吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2010-2019

【Disc Review】“Daylight Ghosts” (2016) Craig Taborn

“Daylight Ghosts” (2016) Craig Taborn
Craig Taborn (piano, electronics) 
Chris Lightcap (bass) Dave King (drums) Chris Speed (tenor saxophone, clarinet)
 
Daylight Ghosts
Craig Taborn
Ecm Records
2017-02-10
クレイグ・タボーン

 Craig Taborn、ECMでの第三作、サックス入りカルテット作品。
 不思議系、クール系フリー的ジャズ。
 客演も多くすっかりECMの人になったCraig Taborn。
 メンバーは前作“Chants” (2012)から一新していますが、本作もすべてアメリカ人でニューヨークでの録音。
 サックスはいかにも現代的なクール系、Mark Turnerっぽい感じ。
 ドラムのDave Kingは一世を風靡したロック的ジャズピアノトリオ”The Bad Plus”のメンバーでしょうか?
 The Bad Plusのピアニスト、Ethan IversonもECM作品"All Our Reasons" (2012) Billy Hartなどに客演していますので、Eicherさん、意外にもThe Bad Plusのファンだったりして。
 さておき、本作、ビートは定常、楽曲もあるので難解ではなく、フリージャズではないのでしょうが、そのメロディラインが不安感系、陰鬱系、さらにとっ散らかっている系。
 なんだか不思議で非現実的な妖しい空気感は前作“Chants” (2012)と同様。
 が、前作と比べると躍動感が強く、その分静謐ではない音。
 冒頭からハイテンション。
 強烈にグルーヴするビートの上を疾走しキラキラと舞い散るようなピアノと、少々陰鬱なサックスのインタープレー。
 美しい音、テンポが上がるとカミソリのような切れ味のピアノ。 
 かといって、ドカーンとやってしまうわけではなく、あくまでクールに淡々と綴られる音。
 そんな演奏が続きます。 
 相変わらず楽曲のメロディやフレージングに愛想がはありませんが、慣れてくると、グルーヴと散文的なインタープレーの微妙なバランス、アンバランスが不思議な心地よさ。
 時折のミニマル的なリフレインと徐々にテンションを上げていく構成が非日常的な陶酔感を誘います。
 終盤、やっと穏やかなバラード、静謐な音の流れが続き、ここまでのECMのCraig Taborn的な音。
 そのまま電子音も交えながら、テクノ的ミニマル的リフレインの繰り返し、陰鬱なサックスのロングトーンが鳴り響きつつ、テンションを上げて幕。
 不思議度120%。 
 この人、すっかりECMに定着しましたが、デビュー作“Craig Taborn Trio” (1994)、あるいは盟友James Carterとの “JC on the Set” (1993)、“Jurassic Classics” (1994)などでゴリゴリのジャズをやっていた時代とは全く別人のような音。 
 決して暗くはないのだけども、心の深淵の闇をのぞいてきました・・・ってな感じの変化。
 素直な4ビートはもう無いのだけども、それでもなんだかんだでジャズっぽさが強く残っているのもこの人の色合いでしょう。
 本作のタイトルは“Daylight Ghosts”。
 オカルトチックなタイトルの曲が並びます。
 でもあくまでクールで、なんだか明るい感じもあります。
 確かにタイトルのような音です。
 



posted by H.A.


【Disc Review】“Chants” (2012) Craig Taborn

“Chants” (2012) Craig Taborn
Craig Taborn (piano)
Thomas Morgan (bass) Gerald Cleaver (drums)
 
Chants
Craig Taborn
Ecm Records
2013-04-23
クレイグ・タボーン

 Craig Taborn、ECMでの第二作、ピアノトリオ作品。
 “Avenging Angel” (2011)はソロピアノでのとても静かなフリージャズでしたが、本作はオーソドックスな編成のトリオ。
 ドラムとベースは“Wislawa” (2012) Tomasz Stankoと同じメンバー、同じ月、同じくニューヨークでの録音。
 同じくトリオでの20年ほど前の作品、現代的モダンジャズ作品“Craig Taborn Trio” (1994)とは全くテイストが違うことはもちろん、“Avenging Angel”とも違う音。
 何とも言えない不思議な質感は同様ですが、本作はキッチリビートが効いています。
 冒頭から推進力のあるベースとドラム、力強いピアノ。
 が、普通にテーマ~インプロビゼーションの展開ではなく、不思議で不穏な雰囲気のリフの繰り返しが印象に残る音。
 一曲目はフリーな感じのインプロビゼーションが前面に出ますが、二曲目などは1分30秒ほど、ひたすら同じリフの繰り返し。
 以降はインプロビゼーションとなりますが、リフと強いグルーヴが印象に残ります。
 これをミニマル的と呼ぶのかどうかはわかりませんが、なんだか新感覚な演奏。
 三曲目はテンポ落としたバラード演奏、ビートは定常なのですが、美しい右手の音と不協和音を出す左手、どこに落ち着いていくのか先が読めない不思議な展開。
 以降、アップテンポ、スローテンポを入り混ぜながら、不思議で妖しいリフ、聞き慣れない不安感が漂う、かといって混沌でも激しくもない不思議な演奏のオンパレード。
 中盤から静謐で漂うようなフリージャズ的な場面が続き、こちらの方がECMのCraig Taborの感じ。
 全編通じてジャズ的ではあるのですが、ビート感はさておき、オーソドックスなメロディ、コードの流れはないし、かといってフリージャズでもない不思議な演奏が続きます。
 それでも暗くはならない質感は、おそらく三人とも、元来がアメリカンなジャズの人だからでしょうかね。
 とりわけ次世代のAnders Jorminと期待しているThomas Morganのベースが、アップテンポはもちろん、スローテンポでも上品で穏やかな、いい感じのグルーヴを引き出しているように思います。
 アルバムの締めは不思議なリフが少しずつ変化しながらひたすら繰り返されつつ、ドラムソロ、ベースソロで幕。
 やはりミニマル的&フリー的なジャズを目指しているのでしょうかね?
 とても不思議な「ジャズ」ピアノトリオ。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Avenging Angel” (2011) Craig Taborn

