吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2010-

【Disc Review】”Human” (2020) Shai Maestro

”Human” (2020) Shai Maestro

Shai Maestro (paino)
Jorge Roeder (bass) Ofri Nehemya (drums)
Philip Dizack (trumpet)

Human
Shai Maestro
ECM
2021-01-29


 イスラエルのピアニストShai Maestro、ECMレコードでの第二作。
 前作“The Dream Thief” (2018)のトリオにアメリカントランペッターが加わるオーソドックスなワンホーンカルテット編成。
 前作と同様、とても繊細でメロディアスなコンテンポラリージャズ。
 浮遊と疾走の交錯。
 軽快で明るい色合いのピアノはMarcin Wasilewski的。
 紗が掛かったような音のトランペットが加わり、ECMでのTomasz Stanko諸作、それらから深刻さ気難しさを排除し明るくしたようなイメージ。
 さりげなく流れるフォーキーな空気感がKeith Jarrettっぽい感じがしないでもない。
 が、複雑ながらも軽快で浮遊感たっぷりなビート感がとても現代的。
 ECMでのお約束、漂うようなフリービート、ルバートでのスローバラードがちりばめられ、アップテンポになってもあくまで抑制的。
 とても上品。
 そんな中に、終盤に向けてテンションとスピードを上げていく超絶疾走が何曲か。
 とてもドラマチック。
 徹底的に熱くなっているようで、埃っぽさや脂っこさはなし。
 痛快、爽快。
 前作と同様、ジャズスタンダードを一曲収めるのはこの人の流儀なのでしょうか、本作では”In a Sentimental Mood”。
 複雑怪奇に変化したビート、メロディも、これまた極めて今風なジャズ。
 全編に流れるほのかな哀感、懐かしい感じ、ほんの少しの違和感はイスラエルなエキゾチシズムでしょうか。
 全部合わせて今風Saudade。
 複雑にしてさまざまな表情。
 が、気難しさなし、あくまでメロディアスでノーブルなコンテンポラリージャズ。
 名演。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Characters On A Wall” (2019) Louis Sclavis

“Characters On A Wall” (2019) Louis Sclavis

Louis Sclavis (Clarinets)
Benjamin Moussay (Piano) Sarah Murcia (Double Bass) Christophe Lavergne (Drums)

Characters On A Wall
ECM Records
2019-09-20


 フランスのクラリネット奏者Louis Sclavis、2019年作、オーソドックスなジャズ編成カルテット。
 本作では先端エレキギターもバイオリンもエレピも出てきません。
 そんな普通な編成で、普通に寄った摩訶不思議なLouis Sclavisワールド。
 例の妖しい旋律を奏でるクラリネットと、あくまでメロディアス、不協和音までが美しいピアノが絡み合う美しいコンテンポラリージャズ。。
 ECMでのお約束、ルバートでのスローバラードの時間もたっぷり。
 Benjamin Moussayは“Sources” (2012)辺りからの準レギュラーなのだと思いますが、この共演でこれほど普通にコンテンポラリージャズピアノを演じることはなかったように思います。
 ECMでのソロ作品“Promontoire” (2019)よりも強い躍動感。
 漂い、零れ落ち、ときに疾走する、クラシックをまとった美しい音。
 タダ者ではない感、たっぷり。
 そんなピアノが全体のイメージを支配している感じでしょうか、例の不穏さはなく、激しさ、妖しさ、不思議さが抑制された印象。
 漂うビート、美しいピアノの響きの中を泳ぐ艶やかなクラリネット。
 現代音楽的、あるいは激しいプログレッシブロックな場面はなく、4ビートとはいかずとも、あくまでジャズな感じが勝ります。
 全編通じて不思議さはほどほど、抑制された美しいヨーロピアンコンテンポラリージャズ。
 毒気をお求めの向きには、さて、どうでしょう。
 ぶっ飛んだり死に至ったりする感じはありませんが、十分に痺れるほどの成分が混ざっていると思います。
 私的にはこのくらいがちょうどいい感じ。
 美しい音が支配する名演奏。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Asian Fields Variation” (2017) Louis Sclavis

“Asian Fields Variation” (2017) Louis Sclavis

Louis Sclavis (Clarinets)
Dominique Pifarély (Violin) Vincent Courtois (Violoncello)

