吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

【素敵なブラジル】

【Disc Review】“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari

“De Arvores E Valsas” (2008) Andre Mehmari
André Mehmari (Piano, Accordion, Bandolim, Bass, Bateria, Cello, Clarinet, Cravo, Fender Rhodes, Flute, Guitar, Mellotron, Organ, Palmas, Percussion, Synthesizer Bass, Viola, Violin, Vocals)
Teco Cardoso (Baritone Sax) Gabriele Mirabassi (Clarinet)
Mônica Salmaso, Sérgio Santos (Vocals)



 ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariの2008年作。
 南米系の音源は廃盤になるのが早く、その中にはとんでもない名作があるのですが、このアルバムはその最たる作品。
  現在も流通しているであろうオムニバスアルバム“Veredas” (2006-2008)にその一部、一番よさそうなところが収められてはいるのですが、アルバムとしての素晴らしさはまた別格。
 タイトルは「木?とワルツ?」。
 その通りに全編フワフワとした優雅なビートとナチュラルな音の流れ。
 サンバ、ボッサではない、フォルクローレな雰囲気。
 計算しつくされたと思われるアレンジと、オーバーダビングによる自身での演奏、効果的な彩りを加えるゲストの音。
 柔らかな管、弦のアンサンブルと、要所に配置される自身の声、最高のボーカリストMônica Salmaso, Sérgio Santosの声。
 シンプルな編成のピアノトリオ、あるいはソロピアノではなく、いろんな優し気な音が絡み合いながら流れていく時間。
 センチメンタルだけども、暗さや絶望感とはほど遠い優しいメロディ。
 全曲、名曲名演。
 全編を通じた浮遊感と穏やかな郷愁感。
 哀し気なようでとても前向きな、あるいは、前向きなようで悲し気な音の流れ。
 南米音楽共通の質感ですが、その繊細でデリケートな版。
 そんな空気の中を漂うような、零れ落ちてくるようなピアノ。
 スローでは十二分にタメを効かせ、時には突っ走り・・・
 少し前の“Lachrimae” (2003)の素晴らしさに多言は無用ですが、そちらは少々ジャズピアノトリオ寄り。
 この後の作品“Miramari” (2008)以降はクラシックの色合いがより強くなっているように感じます。
 その分水嶺的な作品かもしれません。
 ジャズとクラシックとフォルクローレの最高のバランスのフュージョンミュージック。
 もちろん一番強い成分はブラジル的南米的フォルクローレ。
 どこを取り出しても、とても優雅で美しい音。
 この人の音はいつもどこか遠くを眺めているような音。
 どこを切り出してもその真骨頂。
 これはもう最高でしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso

“nem 1 ai” (2000) Monica Salmaso
Monica Salmaso (Vocal)
Nailor Proveta (sax, clarinet) Andre Mehmari (piano etc.) Rodolfo Stroeter (bass) Tutty Moreno (drums) Toninho Ferragutti (acordion)

