吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Contemporary Jazz

【Disc Review】“Far Star” (2022) Gilad Hekselman

“Far Star” (2022) Gilad Hekselman

Gilad Hekselman (guitars, keyboards, bass, whistle, tambourine, body percussion, voice)
Shai Maestro, Nomok (keyboards) Oren Hardy (bass) Eric Harland, Ziv Ravitz, Amir Bresler, Alon Benjamini (drums & percussion)
Nathan Schram (viola, violin)


Far Star
Edition Records
2022-05-13


 イスラエル出身、今はアメリカ在住でしょうか、ギタリストGilad Hekselmanのコンテポラリージャズ。
 “Ask For Chaos”, “Further Chaos” (2018)以来、久々のアルバムなのだと思います。
 それらはオーソドックスなギタートリオと先端系の二バンドを並行して展開する形だったと思いますが、本作はまた違った流れ。
 デジタル色強め、先端色強めのスペーシーなサウンド。
 あくまで軽快ながら、もはや何拍子なのか考えるのも憚れるというか、個々の楽器が違うビートで絡み合う、複雑なビート感。
 メロディアスでわかりやすいのだけども、不思議感が漂うメロディを奏でる、丸くて柔らか、艶やかなギター。
 強い浮遊感と強烈な疾走感。
 諸作よりも目立つコンピュータで作った音と、超絶な演奏力の生楽器が絡み合い、無機的なようでそうでもない、複雑な質感。
 そんなサウンドを中心に、ときおりアコースティックギターを絡めた爽やか系やら、重いビートとディストーションなギターやら。
 とても”今風”な”ジャズ”。
 各曲、静かに始まり、終盤に向けてテンションを上げていく、ドラマチックな展開、さらにアルバムを通じたドラマ仕立てな展開は、いかにもなこの人のアルバムの構成。
 本作のテーマは宇宙な何某なのでしょう。
 確かにそんな音。
 激しくなっても突っ走ってもへんてこりんでも、あくまで優雅でメロディアス、とてもスムース。
 構成、テーマがどうあれ、心地よいこの人のサウンド。
 カッコいいんじゃないでしょうか。




posted by H.A.



【Disc Review】“Live At Budokan 1978” (Dec.12,1978) Keith Jarrett

“Live At Budokan 1978” (Dec.12,1978) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

Live At Budokan 1978
Keith Jarrett
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、ソロピアノ、東京でのライブ音源。
 これもブートレッグ、FM放送の音源でしょうか?

 “My Song" (Oct.-Nov.1977)と“Sleeper”, “Personal Mountains” (Apl.1979)の間、ソロ作品では“Sun Bear Concerts” (Nov.1976), ”Concerts:Bregenz” (May.1981)の間。
 1970年代終盤、作風が変わってきたと思しき時期の演奏。
 沈痛な面持ちのバラードからスタートし、ビートが定まった後も沈痛、散りばめられる高速パッセージ。
 その表情は徐々に明るくなっていき、フォークロックモードから、リフレインが続く長尺なゴスペルモードへ。
 20分を過ぎたあたりでビートを落とし思索モードから再びバラード、フォークロック~リリカルへと変わっていき、強い音、不思議感たっぷりなリフレインに帰着、リリカルな展開と交錯しながら前半は終演。
 後半は冒頭から速いテンポでの哀しく激しい表情。
 後のソロ演奏でよく聞かれる強い音、沈痛な面持ちのリフレインへと展開。
 ときおりの明るさは短い間、重く激しく不可思議なムードが全体を支配。
 フォークロックな表情もヘビー、静かな場面はリリカルというよりも沈痛。
 終盤は不可思議で激しい音、混沌と高揚の中でのエンディング。
 そして重苦しいムードを払拭するような喝采から、あの”My Song”。

 暴風雨は終わり陽光が射し・・・ってな感じのありがたい演出。
 静かに始まり、沈痛、不安、混沌を経て、安寧に至る、ってなドラマ。
 1970年代中盤のリリカル成分が強くてメロディアス、前向きな高揚感で結ぶ様式が、この辺りで変わってきたのでしょうか。

 キャッチーでわかりやすいのは“The Köln Concert” (Jan.1975)前後~“Sun Bear Concerts”、複雑で少々気難し気だったり、クラシック~現代音楽色が強かったりなのがこのあたり以降、といった感じでしょうか。

 いずれにしても、いまだ全貌つかめず、それが面白くて抜けられません。





posted by H.A.