“Avenging Angel” (2011) Craig Taborn
Craig Taborn (piano)
 
Avenging Angel
Craig Taborn
Ecm Records
2011-06-07
クレイグ・タボーン

 アメリカのピアニストCraig Taborn、ECMでの第一作、ソロピアノ。
 近年のECM作品でよく見かけますが、元々ゴリゴリサックスのJames Carterのサポートでガンガンゴンゴン、現代的ぶっ飛びモダンジャズしていたはずで、どうもECMとはイメージが合いません。
  “JC on the Set” (1993) James Carter、”Craig Taborn Trio” (1994)でデビューしたのだと思いますが、近いタイミングのECM制作“Nine to Get Ready” (1997) Roscoe Mitchellに参加していて、フリージャズはもちろん、ECMとも浅からぬ縁はあり。
 Art Ensemble of Chicago系のひとだったのかあ、と納得至極。
 本作はECMらしく静かなフリージャズ。
 フリーインプロビゼーション集かもしれません。
 ビートの効いた演奏もいくらかありますが、フワフワと漂うような抽象度の高い演奏が中心。
 静かで間の多い音。
 キラキラと舞い降りてきて、空間を漂うような音の流れ。
 普通にキレイな展開になりそうで明後日の方向に動いていく音。
 抽象的なようで意味不明かと言われればそうでもない微妙な色合い。
 一般的な感覚でのメロディアスな演奏はありませんが、決して暗い感じでも深刻な感じでもありません。
 さすがにECM、クラシックの感じもありますが、ヨーロッパの人とは少しムードが異なります。
 アメリカン的なカラッとした感じ、力強さもそこかしこに。
 かといってジャズな感じ、ブルージーな感じはほとんどなく、摩訶不思議な音の流れ。
 穏やかな非日常感。
 夜ではなくて昼下がり。
 ロマンチックでもメロディアスでもありませんが、アーティスチック。
 現代美術の展示場、白い壁の明るく静かな広い空間が似合いそうです。
 タイトルは「復讐の天使」?。
 タイトル曲などはそんな感じもありますが、基本的には静かで美しいフリージャズ。
 ECMマジックに掛かったCraig Taborn。
 但し、少々明るい色合い、ハードボイルドな感じがアメリカンな感じ。
 希少な色合いなのかもしれません。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Time Is A Blind Guide” (2015) Thomas Strønen

“Time Is A Blind Guide” (2015) Thomas Strønen
Thomas Strønen (drums, percussion)
Kit Downes (piano) Håkon Aase (violin) Ole Morten Vågan (double bass) Lucy Railton (cello) Siv Øyunn Kjenstad, Steinar Mossige (percussion)

