吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Contemporary Jazz

【Disc Review】"Colors: Live from Leipzig” (1997) Ornette Coleman, Joachim Kühn

"Colors: Live from Leipzig” (1997) Ornette Coleman, Joachim Kühn

Ornette Coleman (Alto Saxophone, Trumpet, Violin) Joachim Kühn (Piano)


Colors
Kuhn, Joachim
Polygram Records
1997-08-19


 Ornette Coleman、Joachim KühnとのDuo、ライブ録音。
 強面スタイリストのお二人。
 名前だけで考えるとどこまでぶっ飛んでいくのか想像がつきませんが、意外にもまずまず落ち着いた感じ。
 素っ頓狂なテーマ一発、後はあちらこちらにぶっとんでいくあの音の動きですが、ドラムとベースがいない分、相方がピアノの分、諸作とは随分印象が異なります。
 Ornette Colemanの色合いをクラシカルな空気感で包んだような感じ。
 御大の音の動きに合わせるかのように転げまわり疾走する、クラシカルな色合いも纏ったピアノ。
 疾走と浮遊の交錯、どこに落ちつていていくか読めない展開。
 ルバートなスローバラードがグシャグシャと崩れていき、哀感を湛えたジャズバラードが気が付けば超高速に疾走しています。
 やはり変幻自在。
 が、いつもの流れに沿ってビートが伸び縮みする感じではなく、むしろ定常なビート感続きつつ徐々に崩れていくような、逆に常に漂っているような、何とも言えない不思議な質感。
 もちろん普通のジャズではなく、わかりやすい甘さはありませんが、難解さ気難しさもなし。
 ちょっと苦め、でもちょっと上品でカッコいいジャズ。





Something Else!!!!” (1958)
Tomorrow Is the Question!” (1959)
The Shape of Jazz to Come” (1959)
Change of the Century” (1959)
This Is Our Music” (1960)
Free Jazz” (1960)
“To Whom Who Keeps a Record” (1959-60)
Ornette!” (1961)
Ornette on Tenor” (1961)
“The Art of the Improvisers” (1959-61)
“Twins” (1961)
“Town Hall, 1962” (1962)
Chappaqua Suite” (1965)
“An Evening with Ornette Coleman” (1965)
“Who's Crazy Vol. 1 & 2” (1965)
“The Paris Concert” (1965)
“Live at the Tivoli” (1965)
At the "Golden Circle" Vol. 1& 2” (Blue Note, 1965)
“Croydon Concert” (1965)
"The Empty Foxhole” (Blue Note, 1966)
“The Music of Ornette Coleman - Forms & Sounds” (1967)
“The Unprecedented Music of Ornette Coleman” (1968)
“Live in Milano 1968” (1968)
New York Is Now!” (1968)
Love Call” (1968)
“Ornette at 12” (1968)
“Crisis” (1969)
“Friends and Neighbors: Live at Prince Street” (1970)
Broken Shadows” (1971)
Science Fiction” (1971)
“European Concert” (1971)
“The Belgrade Concert” (1971)
“Live in Paris 1971” (1971)
“Skies of America” (1972)
Dancingin Your Head” (1976)
“Body Meta” (1976)
“Soapsuds, Soapsuds” (1977)
“Of Human Feelings” (1982)
“Opening the Caravan of Dreams” (1983)
“Prime Design/Time Design” (1983)
Song X” (1986)
“In All Languages” (1987)
“The 1987 Hamburg Concert” (1987)
“Live at Jazzbuehne Berlin” (1988)
Virgin Beauty” (1988)
“Naked Lunch” (1991)
“Tone Dialing” (1995)
Sound Museum: Hidden Man” (1996)
Sound Museum: Three Women” (1996)
Colors: Live from Leipzig” (1997)
“Sound Grammar” (2006)

posted by H.A.

