吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

【美しく妖しいジャズ】

【Disc Review】“Fairytales” (1982, 1979) Radka Toneff

“Fairytales” (1982, 1979) Radka Toneff
Radka Toneff (voice) Steve Dobrogosz (piano)

フェアリーテイルズ (BOM13001)
ラドカ・トネフ
ボンバ・レコード
2015-11-21


 ノルウェーの女性ジャズボーカリストRadka Toneff、ピアノとのDuo作品。
 とてつもなく美しく、悲しいアルバム。
 アメリカ~スウェーデンのピアニストSteve Dobrogoszは、クラシックのムードも纏った美しく上品な音。
 決して派手ではありませんが、時折のタメ、零れ落ちるような、浮遊するような音使いを含めて、ECMでリーダー作があってもおかしくない、いかにもヨーロッパジャズなピアノ。
 その上を漂うような、透明度の高い可憐なボイス。
 線が細めに聞こえること、上の方で微妙に裏返る事も含めて、とても繊細で儚い歌。
 ポップスからの選曲、“My Funny Valentine”、”Nature Boy”といったスタンダード。
 大きなフェイクもなく、奇をてらったアレンジもありません。
 際立って美しい声とピアノ、全編スローで徹底的に静謐な事を除けば、この時代の作品にはたくさんありそうな構成。
 ECMの名作“Somewhere Called Home” (1986) Norma Winstoneあたりに近い感じではあるのですが、もっとポップで、もっと普通にジャジー。
 静かで淡々とした色合いは、あの時代の北欧ジャズの静かで美しい佳作、確かに妖精だなあ・・・とサラリと聞き流してしまうかもしれません。
 が、なぜか微かに漂う凄み。
 その根源はよくわかりません。
 事実としては、Radka Toneffは本セッションの数ヶ月後に自殺したとのこと・・・
 ・・・
 似た感じだからといって他のアルバムと並べるのはちょっと畏れ多い。
 大名作です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Stomach Is Burning” (2006) Melanie De Biasio

“Stomach Is Burning” (2006) Melanie De Biasio 
Melanie De Biasio (vocal)
Pascal Mohy (Piano) Pascal Paulus (Keyboads) Axel Gilain (Bass) Teun Verbruggen (Drums) Steve Houben (Sax, Flute)



 ベルギーのボーカリストMelanie De Biasioの静かなコンテンポラリージャズ作品。
 ピアノトリオに管楽器のオーソドックスな編成。
 零れ落ちるようなピアノ音と柔らかなグルーヴがいかにもなヨーロピアンテイスト。
 ボイスは低音な感じでほんの少しハスキー。
 漂うようなウイスパー系。
 “My man's gone now”なんてスタンダードも入り、ウッドベースとハイハットと交錯してスイングする、オーソドックスな質感の4ビートも多いのですが、あくまでコンテンポラリージャズな空気感。
 ときおり電子楽器も混ざるけども、あくまでアコースティック。
 ECMっぽくもあるし、ポップスっぽくもるけども、あくまでジャズ。
 絶妙なバランスの静かな音。
 とてもクールでダークな夜のジャズ、現代版。




posted by H.A.


【Disc Review】“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari

“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari
André Mehmari (Piano, Accordion, Bandolim, Bass, Bateria, Cello, Clarinet, Cravo, Fender Rhodes, Flute, Guitar, Mellotron, Organ, Palmas, Percussion, Synthesizer Bass, Viola, Violin, Vocals)
Teco Cardoso (Baritone Sax) Gabriele Mirabassi (Clarinet)
Mônica Salmaso, Sérgio Santos (Vocals)