【Disc Review】“Live In Hanover 1974” (Apl.1974) Keith Jarrett

“Live In Hanover 1974” (Apl.1974) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)
Palle Danielsson (bass) Jon Christensen (drums)
Jan Garbarek (saxphones)


Live In Hanover 1974
Keith Jarrett European Quartetto
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、いわゆるEuropean Quartetでのライブ音源。
 American Quartetでの“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973)と同じくブートレッグ、TV放映用のものからの音源なのでしょう。
 同じくハイテンションながら、そちらとは色合いの違うスッキリしたコンテポラリージャズ。
 “Belonging” (Apl.1974)の録音の一週間前の録音、その全曲を演奏、さながら公開リハーサル。
 当然“Belonging”に近い色合いではあるのですが、ここから余剰なモノを削って研ぎ澄ましたのがそちら、激しく生々しいのがこちら。
 公式ライブ録音作品では、“Nude Ants” (1979)よりも、スッキリした“Personal Mountains”, “Sleeper” (1979)寄りな印象。
 ぶっ飛ぶDewey Redmanとは違うぶっ飛び方をするJan Garbarek、アクが強いリズム隊含めて遠いところまで行ってしまうAmerican Quartetに対して、破裂寸前のようなピリピリした緊張感が持続するこちらのバンド。
 スタジオ録音とは違う印象のダークで妖しい”Belonging”から始まり、ビートが入るとハードなハイテンションジャズ。
 怖いほどに張り詰めたサックス、突っ走るピアノ。
 バラードもありますが、後の”My Song”やら”Country”のような甘さは抑えたられたハイテンションな演奏が続きます。
 激しくとも崩れていっても、あくまで端正でクールなこのバンド。
 散りばめらたフリーな展開もあくまでスッキリ。
 この期の演奏、どのバンド、どの作品とも、カッコいいんじゃないでしょうか。




posted by H.A.



【Disc Review】“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973) Keith Jarrett

“Berliner Jazztage 1973” (Nov.1973) Keith Jarrett

Keith Jarrett (Piano,Reeds)
Charlie Haden (Bass) Paul Motian (Drums) Guilherme Franco (Percussion)
Dewey Redman (Tenor Sax)

Berliner Jazztage 1973(+2)
Keith Jarrett American Quartetto
Hi Hat
2022-01-29


 Keith Jarrett、いわゆるAmerican Quartet+αでのライブ音源。
 ブートレッグ、TV放映用の音源なのでしょう。
 ”Solo Concerts:Bremen/Lausanne” (Mar.Jul.1973) と“The Köln Concert” (Jan.1975)の間、“Treasure Island” (Feb.1974)録音直前。
 神掛かってきた時期の演奏の、妖しくハイテンションなコンテンポラリージャズ。
 公式ライブ作品で"Fort Yawuh" (Feb.1973)、“Eyes of the Heart” (1976)がありますが、激しい前者、残り火な感じの後者に対して、もちろん近い時期の"Fort Yawuh"寄り。
 "Fort Yawuh"で演奏されていた楽曲を中心に、“Treasure Island”から少々、それらをもっと妖しくして、ほどほどに激しく、そんなバランス。
 “Death and the Flower” (1974)の冒頭的、妖しいパーカッションと笛のイントロダクションからスタート。
 その後は"Fort Yawuh"と同様、全力疾走ハイテンションジャズ。
 突っ走り転げ回るピアノにグショグショなテナーサックス、それらが落ち着いたら二管での不思議系。
 そして何事もなかったように始まる沈痛耽美系、が、早々にハイテンションジャズに様変わりし、ゴスペルチックなリフレインヘ。
 続いて“Treasure Island”的ノリノリフォークロックにリリカル系、ピアノレス二管での4ビートジャズ。   
 さらにその合間に妖しいパーカッション大会やら、山奥系のボイスやら。
 何が何だかなカオス状態。
 いかにもこのバンド的なハチャメチャさ。
 黒いサックス、バタバタドラムとボコボコベース、ピアノはタメと疾走が交錯する絶好調期。
 毒気たっぷり、甘さも少々。
 カッコいいんじゃないでしょうか。




posted by H.A.



【Disc Review】“Molde Jazz Festival 1972 & 1973” (1972,1973) Keith Jarrett

“Molde Jazz Festival 1972 & 1973” (1972,1973) Keith Jarrett

Keith Jarrett (piano)

Molde Jazz Festival 1972 & 1973
Keith Jarrett
Hi Hat
2021-08-08


 Keith Jarrett、ノルウェーのジャズ祭でのソロ演奏、1972年、1973年二年分。
 ブートレッグ、テレビ放映からの音源でしょうか。
 公式作品“Solo Concerts:Bremen/Lausanne” (Mar.Jul.1973)を間に挟んだ両年のステージ。

 1972年、冒頭は沈んだムード、徐々にテンション上げながら見え隠れする美メロ・・・が、鳴り響く不協な音・・・、前向きなフォークロックなメロディで立て直す5分前後。
 それをベースとしつつ、ゴスペル、美メロ、フリー、ラグタイムなどの色合いが交錯。
 どこに向かうのか模索すること十分前後、落ち着いたのは美メロをベースに高速パッセージが飛び交う展開。
 が、その時間は短く、再びフォークロック、ゴスペルチックな展開に転じて前半を締め。
 後半、短く不思議系な展開を挿み、リリカルな感じから諸々の展開を経てビートが定まると、再びフォークロック、前向きなコード展開と美しい高速パッセージ。
 その流れでゴスペルモードに移行していくかと思いきや、ビートを落としてこの期では珍しい雅な感じからコードを叩きつける激しい時間を経て、フォークロックとリリカルが入り混じる形で静かにエンディング。
 目まぐるしく色合いが切り替わる1972年のステージ。