【Disc Review】“Sound Museum: Three Women” (1996) Ornette Coleman

“Sound Museum: Three Women” (1996) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone, trumpet, violin)
Geri Allen (piano) Charnett Moffett (bass) Denardo Coleman (drums)
Lauren Kinhan, Chris Walker (vocals)

Sound Museum (Three Women)
Ornette Coleman
Polygram Records
1996-08-13


 Ornette Coleman、1996年のセッション。
 “Sound Museum: Hidden Man” (1996)と同セッション。
 一部にボーカルが加わりますが、メンバーはもとより、楽曲、その並びまでほぼ同じ。
 アレンジもほぼ同じですが、本作の方が少々過激度が高いかもしれません。
 いずれかがアウトテイクなのか、元々二作として制作したのか、その違いを含めた何かを感じ取るべきなのか、何かを狙ったのかはわかりません。
 ジャケットのアート、タイトルの「隠された男」「三人の女」の意味するところも何とも・・・
 本作でも漂い、突っ走り、暴れまくるピアノ。
 過激なアルコに超高速に動きまくるべース、パタパタしながらドカーンとくるドラム。
 ピアノレスのバンドはクールな感じがしますが、本シリーズ二作は華やか。
 華やかでハイテンション、過激なジャズ。
 一曲収められたボーカル曲はソウル~ゴスペル色が強いドラマチックなバラード。
 楽器の音量を抑えたアカペラチックな処理がカッコいい。
 何はともあれ、本作もハードでハイテンションなサックスジャズカルテット。
 “Sound Museum: Hidden Man” (1996)とどちらがいいかはお好み次第。
 私的にはより軽快で繊細、かつ、より過激な色合いが強いような気がするこちらですかねえ・・・
 さて、これら二作に隠された秘密は何か?
 うーん・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“Sound Museum: Hidden Man” (1996) Ornette Coleman

“Sound Museum: Hidden Man” (1996) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone, trumpet, violin)
Geri Allen (piano) Charnett Moffett (bass) Denardo Coleman (drums)

Sound Museum (Hidden Man)
Ornette Coleman
Polygram Records
1996-08-13


 Ornette Coleman、1996年のセッション。
 “Sound Museum: Three Women” (1996)と対になる、というか、ほぼ同じ楽曲をほぼ同じメンバーで演奏した二作。
 エレクトリック、エスニックなエスニックなファンク、その他諸々を経て、この人にとっては珍しくピアノが加わったオーソドックスなカルテット編成のジャズ。
 中堅~ベテランに入った期のGeri Allenに、かつての盟友のご子息のベース、自身のご子息のドラム。
 硬軟織り交ぜたぶっ飛びピアノに、重厚なCharlie Hadenとは違って軽快に動きまくるベース、叩きまくりドラム。
 アルトサックスに合わせて変化していくというよりも、ピアノが主導して背景を作っているようにも聞こえます。
 ぶっ飛んでいく音楽を引き戻しているようにも、率先してぶっ飛んでいっているようにも聞こえる素晴らしいピアノトリオ。
 充分に過激ですが、ピアノが入った分華やいだ感じ、展開もつかみやすく、普通のジャズとして聞き易いのかも。
 さすがつわものGeri Allen。
 その上を自在に飛び回るアルトサックス。
 コンパクトにまとめられた全14編。
 シリアスな激烈系ばかりではなく、漂うようなバラード、ラテン、すっとぼけたような不思議曲、賛美歌、などなど、さまざまな色合い。
 20世紀の終末近く、その世紀のジャズのいろんな要素を織り込んだハイテンションなアコースティックジャズの一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Complete Science Fiction Sessions (Science Fiction / Broken Shadows+3)” (1971,1972) Ornette Coleman

“Complete Science Fiction Sessions (Science Fiction / Broken Shadows+3)” (1971,1972) Ornette Coleman

Ornette Coleman (alto saxophone, trumpet, violin)
Charlie Haden (bass) Billy Higgins, Ed Blackwell (drums)
Don Cherry (pocket trumpet) Bobby Bradford, Carmine Fornarotto, Gerard Schwarz (trumpet) Dewey Redman (tenor sax, musette) David Henderson (recitation) Asha Puthli (vocals)
Jim Hall (guitar) Cedar Walton (piano) Webster Armstrong (vocals) & woodwinds