 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの2008年作。
 南米系の音源は廃盤になるのが早く、その中にはとんでもない名作があるのですが、このアルバムはその最たる作品。
  現在も流通しているであろうオムニバスアルバム“Veredas” (2006-2008)にその一部、一番よさそうなところが収められてはいるのですが、アルバムとしての素晴らしさはまた別格。
 タイトルは「木?とワルツ?」。
 その通りに全編フワフワとした優雅なビートとナチュラルな音の流れ。
 サンバ、ボッサではない、フォルクローレな雰囲気。
 計算しつくされたと思われるアレンジと、オーバーダビングによる自身での演奏、効果的な彩りを加えるゲストの音。
 柔らかな管、弦のアンサンブルと、要所に配置される自身の声、最高のボーカリストMônica Salmaso, Sérgio Santosの声。
 シンプルな編成のピアノトリオ、あるいはソロピアノではなく、いろんな優し気な音が絡み合いながら流れていく時間。
 センチメンタルだけども、暗さや絶望感とはほど遠い優しいメロディ。
 全曲、名曲名演。
 全編を通じた浮遊感と穏やかな郷愁感。
 哀し気なようでとても前向きな、あるいは、前向きなようで悲し気な音の流れ。
 南米音楽共通の質感ですが、その繊細でデリケートな版。
 そんな空気の中を漂うような、零れ落ちてくるようなピアノ。
 スローでは十二分にタメを効かせ、時には突っ走り・・・
 少し前の“Lachrimae” (2003)の素晴らしさに多言は無用ですが、そちらは少々ジャズピアノトリオ寄り。
 この後の作品“Miramari” (2008)以降はクラシックの色合いがより強くなっているように感じます。
 その分水嶺的な作品かもしれません。
 ジャズとクラシックとフォルクローレの最高のバランスのフュージョンミュージック。
 もちろん一番強い成分はブラジル的南米的フォルクローレ。
 どこを取り出しても、とても優雅で美しい音。
 この人の音はいつもどこか遠くを眺めているような音。
 どこを切り出してもその真骨頂。
 これはもう最高でしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“Exotica” (1993) Kip Hanrahan

“Exotica” (1993) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Producer)
Don Pullen (piano, organ) Jack Bruce (bass, voice) Robby Ameen (drums)
Leo Nocentelli (guitar) Alfredo Triff (violin) 
Guest :
Andy Gonzalez, Anthony Carillo, David Sanchez, JT Lewis, Mario Riviera, Milton Cardona, Lucy Penabaz, Ralph Peterson Jr., Richie Flores

EXOTICA
KIP HANRAHAN
ewe
2010-07-21
キップ・ハンラハン

 Kip Hanrahanのファンクアルバム。
 本作のテーマがファンク、あるいはアップビートでシンプルにいこう、といった計画だったかどうかはわかりませんが、最初から最後まで、凄まじいグルーヴ、どカッコいいファンク、あるいは強烈で危ないダンスミュージック。
 前作“Tenderness” (1988-1990)の激しくカッコいい場面を抜き出して、ほんの少しだけマイルドにした感じでアルバム一枚作りました、ってな最高のバランス。
 冒頭からカッコいいビート。
 この曲ではパーカッションの参加は無く、オルガン、ベース、ドラム+ピアノのシンプルな編成での演奏ですが、とんでもないグルーヴ。
 ドスの効いたヘビーなエレキベースがブンブンうなりながら強烈な推進力。
 クレジットに詳細が無いのですが、このベースはJack Bruceなのでしょうか?
 縁のあるつわものたち、Bill Laswell, Jamaaladeen Tacuma, Steve Swallowも真っ青の凄まじいベースライン。
 さらに途中から加わるDon Pullenのとんでもないピアノ。
 こりゃスゲーや。
 オルガン含めて、最初から最後まで、これでもかこれでもかと弾き倒しまくり。
 生涯最高の名演・・・かどうかはさておき、前作“Tenderness” (1988-1990)と同様、情け容赦なし、ピアノが破壊されそうな凄まじい演奏。
 すっかりレギュラーに定着したRobby Ameenもドラムも、いいタイミングでスネアドラムが入り続けるKip Hanrahanのハードなサウンドに欠かせないカッコいいビート。
 基本的にはピアノトリオ+オルガン+パーカッションのシンプルな編成が中心なのだけども、そうとはとても思えないド迫力。
 さらに、いつものクラーヴェ、怒涛のパーカッションが鳴りはじめ、ホーンやバイオリンが乗ってくると、これはもう桃源郷・・・
 鳴り続けるパーカッションの連打、強烈な推進力とグルーヴ、シンプルなリフの繰り返しで引き起こされる陶酔感。
 クラクラしてくるような音の渦の裏で表で叩き回され、引っ搔き回されるピアノ・・・
 とても激しい音、強烈なグルーヴを背景にした囁くような激渋ボイスが何ともクール。
 もちろんメロディはいつものやるせない哀愁が漂うライン。
 いつものパターンではあるのですが、背景の激しさ、グルーヴが尋常ではないだけに、激渋ボイスがいつにも増してクールに妖しく響きます。
 激しくとも、どことなくオシャレ。
 やはりKip Hanrahanワールドです。
 この人の作品で、ここまでファンク、あるいはシンプルなアルバムはないと思いますが、これを最高傑作とするのは反則なのでしょうかね?
 Kip Hanrahanのファンクの大名作、いや、古今東西のジャズファンクの中での大名作。




