吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

-1969

【Disc Review】“Wave” (1967) Antônio Carlos Jobim

“Wave” (1967) Antônio Carlos Jobim

Antônio Carlos Jobim (piano, guitar, harpsichord, vocals)
Ron Carter (double bass) Dom Um Romão, Bobby Rosengarden, Claudio Slon (drums)
Urbie Green, Jimmy Cleveland (trombone) Raymond Beckenstein, Romeo Penque, Jerome Richardson (flute, piccolo) Joseph Singer (French horn)
and Strings

WAVE

JOBIM, ANTONIO CARLOS
A&M
1995-06-24


 神様の一番有名なアルバムなのでしょう。
 いわゆるイージーリスニングな作品。
 ノーブル&エレガント。

 洗練の極み。
 代わる代わるフロントに立つ柔らかな音の木管楽器たち、別の次元から聞こえてくるような優雅なストリングス。
 アレンジはVerve~CTI、その他諸々、この種の音の代名詞、Claus Ogerman。

 ちょっと聞きではアメリカ色に染まったありがちなポップス・オーケストラのように聞こえますが、ベースはあくまで骨太なピアノトリオ+ギター。
 朴訥なピアノとオーソドックスなボサノバギター。
 カッコいい。
 カフェやバーから、スーパー、交通情報のBGMまで、世の中に流れている音はこんな感じがいいなあ。
 パラダイスなブラジリアンミュージック。





posted by H.A.



【Disc Review】“A Love Supreme: Live In Seattle” (Oct.2.1965) John Coltrane

“A Love Supreme: Live In Seattle” (Oct.2.1965) John Coltrane


John Coltrane (soprano, tenor saxophone, percussion)

McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)

Pharoah Sanders (tenor saxophone) Donald Garrett (bass) Carlos Ward (alto sax)


A Love Supreme: Live In Seattle
John Coltrane
Verve
2021-10-22


 John Coltrane、1965年の未発表ライブ演奏。2021年発表。
 1965年の第四四半期はタイトルを見るだけでビビッてしまう、ちょっとこれは・・・な凄い演奏が続く時期。
 “Live in Seattle” (Sep.30.1965)、”Om” (Oct.1.1965)、“Kulu Sé Mama”、“Selflessness” (Oct.14.1965 (一部))、“Meditations” (Nov.1965)。
 激烈フリージャズの入り口“Live in Seattle” (Sep.30.1965)の二日後、ちょっとではなく大変怖い”Om” (Oct.1.1965)の翌日のステージ。
 メンバーもほぼ同じとくると身構えてしまうのですが、演奏されるのが“A Love Supreme” (Dec.1964)となると・・・というか、この期のColtraneさんであれば演目がなんであれ聞かざるを得ないのが哀しい性。
 おそるおそる聞いてみたところ・・・
 予想に違わぬ激烈さ。
 が、“Live in Seattle”ほどにはぶっ飛んでいないというか、叫びとか呪文系とかが無いので怖くはないというか、オリジナル“A Love Supreme” (Dec.1964)+α+β+γ+δぐらい、あるいは“Sun Ship” (Aug.1965) 、“First Meditations” (Sep.2.1965)、はたまた色合いは違えど“Miles Davis At Fillmore” (1970)の五割増しぐらいの弩級激烈エネルギー放出型ジャズ。
 ベースやドラム、パーカッションをフィーチャーしたインタールードを含めて75分超える演奏は、オリジナルの倍以上、発表されていたフランスでのライブ音源(Jul.1965)と比べても1.5倍の長尺の凄まじいステージ。
 私家録音なのでしょうし、ドラムが強いバランスですが、音質はまずますいい感じ。
 Part1、ベースを中心として厳かに始まりますが、徐々にテンションと音量を上げていくバンド、凄まじいテナーサックス。
 ピィーとかキィーとかギャーとかまでにはいきませんが、この期のもどかし気に高速旋回しまくるスタイルから常軌を逸しつつの、もはや何がなんやらわからない激烈さ。
 そんなトランス状態が10分以上?続いた後、例のお題目フレーズともに、周囲を取り巻いていた土埃が消えていくような鎮静。
 妖しいパーカッションとベースのインタールードからPart2へ。
 あの緊張感の塊のような超カッコいいテーマもそこそこに始まる客演のアルトサックスのインプロビゼーション。
 これまた激烈系ですがちょっとだけスッキリした感じ。
 Part3は、高速ビートの中、トランス状態へのグルと思しきPharaohさんの絶叫サックス。
 そんなサックスが引くとMcCoyさんの超高速疾走ピアノの出番。
 軽やかに始まりますが、気が付けば大音量の千手観音ドラムとの凄まじいバトル。
 激烈系ピアノトリオの最高峰。
 そして締めは全編ルバートでのスローバラードPart4。
 沈痛、あるいは敬虔なムードの中、静かに重々しく幕。
 十分に激烈なオリジナルの何倍も激しい音。
 全編緊張感の塊、凄まじいまでの激烈トランスミュージック。
 いき過ぎない、いや十分にいってしまっているか・・・いずれにしてもぶっ飛んだ超人たちが作る凄まじい音の洪水。
 いまさらながらではありますが、畏れ入りました。


