenoもあります。
 南米系しっとり系のジャズ~ポップスは、柔らかくて明るいECMといったイメージの作品が多いのですが、まさにそんな一作。
 バンド全体がふわふわと漂い、ゆらゆらと揺れる、強烈な浮遊感、とても優雅で柔らかなグルーヴ。
 その中を美しいボイスとピアノ、その他が駆け巡る・・・、そんな音楽。
 ボーカルはブラジル音楽定番、少しスモーキーな優しい声。
 クラシックの香りも漂わせつつ、フォルクローレな色合いも強い歌。
 彼女の作品、あるいはAndre Mehmariの作品はそんなテイストが多いのですが、リオのボッサ、サンバ系、ミナス系、バイーア系などに対して、サンパウロ系?なんてのがあるんでしょうかね? 
 ピアノのAndre Mehmariが言わずもがなの圧倒的な演奏。
 美しい音、端正なクラシックの香りを漂せつつ、強烈な浮遊感の音使い。
 ふわりと立ち上がって、静かに消えてゆく繊細なタッチ、スローではたっぷりのタメを効かせて、アップテンポでは強烈な疾走感、上品ながら意外性のある強烈なオブリガート、思い出したように現れる速いパッセージ・・・
 この頃のAndre Mehmariは本当に凄い。
 もちろん今も凄いのですが、この頃の方がジャズの色合いが強い感じ。ジャズ慣れしてしまった耳にはこの方が馴染みます。
 たくさんではありませんが、管楽器含めてエキサイティングなジャズ的インタープレーの場面もあります。
 これまた膨大なジャズの演奏の中でもなかなか聞けないような素晴らしい演奏。
 楽曲は柔らかくてメロディアスなブラジルの巨匠その他の曲のカバー中心。
 全く普通のアレンジなんだけど、出自が気にならないほどのオリジナリティ。
 不思議ですが、Andre Mehmariが絡む作品にはそんな演奏がたくさん。“Lachrimae” (2003)とかね。
 この作品、しばらくお蔵入りしていたらしいのですが、なんでだろ?
 ブラジル系のボーカルものでボッサではないもの、と言われると一押しするのはこれかな、と思う素晴らしいアルバムだと思います。
 ブラジル音楽ファンからは“Voadeira” (1999)あたりの方が好評なのかな?
 ジャズファンからすれば、こちらも大傑作。

※本投稿は2016/05/28から移動しました。



posted by H.A.
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【吉祥寺JazzSyndicate】
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コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

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