NEM 1 AI
MONICA SALMASO
DISCMEDI
モニカ サルマーゾ


 ブラジル、サンパウロのボーカリストMonica Salmaso、MPB作品。
 サポートはジャズコンボ。
 ドラムがJoyceの夫君Tutty Moreno。
 ピアノがAndre Mehmari。
 これはMPBというより、少々クラシックの色合い、フォルクローレの色合いも交錯するコンテンポラリージャズ。
 同時期、ボーカル抜きの同メンバーでジャズ作品“Forcas D'Alma” (1999) Tutty Morenoもあります。
 南米系しっとり系のジャズ~ポップスは、柔らかくて明るいECMといったイメージの作品が多いのですが、まさにそんな一作。
 バンド全体がふわふわと漂い、ゆらゆらと揺れる、強烈な浮遊感、とても優雅で柔らかなグルーヴ。
 その中を美しいボイスとピアノ、その他が駆け巡る・・・、そんな音楽。
 ボーカルはブラジル音楽定番、少しスモーキーな優しい声。
 クラシックの香りも漂わせつつ、フォルクローレな色合いも強い歌。
 彼女の作品、あるいはAndre Mehmariの作品はそんなテイストが多いのですが、リオのボッサ、サンバ系、ミナス系、バイーア系などに対して、サンパウロ系?なんてのがあるんでしょうかね? 
 ピアノのAndre Mehmariが言わずもがなの圧倒的な演奏。
 美しい音、端正なクラシックの香りを漂せつつ、強烈な浮遊感の音使い。
 ふわりと立ち上がって、静かに消えてゆく繊細なタッチ、スローではたっぷりのタメを効かせて、アップテンポでは強烈な疾走感、上品ながら意外性のある強烈なオブリガート、思い出したように現れる速いパッセージ・・・
 この頃のAndre Mehmariは本当に凄い。
 もちろん今も凄いのですが、この頃の方がジャズの色合いが強い感じ。ジャズ慣れしてしまった耳にはこの方が馴染みます。
 たくさんではありませんが、管楽器含めてエキサイティングなジャズ的インタープレーの場面もあります。
 これまた膨大なジャズの演奏の中でもなかなか聞けないような素晴らしい演奏。
 楽曲は柔らかくてメロディアスなブラジルの巨匠その他の曲のカバー中心。
 全く普通のアレンジなんだけど、出自が気にならないほどのオリジナリティ。
 不思議ですが、Andre Mehmariが絡む作品にはそんな演奏がたくさん。“Lachrimae” (2003)とかね。
 この作品、しばらくお蔵入りしていたらしいのですが、なんでだろ?
 ブラジル系のボーカルものでボッサではないもの、と言われると一押しするのはこれかな、と思う素晴らしいアルバムだと思います。
 ブラジル音楽ファンからは“Voadeira” (1999)あたりの方が好評なのかな?
 ジャズファンからすれば、こちらも大傑作。

※本投稿は2016/05/28から移動しました。



posted by H.A.

【Disc Review】 “Rosa” (2006) Rosa Passos

”Rosa" (2006) Rosa Passos
Rosa Passos(Vocal, Guitar)  

Rosa
Rosa Passos
Telarc
2006-04-25
ホーザ パッソス

 目下、私の知る限りのブラジル系のベストボーカリスト。
 かわいい系の声なのだけど実に深い。
 ボサノバ伝統のウイスパー系で、スカートをはいたJoao Gilbertoと呼ばれているらしいのだけど、わずかに強い押し。
 語尾に微妙なビブラートが掛かり、高い音では微妙に裏返り気味、鼻に抜け気味。
 湿っているような乾いているような、絶妙なバランスの発声。
 1曲目、そんな微妙な声で、いきなりアカペラが始まります。
 これにはドッキリ。
 さらに2曲目、Jobimの隠れた佳曲、ガットギター一本のバッキングで哀愁曲を囁きます。
 泣けてくるようなというような大げさな悲しみではなく、切ないもの悲しさが漂うメロディ。
 これが彼女の微妙な声と絶妙なバランス。
 そんな微妙で、絶妙、深い演奏が最後まで続きます。
 背景に何もない、無音の瞬間をたくさん感じられる、静謐で奥の深い音空間。
 有名曲やヒット曲が入っているわけではありませんが、どの曲も佳曲で彼女のために書かれたのでは、と思えるほどベストマッチな曲と声とギター。
 確かにJoao Gilberto的なのですが、女性だけにもっと優しく、同じぐらいに深い。
 最後まで同じ質感だけど、飽きてくる感じはしないのも不思議。
 じっくり聞いてしまうと何をしていても手が止まってしまいそう。
 気持ちが浄化されてくるような感覚も決して大げさではない。
 雰囲気は夕暮れ時。
 郷愁。

(※この投稿は2014/02/20から移動しました。)



posted by H.A.