 


posted by H.A.

【Disc Review】"Merry Christmas" (1965) The Supremes

"Merry Christmas" (1965) The Supremes

The Supremes: Florence Ballard, Diana Ross, Mary Wilson (vocals)
and others

Merry Christmas
Supremes
Motown
1999-10-12


 ジャズな季節モノはネタ切れですが、ジャジーなこれ。
 カクテルなピアノの素敵なオブリガード、危なっかしいベルが奏でるメロディ、別位相から聞こえてくるようなストリングス、天使のコーラス、そしてサラリとした声のねっとりとした歌。
 ちょっとずつズレてるんだか、なんなんだか・・・
 全部含めて平和で幸せな音。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“East!” (1968) Pat Martino

“East!” (1968) Pat Martino

Pat Martino (guitar)
Eddie Green (piano) Ben Tucker (bass, tambourine) Tyrone Brown (bass) Lenny McBrowne (drums)

East
Pat Martino
Ojc
1991-07-01


 Pat Martino、1968年、ギターカルテット編成でのアルバム。
 オーソドックスな編成ながら、冒頭、10分を超える”East”は、旋回するただ事ではない雰囲気のピアノのイントロからスタート。
 アジアンエスニックなムード。
 何か新しいことが始まりそうな空気が充満します。
 が、ビートが定まりギターのソロが始まるとやはりジャズ。
 ノリノリのグルーヴに音数たっぷり、突っ走るいつものジャズギター。
 ピアノソロになると妖し気なムードに変わり、攻めていますが、やはりモード~ファンクなジャズ。
 テーマに戻ると再びピアノのつむじ風が吹きますが、前段のジャズの残り香が付き纏い、ほどほどの“East”具合。
 続くオリジナル曲はBlue Noteっぽい哀愁漂うミディアムテンポのジャズ。
 ブルージーなコードに乗って、憑かれたように音符を並べていくギター。
 さらに続くはジャズスタンダードにBenny Golson、John Coltrane。
 ってな感じで、本作で東洋なのは冒頭一曲のみ。
 それがなかなか変わった感じでいいのですが、やはりPat Martinoはジャズの人です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Strings!” (1968) Pat Martino

“Strings!” (1968) Pat Martino

Pat Martino (guitar)
Cedar Walton (piano) Ben Tucker (bass) Walter Perkins (drums) Ray Appleton, Dave Levin (percussion) Joe Farrell (tenor saxophone, flute)

Strings
Pat Martino
Ojc
1991-07-01


 Pat Martino、1968年作。
 ピアノトリオにパーカッション、管をサポートに迎えたジャズ~ジャズロック。
 あれよあれよ、これでもかこれでもかと続くギター。
 ジャズの塊のような演奏ですが、テクニカルでメカニカル、音符の洪水。
 サックス、ピアノもそれにつられるかのような怒涛のソロ。
 全編極めて端正なジャズながら、各曲とも全員が全力疾走、凄まじいスピード感。
 憑かれたようなハイテンションな演奏が続きます。
 リズム隊とフロントがキッチリ分けられ、絡み合う場面も少なく、オーダーに合わせて律儀にキッチリした印象の演奏が、かえって緊張感と凄みを醸し出しているようにも感じます。
 テンションを落とすこと許すまじ、さあイケーって、鞭打たれているような感じ。
 聞いている方もお口あんぐりというか、何と申しましょうか。
 1960年年代もそろそろ終わり頃。
 フリーにはいかず、電化もロック化もしない。
 でも1950年代ジャズとは何か違う、違ってしまう、モダンジャズ黄金期の次の世代のジャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“El Hombre” (1967) Pat Martino