Asian Fields Variations
ECM Records
2017-03-17


 フランスのクラリネット奏者Louis Sclavis、変則トリオでの摩訶不思議な音楽。
 リズム隊、コード楽器なし、バイオリンとチェロとのトリオ。
 メンバーは“Rouge” (1991)あたりから共演が続くヨーロピアン。
 前作“Silk and Salt Melodies” (2014)は中近東~インドな色合いでしたが、本作のテーマはアジアのよう。
 絡み合う弦が醸し出す強い緊張感。
 ダークさを纏った抽象的な音の流れ。
 おそらくはキッチリと譜面にされたアンサンブルが中心なのだと思いますが、フリーあるいは現代音楽的な場面も多い構成。
 アジアの何処、何時をイメージしたのかはわかりません。
 冒頭のビートを定めず漂うような哀感は雅で日本的なような感じがするし、ところどころに現れる悠久系、あるいはインド系中華系の空気感がそれなのでしょうか。
 そんな中での激しいクラリネットの疾走。
 ヨーロッパ、インド、中近東と表情を変えるバイオリン、激しくうごめくチェロ。
 打楽器なしながら、あのKing Crimsonなキツいビート、リフな場面も登場しつつ、最初から最後までダークさと緊張感に包み込まれた時間。
 そして最後に収められたほのかな光。
 さて、フレンチから見たアジアはどんなイメージだったのでしょう。
 さて・・・?


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Silk and Salt Melodies” (2014) Louis Sclavis

“Silk and Salt Melodies” (2014) Louis Sclavis

Louis Sclavis (Clarinet)
Benjamin Moussay (Piano, Keyboards) Gilles Coronado (Guitar) Keyvan Chemirani (Percussion)

Silk and Salt Melodies
Sclavis, Louis -Quartet-
Ecm Records
2014-09-30


 フランスのクラリネット奏者Louis Sclavis、ベースレスの変則カルテット。
 前作“Sources” (2012)のトリオに中近東~インド系のパーカッションを加えた編成。
 編成、タイトル通りに中近東エスニックな空気感。
 いつもながらの不穏で摩訶不思議なメロディたちに加えて、中近東~インド系な雰囲気たっぷり。
 冒頭、エレピとバスクラリネットの漂うような絡み合い、いかにもヨーロピアンコンテンポラリージャズな感じから始まり、エスニックなパーカッションとサイケなギターが加わると、中世ヨーロッパなのか、地中海なのか、アフリカなのか、はたまた1960年代末の米英なのか、どこにいるのかわからない空気感。
 ドラムではなく中近東~インド系のパーカッションの静かな響きがとてもクール。
 ピアノが前に出るとクラック混じりのECMな現代ヨーロピアンジャズ、エレピであればエレクトリックMilesあたり、ギターが前に出る時間はサイケな音。
 ヨーロッパ、中近東、インドとさまざまに表情を変えながら、静かに漂うように、そして淡々と流れていく音。
 そんな不思議な空間の中を縦横無尽、変幻自在に動き疾走する、ヨーロピアンな艶やかなクラリネット。
 ダークで不思議感たっぷり、中近東なやるせなさたっぷり。
 激しさよりも抑制されたムードがとてもクール。
 静かな不思議系、中近東なフレンチジャズ、ってな感じでよろしいのでは。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Sources” (2012) Louis Sclavis

“Sources” (2012) Louis Sclavis

Louis Sclavis (Bass Clarinet, Clarinet)
Benjamin Moussay (Piano, Fender Rhodes, Keyboards) Gilles Coronado (Electric Guitar)

Sources
Sclavis, Louis
Ecm Records
2012-06-26


 フランスのクラリネット奏者Louis Sclavis、2012年作。
 本作はギターとキーボードとのトリオ。
 ピアノはいかにもECMな美しい系、ギターはサイケな感じも入り混じる先端ロック系。
 ドラムレスでのトリオならば静かに漂うような演奏・・・確かにそんな楽曲もありますが、ピアノかギターがキッチリとビートを作る速いテンポ、激しい音も多く、攻撃的な印象。
 メロディは例の不穏系、陰鬱系、あるいは複雑系。
 不思議な方向に流れていく旋律、ジプシー系、中近東系、アフリカ系などなどさまざまな表情。
 ときおりエレピとギターが絡む先端系ロックな色合いも交えつつ不思議感たっぷり。
 アンサンブルで固められた楽曲とインプロビゼーション中心の楽曲が交錯しますが、前者は現代音楽的、後者は静かなフリージャズ的。
 複雑怪奇な旋律の強烈なユニゾンに計ったような(計っているのでしょう)オブリガード。
 アンサンブルで固められていると思っているところから抜け出し、代わる代わるに明後日の方向に動き、突っ走り、転げまわるクラリネット、ピアノ、ギター。
 全編を覆うダークな空気感も含めて毒気たっぷり、気難しい系な印象。
 全部含めて無国籍、無時代、アグレッシブなトリオミュージック。
 摩訶不思議。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“L'Imparfait des Langues” (2007) Louis Sclavis