【Disc Review】“Entre Amigos” (2003) Rosa Passos And Ron Carter

“Entre Amigos” (2003) Rosa Passos And Ron Carter
Rosa Passos (vocals, guitar) Ron Carter (bass)
Lula (guitar) Paulo Braga (percussion) Billy Drewes (tenor saxophone and clarinet) 

ホーザ パッソス

 Rosa Passos、Ron Carterとの共演アルバム。
 演奏し尽くされたJobimをはじめとするブラジルスタンダードが新鮮に聞こえる。
 全く奇をてらわないオーソドックスなアレンジなのに。
 心なしか軽快でノリのいい、でも何故かしっとりとした上質なバンドサウンド。
 何故だろう?
 Ron Cater?少し湿り気のあるサックス?強く弾かないゆったりとしたギター?それとも録音~ミキシング?
 少し後ろに下がった感じのバンドの前に立つ明瞭なRosaの生々しい声。
 囁くように、でもわずかに押しのある微妙な歌。
 生々しさでは弾き語り、雑味一切なしの”Rosa"(2006)に勝るとも劣らず。
 ギターあるいはベースとのDuoの場面では度々訪れる無音の瞬間。
 静かな凄み。
 でも、とても優しい音楽。
 これも宝物。

(※この投稿は2016/02/24から移動しました。)



posted by H.A.

【Disc Review】“Morada do Samba” (1999) Rosa Passos

“Morada do Samba” (1999) Rosa Passos
Rosa Passos (Vocal, Guitar)
Luis Galvão (Guitar) Fabio Torres (Piano) Gilson Peranzzetta (Accordion, Piano) Nema Antunes, Jorge Helder (Bass) Erivelton Silva (Drums) Don Chacal, Jaguara Congas, Marcos Vicente (Percussion) Idriss Boudrioua (Alto Sax) Roberto Marques (Trombone) Eduardo Neves (Tenor Sax) Ricardo Pontes (Flute)

Morada Do Samba
Rosa Passos
Bmg Int'l
ホーザ パッソス


 現代最高のボサノバボーカリストと言い切りましょう。
 Rosa Passosの名アルバム。
 コンボ編成での現代的なジャジーボサノバ。
 “Letra & Música - Ary Barroso” (1997)、“Canta Antonio Carlos Jobim” (1998)と名曲集が続いて、本作はオリジナル曲中心。
 “Pano Pra Manga” (1996)あたりまでは素晴らしいオリジナル曲がてんこ盛り。
 以降はあまり書かなくなっているようだし、自分でギターを弾く場面も減ってきます。
 この人の可憐なようで沈んだ微妙な声が一番映えるのは、この人のオリジナル曲のように思うし、彼女自身が弾く少し遅れ気味のギターだと思うのだけども、少々残念。
 さておき本作は2/3がオリジナル曲。
 ギターも同じぐらい自演。
 予想に違わない素晴らしいメロディと歌、演奏。
 しっとりとした淡い郷愁感が漂うメロディと優雅なコードの動き。
 泥臭さを感じさせない、現代的で洗練された流れ。
 裏表の声のコントロールを含めて、知り尽くした自身の声の表現の幅が最大限に出せそうな展開。
 Jobimの曲ほどキャッチーではないにせよ、淡い色合い、穏やかに語りかけるような、いかにもRosa Passosなメロディ。
 淡々としながらも、何かを慈しむような声、歌い方にピッタリくるのでしょうね。
 やはりこの人はオリジナル曲が一番。
 他には冒頭を飾るDjavanの名曲“Beiral”、Dorival Caymmi、Chico Buarqueなど。
 もちろんオリジナル曲と一体となった質感。
 少人数でのしっとりとした音から、零れ落ちるようなピアノ、ジャズの香りもふんだんにちりばめたホーン、エレキギターがフィーチャーされる音まで、素晴らしい演奏揃い。
 派手さや過剰さが一切ない、かつ不足もないナチュラルで上品、さりげない音作り。
 ”Rosa"(2006)のような静謐な凄みとは少し違うけども、コンボでの演奏の分、こちらの方が聞きやすいのかもしれません。
 これまた完璧なアルバム。
 これまた大名作です。





posted by H.A.
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