Complete Science Fiction Sessions
Ornette Coleman
Sony
2000-05-02


 Ornette Coleman、1971、1972年のセッション。
 “Science Fiction” (1971)と後にリリースされる”Broken Shadows” (1971,1972)の二作のカップリング。
 あの“The Shape of Jazz to Come” (1959)のカルテット、あるいはさらに二管が加わった編成をベースとして、楽曲ごとに様々なメンバーが加わります。
 ハイテンションでシリアスな表情のジャズを中心に、激烈なフリー、さらにはソウル~ゴスペル的な要素もフュージョンされる構成。
 マシンガンのようなベースが緊張感を煽り、いつになく大きいサックス、トランペットの音量、熱量。
 静かな緊張感の“The Shape of Jazz to Come” (1959)に対して、激しい系コレクティブインプロビゼーション、しばしばおとずれる混沌な場面も含めて、グリグリゴリゴリ、ビヒャーっと来る激烈系が中心。
 無秩序でも激情系ばかりでもありませんが、凄まじい音量と熱量の凄まじい演奏。
 まだ4ビート中心ですが、その合間々に挿まれる凄まじいスピードの演奏、フリーなスローバラード、静かなボーカル、よじれたようなソウルチューン・・・
 触ると切れてしまいそうな緊張感と激しさの連続。
 1960年代までの諸作はおおらかなジャズの印象も強いのですが、本作は違います。
 近い時期の“Miles Davis At Fillmore” (Jun.1970)もビックリの妖しさ激しさ120%。
 ”Broken Shadows” (1971,1972)収録分はしばらくお蔵に入っていたようですが、全部含めて凄い演奏集。
 ファンクで激しい“Dancingin Your Head” (1973-1975)まではもう少し。
 モダンジャズはもちろん、ジャズから一歩踏み出した1970年代のOrnette Coleman。
 これは凄い。




posted by H.A.



【Disc Review】“Angels Around” (2020) Kurt Rosenwinkel

“Angels Around” (2020) Kurt Rosenwinkel

Kurt Rosenwinkel (guitar) 
Dario Deidda (bass) Greg Hutchinson (drum)

ANGELS AROUND
KURT ROSENWINKEL TRIO
HEARTCORE RECORDS/MOCLOUD
2020-04-15


 Kurt Rosenwinkel、トリオでのジャズ。
 たっぷりのジャズスタンダード曲からの選曲からして、“Intuit” (1998)、“Reflections” (Jun.2009)あたりと同じく、オーソドックスなジャズ路線かと思いきや、さにあらず。
 徹底的に攻めたジャズ。
 近作“Searching The Continuum” (2019)と比べれば、十分にオーソドックスで、メロディもビートもジャズな感じではあるのですが、ディストーションを掛けたファットな音で、例のどこまでもどこまでも続いていくギター。
 ビシバシとアクセントを入れまくるヘビーなドラムに、ウネウネグニャグニャとしながら疾走するギター。
 これでもかこれでもかと攻めてくる、あくまで「ジャズ」。
 壮絶悶絶な“The Remedy“ (2006)に匹敵するような攻撃性、音圧、音数。
 油断していると聞いているほうがヘロヘロになりそうではありますが、キチンと身構えて聞けば、各曲終盤に訪れるカタルシスが何とも心地よい。
 とにもかくにも激しいギターがずーっと鳴りっぱなし。
 それでもロックロックした感じがしないのは、この人ならではの色合い。
 フリーでもない、混沌でもない、1970年代のエネルギー放出型でもない、凄まじいまでに強烈な音。
 実はジャズスタンダード集であったことなど忘却の彼方。
 これまた21世紀の新型ジャズ、ってところでしょう。




posted by H.A.


【Disc Review】“Comme à la Radio” (1969) Brigitte Fontaine

“Comme à la Radio” (1969) Brigitte Fontaine

Brigitte Fontaine (voice)
Areski Belkacem (percussion, voice) 
Lester Bowie (trumpet) Joseph Jarman (saxophones, oboe) Roscoe Mitchell (flute) Malachi Favors Maghostut (bass)
Leo Smith (trumpet) Jacques Higelin (guitar) Jean-Charles Capon (cello) Albert Guez (Lute) Kakino De Paz (voice)



 シャンソン?フレンチポップス?女優?のBrigitte Fontaine、アヴァンギャルドシャンソン。
 ウイスパーというよりも溜め息たっぷりVoice。
 妖しい。
 夫君Areski Belkacemのものであろう楽曲は、フレンチな感じがちらほらするポップス風味と地中海~中近東あたりのエスニックなものが交錯。
 次にどうなるのか予測不可能、よじれ、明後日の方向に動いていく音。
 半数ほどの楽曲にArt Ensemble of Chicagoが参加しています。
 その面々は大きな音は出しません。
 自諸作のように強烈にブラックミュージック色を前面に出すわけでもありません。
 静かなジャズ。
 静かに迫ってくるような緊張感。
 静かなアヴァンギャルド。
 摩訶不思議。
 とても妖しい。




posted by H.A.