“El Hombre” (1967) Pat Martino

Pat Martino (guitar)
Trudy Pitts (Hmmond organ) Mitch Fine (drums) Vance Anderson (bongos) Abdu Johnson (congas) Danny Turner (flute)



 Pat Martino、1967年作。
 オルガンと打楽器群をサポートに迎えたジャズ。
 まだまだWes Montgomery, Joe Pass, Jim Hall, Kenny Burrellといった人たち全盛期、その次の世代の初期作品。
 充分に正統派ジャズなのではありますが、あの時代の空気感たっぷり、ロックな感じが混ざりつつの、グチャラグチャラしたちょっとヤクザな感じ。
 そんな中を突っ走るギター。
 何の迷いもなくこれでもかこれでもかと繰り出されていく高速なフレーズ。
 あくまでジャズな雰囲気でジャズなフレーズを奏でるギター。
 上記の中ではWes Montgomeryな感じなようにも聞こえますが、ちょっと硬質な感じのフレージングの違いはもちろん、突っている時間が長いというか、奥ゆかしくないというか、元気いっぱいというか、Joe Passに負けないぐらいに音数多過ぎというか・・・
 ジャズ、ボサノバ、ブルース、なんでもござれ。
 テーマ一発、後は突っ走るのみ、ってな感じ。
 サポートの皆さんもノリノリ、イケイケ。
 クリーントーンのエレキギターの音も含めて、クールで醒めた感じがしないでもないのですが、内省的、あるいは沈んだ感じではなく、あくまで元気いっぱい。
 ジャズギターは少し沈んだムードがカッコいい、なんて思ってしまうのは古い時代の感覚なのでしょうかね。
 って、本作、まだ1967年だなあ。
 とかなんとか、気分爽快、突っ走る怒涛のジャズギターの一作。




posted by H.A.



【Disc Review】‎”Love Call” (1968) Ornette Coleman

‎”Love Call” (1968) Ornette Coleman

Ornette Coleman (Alto Saxophone, Trumpet)
Jimmy Garrison (Bass) Elvin Jones (Drums)
Dewey Redman (Tenor Saxophone)



 Ornette Coleman、1968年のジャズ。
 “New York Is Now!” (1968)と同セッション。
 これまた素っ頓狂なテーマ一発、後は怒涛のインプロビゼーション。
 このシリーズ、心なしかドラムの音量が大きめなのは気のせいでしょうか。
 ドラムソロのような怒涛の叩きまくり。
 アルトサックスの伸び縮みするビート感に反応しているような、そうでもないような。
 ベースはサックスに合わせようとしているように聞こえるけども、ドラムは無視して突っ走っているようにも聞こえるなあ・・・
 壊れそうでギリギリ壊れない絶妙な緊張感は、元John Coltraneバンドのリズム隊所縁。
 そして忘れたころにおもむろに登場するグチャグチャと崩れるような狂気のテナー。
 ハードボイルドなDeweyさんではありません。
 それに追随しようと試みるOrnetteさん、が・・・
 ってな感じの丁々発止の絡み合い。
 それがとてもエキサイティングなジャズ。
 “New York Is Now!” (1968)の方が人気なのかもしれませんが、こちらの方がバタバタ度が高くて、私的にはそれが好み。
 いかにも1960年代の終わりな感じのとてもカッコいいジャケットですが、中身はサイケでもジャズロックでもなく、Ornette流の不思議なジャズ。




posted by H.A.



【Disc Review】“New York Is Now!” (1968) Ornette Coleman

“New York Is Now!” (1968) Ornette Coleman

Ornette Coleman (Alto Saxophone, violin, trumpet)
Jimmy Garrison (Bass) Elvin Jones (Drums)
Dewey Redman (Tenor Saxophone) Mel Fuhrman (vocals)