“L'Imparfait des Langues” (2007) Louis Sclavis

Louis Sclavis (Clarinet, Bass Clarinet, Soprano Saxophone)
Paul Brousseau (Keyboards, Electronics, Guitar) Maxime Delpierre (Guitar) François Merville (Drums)
Marc Baron (Alto Saxophone)

L'Imparfait Des Langues
ECM Records
2007-01-30


 フランスのクラリネット奏者Louis Sclavis、2007年作。
 サックスを加えた二管、ギター、キーボード、ドラムでのベースレス変則クインテット。
 ギターは先端系ロックな色合い、ベースラインはキーボードでのウネウネグニョグニョな電子的な音。
 例によって不思議系、複雑にアップダウンするメロディ、あるいはプログレッシブロックなリフ、エスニックな香り。
 攻めまくるギター、ときおり聞こえる電子音、囁き声。
 とても妖しく、激しい。
 不穏で陰鬱な空気感が流れていますが、どこかあっけらかんとした感じ、すっとぼけたような感じがするのもあの色合い。
 が、攻撃的ジャズなアルトサックスが登場すると一転、ジャズの香りも濃厚。
 もちろんリーダーのクラリネットもあのジャズな強烈な疾走。
 非日常的なテーマと先端的なギターとジャズな管の微妙なバランス、あるいはアンバランス。
 全部含めて意外にとっつきやすいアルバムだったりして。
 タイトルは“言語の不完全さ”の意?
 うーん、やはり摩訶不思議。

※別のバンドの演奏から。
 

posted by H.A.


【Disc Review】“Viva Eu” (2019) Barbara Casini & Toninho Horta

“Viva Eu” (2019) Barbara Casini & Toninho Horta

Barbara Casini (Vocals) Toninho Horta (Guitar, Vocals)
Giuseppe Fornaroli, Luiz Claudio Ramos (Guitar) Francis Hime (Piano)
Chico Buarque, Danilo Caymmi, Edu Lobo, Illesi (Vocals) Joyce Moreno, Nelson Angelo (Vocals, Guitar)

ヴィヴァ・エウ
BARBARA CASINI & TONINHO HORTA
Unimusic
2021-01-20


 イタリア在住ブラジリアン女性ボーカリストBarbara Casini、Toninho Hortaの双頭リーダー作。
 ブラジリアンアーティストNovelliの作品集。
 Toninho さんの近作“Shinkansen” (2020)は日本からでしたが、本作はイタリアから。
 明るく元気なそちらとは全く違うテイスト、抑制されたクールなブラジリアンポップス。
 たくさんの名前が並んでいますが、ベースなし、パーカッションなし、ピアノも少々のみ、ギターとヴォイスのデュオを中心として、楽曲によってゲストが加わる編成、静かな音。
 Toninhoさんもガットギターに徹してサポート中心、ときおりスキャット、ってなイメージ。
 シンプルで静かな音を背景にしたシャキッとしたヴォイス。
 バラード中心、いかにもブラジリアン、穏やかな哀愁をまとったSaudadeなメロディたち。
 あの丸い音の楽園エレキギターの登場場面はありませんが、当然ながらガットギターでの歌伴も名人芸。
 緩急自在、十分に華やかで過剰でない、絶妙なバランス。
 そして名前だけでごちそうさまな超々豪華なゲスト陣。
 気が付いていませんでしたがBarbaraさん、Joyce御大にそっくりの歌い方。
 二人で歌うと区別がつきません。
 その他含めて、ギターとヴォイスのみを中心としたシンプルなサウンドながら変幻自在。
 全編を通じた少し沈んだムード、ハイテンションに行き過ぎない抑制されたムードがとてもクールでエレガント。
 そんな中、締めは”Durango Kid” (1993)を思い起こすストロークと哀愁のメロディ、どこか遠くを眺めるような空気感、静かにかつドラマチックに幕。
 派手ではなく、浮かれるでもなく、かといって落ち込むでもなく、ジワジワくる系、沁みてくる系。
 そんなMPB。