【Disc Review】“Caoimhín Ó Raghallaigh & Thomas Bartlett” (2019) Caoimhín Ó Raghallaigh, Thomas Bartlett

“Caoimhín Ó Raghallaigh & Thomas Bartlett” (2019) Caoimhín Ó Raghallaigh, Thomas Bartlett

Caoimhín Ó Raghallaigh (Hardingfele) Thomas Bartlett (Piano)

Caoimhin O Raghallaigh..
Caoimhin O Raghallaigh &
Real World
2019-11-22



 アイルランドのフィドル奏者Caoimhín Ó RaghallaighとアメリカのピアニストThomas BartlettのDuo作品。
 アイリッシュ~ケルトミュージックなのか、ニューエイジミュージック(死語?)なのか、ポストクラシカルなのか、コンテンポラリージャズでいいのかよくわかりませんが、そんな感じの静かで穏やか、美しい音。
 ジャズっぽさはなくクラシック寄り、近年のECMレコードにありそうな感じでもありますが、もっと優しい雰囲気。
 少し遠くで鳴っているようなクラシック寄りの音で、ゆったりと置かれていくピアノ、寄り添うような物悲しいフィドルの擦過音との繊細な絡み合い。
 穏やかな起伏を伴いながら揺れるビート。
 たっぷりの余白。
 日常の法則を無視するかのように揺れ、ゆったりと流れていく時間。
 終始明るい感じながらも、ほのかなセンチメンタリズムが漂うメロディ、リフ。
 ときおりビートを崩し漂いながら、また元のゆったりとしたテンポへ。
 その繰り返し。
 ときおりいかにもケルティッシュな躍動感も表出しますが、その時間は長くはなく、気がつけばまた穏やかな表情。
 緩やかな風のようでもあるし、穏やかな波のようでもあるし。
 この種の音楽、繊細なガラス細工のような質感が多いのですが、本作はもっと柔らかくしなやか。
 さわると壊れるのではなく、緩やかに形が変わっていきそうな、そんな感じ。
 どこか遠くを眺めるような懐かしい感じは、これまたSaudadeな音。
 とても心穏やか、安らぎます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Eastward” (1970) Gary Peacock Trio

“Eastward” (1970) Gary Peacock Trio

Gary Peacock (bass) 
Masabumi Kikuchi (Piano) Hiroshi Murakami (Drums)

イーストワード
ゲイリー・ピーコック
ソニー・ミュージックレコーズ
1997-09-21


 Gary Peacock、1970年、日本で制作したピアノトリオ。
 ピアノは菊池雅章氏。
 フリー色はありませんが、モダンジャズからははみ出したコンテンポラリージャズ。
 少々硬質な質感の録音、とても繊細な音、キリッとした質感のクールなジャズ。
 ベースは饒舌ながらハードボイルドなあの佇まい。
 楽曲はあのごっつくて気難しい印象ではなく、日本的な音の動きを交えつつのコンテンポラリージャズ。
 クールなジャズに優し気なワルツ、雅な展開、ジャズロック風、そして後々まで繰り返し演奏される”Little Abi”。
 とても繊細に聞こえるのは、リリカルなピアノ、あるいは日本の空気感故でしょうか。
 零れ落ちるような、ハラハラと舞い落ちるような、そんな場面がそこかしこ。 
 あの“Paul Bley with Gary Peacock” (1963, 1968) からはずいぶん経ち、“Tales Of Another” (Feb.1977)はまだまだ先。
 バタ臭い(死語ですか?)感じのそれらに対して、あくまで端正で楚々とした感じ。
 1970年代初頭の日本、モダンジャズから一歩踏み出たジャズ。
 繊細さ、そこはかとない日本っぽさがとてもモダン。




posted by H.A.



【Disc Review】“Not in Our Name” (2004) Charlie Haden Liberation Music Orchestra

“Not in Our Name” (2004) Charlie Haden Liberation Music Orchestra

Charlie Haden (bass)
Carla Bley (piano, arranger, conductor) Steve Cardenas (guitar) Matt Wilson (drums)
Michael Rodriguez, Seneca Black (trumpet) Curtis Fowlkes (trombone) Ahnee Sharon Freeman (French horn) Joe Daly (tuba) Miguel Zenón (alto saxophone) Chris Cheek (tenor saxophone) Tony Malaby (flute, tenor saxophone)