Time Is a Blind Guide
Thomas Stronen
Imports
2015-10-30


 ノルウェーのドラマーThomas Strønen、ストリングス入りのコンテンポラリージャズ。
 先の“Parish” (2004)から、間にサックスとのDuoユニット”Food”の作品が何作かありますが、リーダー作としては十年以上間を空けた久々のアルバム。
 それらの作品からすれば、現代のヨーロピアンフリージャズ御用達のドラマーのイメージ、実際その通りなのかもしれませんが、本作は自作の楽曲を中心としたメロディアスな演奏も沢山収められています。
 妖し気なムードはここまでの諸作そのままに、メロディ、展開が明確な楽曲が目立つ分、わかりやすく、フリージャズ色は薄くなっています。
 むしろ穏やかで優しい音楽。
 変則な編成ですが、ピアノトリオにチェロとバイオリンがフロントのクインテット+パーカッションと見えなくもありません。 
 フリーな場面はほどほど、不協和音もほどほど、半数以上は明確なメロディのあるフリーではない演奏。
 冒頭は意外にも「定常」なビート、美しいピアノと強い緊張感のストリングスが交錯するハイテンションなジャズ。
 Jack Dejohnetteを想わせるヒタヒタと迫りくるグルーヴ、美しいピアノ、緊張感含めて1970年代のECM戻ってきたようなムードもあります。
 もちろん全体を眺めればリーダーのパーカッションは、基本的には繊細かつ変幻自在ないつもの色合い。
 冒頭曲などの一部を除けば、なかなか定常なビートは出しません。
 バンドのビートが定まってもパーカッションだけがフリー、なんて場面もちらほら。
 ま、リーダーだもんね。好きに表現してもらいましょう。
 ストリングスはオーソドックスなアンサンブルではなく、妖しく緊張感を醸し出す系。
 バイオリンが胡弓に聞こえてしまう不思議感。 
 フリーなパーカッションとあわせて、崩れそうで崩れない、危うくスリリングな場面もしばしば。
 そこから徐々にビートが定まっていき、中盤から疾走する”I Don't Wait For Anyone”など、最高にカッコいい。
 なぜかPat Metheny&Lyle Mays風の雰囲気だったり・・・
 ECMの定番ルバートでのスローバラードもあり、ストリングスを絡めて妖しさ倍増。
 初めて聞くイギリス人ピアニストKit Downesのパキパキした美しい音、フレージングもいい感じです。
 全曲オリジナル曲、キッチリしたメロディの曲は、ノルウェーの人らしく郷愁感を誘う懐かし気なメロディがいくつも。
 やはりノルウェーの人に染み込んでいるメロディはそんな感じなのでしょう。
 なぜか日本の民謡、童謡にも通じるメロディ。
 やはり、全体通じて、ここまでの作品とはかなり印象が異なります。
 フリーな演奏が散りばめられた、優しくメロディアスなジャズ。
 懐かしさ、安らぎと、想像力を搔き立てる抽象性、先が読めないスリルとのバランス。
 このバランスは希少、とても素敵だと思います。



  

posted by H.A.

【Disc Review】“Libertango in Tokyo” (2011) Naoko Terai, Richard Galliano

“Libertango in Tokyo” (2011) Naoko Terai, Richard Galliano
Naoko Terai (violin) Richard Galliano (accordion, bandneon) 
Stephane Logerot (bass) Orchestra Camerata Ducale

リベルタンゴ・イン・トーキョー
寺井尚子
EMIミュージックジャパン
2011-12-21


 寺井尚子、Richard GallianoのPiazzollaトリビュート、Tokyo Jazzでのライブ録音。
 ベースを加えたトリオを中心としてストリングスがサポートする形。
 企画だけ見ると、あるいは“Libertango”なんてタイトルを見ると、ちょっと引いてしまう感もあるのですが、これがエキサイティングでカッコいい演奏。
 冒頭の“Libertango”から激しい演奏。
 この曲、私的には食傷気味で無意識に避けてしまうのですが、このバージョンはカッコいい。
 フロントのお二人のスムース&強烈な疾走感、ジェットコースターのような演奏。
 基本的には打楽器、ピアノがいないトリオの演奏に、ストリングスが彩りを加えるぐらいのバランスですが、強烈です。
 激情系のバイオリンがフロントに立ち、背後で強烈なグルーヴを作り、時に突っ走るRichard Galliano。
 激しい展開、ブチ切れ気味の流れにしばしばなりつつも、あくまでスムース。
 気がついていませんでしたが、お二人、似たタイプなのかもしれません。
 トゲや毒が少ないのも共通点でしょうか。 
 ビート感を含めて相性バッチリでしょう。
 トリオのみ強烈な疾走感、エキサイティングな場面もしばしば。
 トリオだけで全部やってしまってもよかったんじゃない、と思ったり、思わなかったり。
 Piazzolla三曲に他はRichard Gallianoのオリジナル中心。
 タンゴ風のRichard Gallianoのオリジナル曲になると、ストリングスも全開。
 哀感、緊張感、その他諸々Piazzolla風ではあるものの、いかにもフレンチっぽい、明るくてオシャレな感じもちらほら。
 またジャズ的なインプロビゼーションのスペースがたっぷり。
 二人ともキッチリとした起承転結に強烈な疾走感のソロ、さらに終盤はブチ切れ気味の激しさと興奮。
 もちろん重厚なイメージのPiazzollaバンドよりも軽快です。
 それら、ジャズでもタンゴでもない空気感あたりで好みがわかれるのかもしれませんが、バランスのとれた素晴らしい演奏だと思います。
 締めはタンゴの定番”La Cumparsita”に、ストリングスが映える名曲”Oblivion”。
 完成度の高い演奏に加えて、エンターテイメントとしてもキッチリまとまっています。
 お二人とも人気があり過ぎて、あるいはポップな演奏が出来てしまうだけに、マニアな人々からは距離を置かれる感じもあるのですが、素晴らしいアーティスト、演奏だと思います。
 ジャズからタンゴへ入っていくにはちょうどいい入口なのかもしれません。
 数えきれないぐらいにあるのであろうPiazzollaトリビュート作品、私が知っているのはごく一部だけですが、このアルバム、お気に入りの最右翼、かな?




posted by H.A.
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