 


(1979) "Terra dos Pássaros
(1980) ”Toninho Horta” 
(1988) ”Diamond Land” 
(1989) “Moonstone” 
(1992) ”Once I Loved” 
(1992) “Sambao” Kenny Barron 
(1993) ”Durango Kid” 
(1994) “Live in Moskow” 
(1994) ”Foot on the Road” 
(1994) “Toninho Horta & Carlos Fernando” 
(1995) ”Durango Kid 2” 
(1995) “Cem Boce” with Joyce 
(1997) “From Belo to Seoul” with Jack Lee 
(1997) “Serenade” 
(1998) ”To Jobim with Love” (From Ton to Tom) 
(1999) “Duets” with Nicola Stilo 
(2000) “Quadros Modernos” with Juarez Moreira and Chiquito Braga 
(2003) “Vira Vida” with Nicola Stilo 
(2004) ”Com o pé no forró” 
(2007) “Solo ao Vivo” 
(2007) “Toninho in Vienna” 
(2007) “Cape Horn” with Arismar do Espírito Santo 
(2008) “Tonight” with Tom Lellis 
(2010) ”Harmonia & Vozes” 
(2010) “From Napoli to Belo Horizonte” with Antonio Onorato 
(2012) ”Minas Tokyo” 
(2014) “No Horizonte de Napoli” with Stefano Silvestri 
(2015) "Alegria é Guardada em Cofres, Catedrais" with Alaíde Costa
(2013-2018) “Belo Horizonte” 
(2020) "Shinkansen"
(2020) “Viva Eu” with Barbara Casini

posted by H.A.


【Disc Review】“Shinkansen” (2020) Shinkansen

“Shinkansen” (2020) Shinkansen

“Shinkansen : Toninho Horta (guitar) Jaques Morelenbaum (cello) Liminha (bass) Marcos Suzano (percussion)
Guests : Branford Marsalis (soprano saxophone) Ryuichi Sakamoto (piano) Jessé Sadoc (trumpet, flugelhorn)

シンカンセン
Shinkansen
SMJ
2020-10-28


 Toninho Horta、新ユニットShinkansen:新幹線。
 あの名曲?のタイトルを冠したユニット。
 ギタートリオにこれまた日本に縁が浅くないJaques Morelenbaumのチェロが加わるバンド、楽曲によってこれまた豪華なゲストが加わる編成。
 意外にもカッチリした印象のジャズフュージョン。
 静かなパーカッションとエレキベースがビートを作り、エレキギターとチェロが代わる代わる前面に出て、ところどころにゲストが加わる、そんな構成。
 ソプラノサックスが聞こえると洒脱なフュージョンテイスト、ピアノが鳴っていると少々妖しい、ゲストの御方の色合い。
 ヴォイスの登場場面は少々のみのインスツルメンタルミュージック。
 のほほんとしたあの名曲?も、キッチリとしたリズム隊に後押しされ、キッチリとしたフュージョンに様変わり。
 ステディなビートを刻み続けるパーカッションに弾むエレキベース、攻めるチェロ。
 そしてフワフワと柔らかく丸っこいクリーントーンのエレキギターは、楽園で流れていそうな、そんな音。
 いつもながらのToninhoさんの柔らかくて軽快なブラジリアンミュージックではありますが、前作“Belo Horizonte” (2013-2018)とはちょっと違う面持ち、タイトなジャズフュージョン寄り。
 楽曲はオリジナル、少々哀しい、でも前向きなSaudadeなメロディたち。
 名作“Moonstone” (1989)辺りの感じに近いかもしれませんが、もっと直球でしょうか。
 攻めた感じの先端的で妖しい演奏もありますが、なんだかんだで優しい感じの勝ち。
 ちょっと拍子抜けなくらい平和で元気いっぱいですが、Toninhoさんが入っていれば、さらに彼の楽園エレキギターがたっぷり聞こえれば何でも名演。
 とても優しくてハッピーな感じ含めて、よろしいのではないでしょうか。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Agora” (2020) Bebel Gilberto

“Agora” (2020) Bebel Gilberto

Bebel Gilberto (Vocals)
Thomas Bartlett (Keyboads, Percussion, Piano, Programming)
Magrus Borges (Drums, Percussion) Mart'nália (Vocals)