Not in Our Name
Charlie Haden Liberation Music Orchestra
Verve
2005-08-30


 Charlie Haden、2004年、21世紀に入ってのLiberation Music Orchestra、“Dream Keeper” (1990)以来のアルバム。
 楽器編成は大きく変わっていないのだと思いますが、もう一人の主役Carla Bley以外は全員新しいメンバー。
 初期のフリー色がなくなり、スッキリしたイメージ、メロディアスなコンテンポラリージャズ。
 例のアバンギャルド、あるいは涙ちょちょ切れなセンチメンタル曲中心ではなく、Pat Metheny/ Lyle Mays/ David Bowie, Ornettte Coleman, Bill Frisellなどなど、縁のありそうな面々の楽曲が多く取り上げられています。
 お約束?のスパニッシュテイストあり、レゲエあり、霊歌風あり、ワルツあり。
 手練れた管楽器のインプロビゼーション、ところどころに彩りを加えるギター、沈み込むベース。
 かつての混沌、ドロドロした情念のようなもの、フリーキーな音、嗜虐感などなど、とんがった音が表出される場面はほとんどありません。
 アレンジもひねくれた感じはなく、おおむねオーソドックスでスッキリ爽やか。
 テーマは母国アメリカなのでしょう。
 何かしらの問題を糾弾する、あるいは悲哀で覆われた感じはなく、おおらかな空気感。
 大人になったというか、平和になったというか。
 もちろんリズム隊もフロント陣も名人芸の手練れた演奏。
 個々の楽曲のメロディとインプロビゼーションが前面に出る、洗練された現代的なジャズ。
 くすんだイメージの“Liberation Music Orchestra” (1969)のジャケットを模した明るい雰囲気のカラフルなジャケット、そのままな音。
 メッセージ、あるいは時代感さておき、トゲが取れて丸くなった、そんなLiberation Music Orchestra。




posted by H.A.

【Disc Review】“Dream Keeper” (1990) Charlie Haden, Liberation Music Orchestra

“Dream Keeper” (1990) Charlie Haden, Liberation Music Orchestra

Charlie Haden (double bass)
Carla Bley (arranger, conductor)
Amina Claudine Myers (piano) Mick Goodrick (guitar) Paul Motian (drums) Don Alias (percussion)
Tom Harrell (trumpet, flugelhorn) Earl Gardner (trumpet) Dewey Redman (tenor saxophone) Joe Lovano, Branford Marsalis (tenor saxophone, flute) Ken McIntyre (alto saxophone) Ray Anderson (trombone) Sharon Freeman (French horn) Joseph Daley (tuba) Juan Lazaro Mendolas (wood flute, pan flute)
The Oakland Youth Chorus, Elizabeth Min (director) 

ドリーム・キーパー
チャーリー・ヘイデン・アンド・ザ・リベレイション・ミュージック・オーケストラ
ディスク・ユニオン
1990-10-25


 Charlie Haden、Liberation Music Orchestra での第三作。
 “The Montreal Tapes” (Jul.8.1989)のメンバーを中心としたスタジオ録音。
 大編成のホーン陣に加えてコーラス入り。
 本作も中南米、キューバ、南アフリカなどの社会問題をテーマとしているようです。
 件のスパニッシュ~南米エスニックな雰囲気は維持しつつ、ジャズな場面もたっぷり。
 冒頭は清廉なコーラスと重厚なベースが醸し出す敬虔な空気感から始まるタイトル曲。
そんなパートと件の戦場的マーチ、ラテンな流れ、強烈なジャズインプロビゼーションの交錯、15分を超えるドラマチックな展開。
 続くはキューバ、哀愁の名曲“Rabo De Nube"、意外にも軽めにサラリとした質感、ベタつかないまとめ方。
 南アフリカの国家はメロディのアンサンブルの後は怒涛の、でも端正なモードジャズ。
 哀愁のオリジナル曲”Sandino”もアップテンポでサラリとした仕上がり。
 締めはRay Andersonが朗々と歌い上げるゴスペルチックなバラード“Spiritual”。
 いろんなテイストが寄せ集まっていますが、前作までの空気感、Carla Bleyなムードを維持しつつ、スッキリとまとまった楽曲、アレンジ。
 お約束とも思えた激情フリーの場面が無くなったのも、時代の流れでしょうか。
 もちろん全編通じた哀し気な空気感はそのまま、クールなムードのLiberation Music Orchestra。




posted by H.A.


Profile

jazzsyndicate

【吉祥寺JazzSyndicate】
吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。
コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