 posted by H.A.

【Disc Review】“Komitas/Gurdjieff/Mompou: Moderato Cantablie” (2013) Anja Lechner, Fracois Couturier

“Komitas/Gurdjieff/Mompou: Moderato Cantablie” (2013) Anja Lechner, Fracois Couturier
Anja Lechner (cello) Fracois Couturier (piano)
 


 ドイツのチェリストAnja Lechner、フランスのピアニストFrançois CouturierのDuo作品、本作はクラシック寄りのECM New Seriesレーベルから。
 お二人は“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)、“Tarkovsky Quartet” (2011)などで共演済。
 二人とも他のアーティストとの共演も多く、現代のECMのクラシック寄りの作品には御用達の人。
 この二人で、トルコのKomitas、アルメニアGurdjieff、スペイン?のMompouといった、思想家&音楽家?の楽曲を演奏したアルバム。
 企画から予想されるそのままの敬虔な音、静謐な空間に響くチェロとピアノの絡み合い。
 同じような企画、編成では“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)Anja Lechner, Vassilis Tsabropoulos、あるいはチェロとピアノのDuoでは“The River” (Jun.1996) Ketil Bjørnstad, David Darlingなど、定番企画のひとつ。
 近い感じではあるのですが、わかりやすい楽曲、演奏が揃っています。
 Gurdjieff3曲、Komitas1曲、Mompou3曲にFracois Couturier3曲。
 どれもゆったりとしたテンポ、悲し気なメロディですが、“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)と比べると、重々しさ深刻さが薄く、軽快なイメージ。
 楽曲の影響が大きいのでしょう。
 さらに、同じくクラシック色が強いヨーロピアンジャズピアニストでも、タメとグルーヴが効き、感情的なモノも前に出るVassilis Tsabropoulosに対して、あくまでクールで淡々としたFracois Couturierといった違いでしょうか。
 Gurdjieff、Komitasの楽曲は厳かな表情。
 対してMompouの楽曲は古典ながらなぜか現代のポピュラーミュージック的な印象。
 Keith Jarrettのソロピアノで出てきそう場面もちらほら。
 たっぷりとリバーブが効いた美しい音、少し線が細めな感じがクールなピアノが映える楽曲が並びます。
 無音、空白の空間の中、あるいは静かにチェロが鳴る空間の中、ピアノの高音が心地よく響きます。
 あるいは、わかりやすいメロディ、コードを背景にすると、頻繁にスケールアウトするフレーズの美しさが際立ちます。
 Anja Lechnerのチェロはいつもながらに表情豊か。
 前後上下左右、強弱長短、自在に伸び縮みする音と優しげな表情。
 Fracois Couturierの沈痛なメロディに乗った“Voyage"などは、今にも泣きだしそうな悲し気な音、昂ぶる感情が乗ったような素晴らしい演奏。
 などなど含めて、アルバムとしての統一感を保ちながらもさまざまな表情の楽曲。
 クラシックと静かなフリージャズな空気感が交錯する、かつ、わかりやすい、素晴らしい演奏が続きます。
 クラシカルで精神的で宗教的で・・・だけではない、ジャズの耳で聞いてもとても心地よく聞ける音。
 Anja Lechner、あるいはFracois Couturierの作品を聞くならば、意外にこのアルバムからがわかりやすくていいのかもしれません。
 俗な私が知る限り・・・




posted by H.A.

Profile
記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