New York Is Now!
Ornette Coleman
Blue Note Records
1993-02-12


 Ornette Coleman、1968年のジャズ。
 ”Love Call” (1968)とも同セッション。
 リズム隊はJohn Coltrane所縁、さらにDewey Redmanを加えたピアノレスカルテット。
 テーマ一発、後は怒涛のインプロビゼーション。
 ドラムが超重量級の分、あるいはテナーサックスが加わった分、ここまでの諸作よりも重心が下がった印象。
 軽快なCharles Moffettに対して一音一音が重く、音数たっぷり、叩きまくるElvin Jones。
 伸び縮みするビート、サックスの変化に合わせて即座に反応しているようで、無視して突っ走っているように聞こえる展開もしばしば。
 そのバランス、アンバランスさがこのバンドのカッコよさ。
 Dewey Redmanは肉声的な音を含めて不思議感たっぷり。
 普通に吹けばハードボイルドな人、そんな場面も少なくないのですが、本作では狂気を演じる役回り。
 Blue Noteな録音も手伝ってか、サックスとドラムの音の臨場感が凡百ではない特別なジャズ。
 変幻自在ながらキチっと統制の取れているようなそうでもないような、いつもの伸び縮み成分が少ないような4ビートジャズ。
 緩急ってよりも急急、ヘビーな感じがちょっと変わった印象のOrnette Coleman。




posted by H.A.


【Disc Review】“Chappaqua Suite” (1965) Ornette Coleman

“Chappaqua Suite” (1965) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone)
David Izenzon (double bass) Charles Moffett (drums)
Pharoah Sanders (tenor saxophone)
& Orchestra

CHAPPAQUA SUITE
ORNETTE COLEMAN
FIVEFOUR
2012-08-05


 Ornette Coleman、摩訶不思議なアルバム。
 映画音楽として作ろうとして使われなかった?などのいわくつきのようです。
 基本的にはピアノレスのサックストリオと管楽器オーケストラの共演。
 トリオの演奏は、同メンバーでの“At the "Golden Circle" Vol. 1& 2.” (1965)に近い感じ、あくまで4ビートジャズ。
 ビートが伸び縮みするような場面が多く、変幻自在な印象ながら、三者がピシッと決まった感じの極めてタイトな演奏。
 が、背景を彩るオーケストラがなんだか変。
 現代音楽的に譜面化された演奏なのでしょうが、何か調子っはずれな感じ。
 そんな中でひたすら鳴るアルトサックス。
 オーケストラが抜けると晴れ間が見えるようなキリッとしたジャズ。
 が、オーケストラが戻ってくると何かモヤっとした感じでアレレ・・・
 ってな感じの演奏の連続。
 摩訶不思議なのですが、あらかじめ長さも展開も計算尽くで、その制約の中でトリオでインプロビゼーションを展開していったのでしょう。
 LPで二枚、全4パート、各曲長尺な演奏ですが、なぜか長さを感じないのは、予想できない展開とバラけない統制の取れた演奏ゆえでしょうか。
 Pharoah Sandersが前面に出るのは少々のみ。
 狂気を纏った“Live in Seattle” (Sep.30.1965) John Coltraneへの参加直前期なのが、これまた興味深いところ。
 実験的色合いの混ざった不思議なジャズ、そしてOrnette Colemanトリオのタイトでハードなジャズをたっぷり聞くにもいい一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Ornette on Tenor” (1962) Ornette Coleman

“Ornette on Tenor” (1962) Ornette Coleman

Ornette Coleman (tenor saxophone)
Jimmy Garrison (bass) Ed Blackwell (drums)
Don Cherry (pocket trumpet)

Ornette on Tenor
Ornette Coleman
Rhino/Wea UK
2004-05-03


 Ornette Coleman、1960年作。
 全編テナーサックスを吹いた一作。
 いつもと同じくDon Cherryが加わるピアノレスカルテット。
 楽曲のイメージも変わりませんが、演奏の印象は異なります。
 アップテンポ中心の演奏、不思議感も少なめのクールなジャズ。
 重心が下がってヘビーになったような、その逆、ベースが軽くなって浮遊感が出たような、複雑な質感の変化。
 ひしゃげたようなダーティーな音のテナーサックス、Archie Sheppをスッキリさせたような感じでしょうか。
 重心と音は変わっても加速、疾走はアルトサックスに同じ。
 やさぐれた感じがカッコいい。
 なぜテナーサックスを吹いたのかは知りません。
 が、何の違和感もなくいつもの音楽にピッタリはまっているとともに、エキセントリックさが薄まって、より普通にジャズっぽい感じ。
 諸作に比べると不思議な安定感、男臭いハードボイルドネスたっぷり。
 とてもカッコいいのですが、テナーを吹く作品が限られるのはなぜでしょう?
 アルトでの軽く舞い上がる感じが表現できないから?
 さて?
 ともあれ、カッコいいテナーサックス奏者Ornette Colemanの希少な一作。




posted by H.A.


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