AGORA
BEBEL GILBERTO
[PIAS] RECORDINGS
2020-08-26


 Bebel Gilberto、2020年作。
 御父上はお隠れになられてしまいましたが、娘さんの久々のアルバム。
 大ヒットしたのでしょう“Tanto Tempo” (2000)に近いテイスト、電子音混じりの現代~未来感漂うブラジリアンポップス。
 ボッサやフォークなアコースティックな感じはなく、全編通じて先端クリエーターが作ったのであろう、静かで妖しい今の音・・・
 ・・・だと思うのですが、なぜか漂うノスタルジー。
 遠くから聞こえてくるようなビートと周囲を包み込むような電子音、コーラス、その少し前に立つウイスパーなヴォイス。
 フワフワとした時間。
 テンポが上がっても、打楽器が強い音を出しても、妖しげな電子音が聞こえても、あくまでゆったりとした優雅で静かな音。
 一番明確に響いてくるのは、リバーヴに包まれたウイスパーヴォイス。
 哀愁漂う、でも暗くはないポップでキャッチ―なメロディたちも、そんな音に溶け込んで淡い乳濁色の靄の中。
 ノスタルジックな空気感の源泉は、そのメロディなのか、声と歌なのか、先端とエスニックが交錯する抑制されたサウンドなのか、何なのか、わかりません。
 これぞ21世紀型Saudade・・・かどうかもわかりません。
 とにもかくにも御父上、御母上はやらないであろう現代の音。
 が、同じく静かで優しくて、最高に心地よい音。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Albores” (2019) Dino Saluzzi

“Albores” (2019) Dino Saluzzi

Dino Saluzzi (Bandoneon)

Albores
ECM Records
2020-11-06


 アルゼンチンの重鎮Dino Saluzzi、バンドネオンソロ作品。
 コンボでの“El Valle de la Infancia” (2014)以来?、ソロ演奏では”Andina” (1988)以来でしょうか?
 そこから三十余年が経過していますが、変わらない優しく暖かい音、変わらない郷愁感。
 タイトルは「夜明け」の意。
 静かに漂うように始まり、ゆっくりと変わっていく景色。
 バンドネオン、さらに独奏ゆえの止まらない揺らぎ。
 ビートが定まりときおりスピードを上げ疾走つつも、気が付けば揺らぎの中。
 明確なメロディが見えそうで見えない、見えたと感じるのは束の間、また揺らぎの中。
 たびたび訪れるフォルクローレ的、あるいはタンゴ的なコードチェンジの瞬間に覚醒しつつ、また揺らぎの中。
 同じ空気感ながら同じフレーズは二度とはない、そんな音の動き。
 しばらくするとどこか別の世界へ転移したような、あるいは波に洗われ続けているような錯覚。
 ここまでの諸作には何らかの物語、起承転結が明示されているように感じましたが、本作は違う印象、さりげないイメージ。
 緩急、紆余曲折が交錯しながら、哀しいような懐かしいような、ゆったりとした音の流れが続きます。
 そして終盤に準備された長尺な二曲、アルバム全体を集約したような演奏。
 定まらないゆったりとしたビート、現れては消えていく断片的なメロディ。
 郷愁に包まれる時間。


 


Kultrum” (1982) 
Theatre” (1983) George Gruntz
Once Upon a Time - Far Away in the South” (1985) 
Volver” (1986) Enrico Rava 
Andina” (1988) 
“World Sinfonia” (1990) Al Di Meola 
Mojotoro” (1991) 
“World Sinfonia II - Heart of The Immigrants” (1993) Al Di Meola 
Rios” (1995) Dino Salussi, Anthony Cox, David Friedman 
Cité de la Musique” (1996) 
Fábula” (1996) Maria João 
Di Meola Plays Piazzolla” (1990-1996) Al di Meola
From the Green Hill” (Aug.1998) Tomasz Stańko 
Kultrum” (Oct.1998) Dino Saluzzi, Rosamunde Quartett 
If” (Jun.2001) Myriam Alter
Responsorium” (Nov.2001)  
Trio Tage” (Oct.Nov.2002) George Gruntz, Thierry Lang, Dino Saluzzi 
Senderos” (Nov.2002) 
Juan Condori” (2005) 
Ojos Negros” (2006) 
El Encuentro” (2009) 
Giya Kancheli, Themes From The Songbook” (2010) Dino Saluzzi / Gidon Kremer / Andrei Pushkarev
Navidad de Los Andes” (2011) 
El Valle De La Infancia” (2014) 
Albores” (2019) 

posted by H.A.


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