 1973年、穏やかに始まりますが、早々にアップテンポへ移行、続いて後の“La Scala” (Feb.1995)あたりで目立つ思索的ミニマル的なリフレインに突入、そこに美しい高速パッセージが散りばめられる強烈な緊張感。
 沈痛な表情は少しずつ形を変えながら徐々に明るくなっていき、定番のフォークロック~ゴスペルパターンに移行、高揚感の中で前半を締め。
 後半は思索的にスタート、ビートを定めることなく漂うような演奏が続いた後、ゴスペルパターンに突入。
 再び思索パターンに転じたのち、雅モードとミニマルモードが入り混じる形から、ゴスペルモード、穏やかな高揚感の中で幕。
 躍動感が強い1973年のステージ、名演でしょう。

 いずれも近い時期の“Solo Concerts” (Mar.Jul.1973)に近いイメージ、ほどほどに甘く、ほどほどに硬派。
 近いムードではあるのですが、三者三様、それぞれに違う表情。
 但し、本二ステージ、クラシック色は薄く、フォークロックな感じが目立つともに、フリーや抽象的な場面が混ざり、双方ともに1980年代以降の色合いも既に、ってな感じでしょうか。
 “The Köln Concert” (Jan.1975)を超えるようなステージはあったのか?ってな興味もあるのですが、結局の所、最も穏やかで、リリカル成分、美メロが多く、気難しさがないのが“The Köln Concert”、それで一番人気、ってな感じなのでしょうかね。
 いずれにしても、この期はメロディアスな演奏が中心、美メロのてんこ盛り。
 これらを即興で演ってしまうってのが信じがたいというか、畏れ多いというか・・・




posted by H.A.



【Disc Review】“One Time Out” (1987) Paul Motian

“One Time Out” (1987) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Joe Lovano (tenor saxophone)


One Time Out
Soul Note
1989-12-31


 Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルからのトリオ作品。
 ここに来て幻想的名トリオ編成に。
 この期の連作、作品が進むごとに落ち着いてきている感じがするし、人数が減って静かになるかと思いきや、逆。
 確かに静かな演奏もあるのですが、ベースレスになり普通にジャズな感じが無くなりました。
 しかも、凶悪、激烈な音が並ぶ激しい演奏が中心。
 いつもの陰鬱沈痛なメロディと激しいビート。
 ギターとドラムはやりたい放題。
 グシャグシャ・ギュイーンにバタバタ・ドシャーン。
 端正でハードボイルドなイメージのJoe Lovanoもブチ切れる場面多々。
 このバンド、実はベースがかろうじてジャズサイドへ引き留めていたのかあ・・・と感心しきり。
 そんな中でスタンダードもいくつか演奏されていて、それは後のBroadwayシリーズに繋がる穏やかな音。
 艶やかでスペーシーなギターに丁寧にメロディを置いていくサックス。
 これは甘美。
 激烈と甘美な幻想が交錯する音。
 ぶっ飛んでいます。
 この後、スタンダード中心のBroadwayシリーズ、さらに後のECMレコードでの静かな音の名作群、など含めて落ち着いていくトリオですが、この期の再スタートは激烈さが圧倒する過激な内容。
 畏れ入りました。



Conception Vessel” (1973)
Tribute” (1974)
Dance” (1977)
Le Voyage” (1979)
Psalm” (1982)
The Story of Maryam” (1984)
Jack of Clubs” (1985)
It Should've Happened a Long Time Ago” (1985)
Misterioso” (1986)
One Time Out” (1987)
”Monk in Motian” (1988)
On Broadway Volume 1” (1989)
On Broadway Volume 2” (1989)
Bill Evans” (1990)
Motian in Tokyo” (1991)
On Broadway Volume 3” (1991)
Paul Motian and the Electric Bebop Band” (1992)
”Trioism” (1993)
”Reincarnation of a Love Bird” (1994)
At the Village Vanguard” (1995)
”Sound of Love” (1995)
”Flight of the Blue Jay” (1998)
”Trio 2000 + One” (1997)
”Play Monk and Powell” (1998)
”Europe” (2000)
”Holiday for Strings” (2001)
I Have the Room Above Her” (2004)
Garden of Eden” (2004)
”On Broadway Vol. 4” (2005)
Time and Time Again” (2006)
”Live at the Village Vanguard 1-3” (2006)
”On Broadway Volume 5” (2009)
Lost in a Dream” (2010)
The Windmills of Your Mind” (2011)


posted by H.A.



【Disc Review】"Misterioso” (1986) Paul Motian

"Misterioso” (1986) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)


Misterioso
Soul Note
1987-12-31


 今は亡き名手Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルでの連作、第三弾。
 タイトル曲含めてMonkさんの曲が何曲か。
 その孤高でハードボイルドな感じがこのバンドに似合っているといえばその通り。
 この期の連作、作品が進むにつれ落ち着いてきている感じ、本作は普通なジャズ度が強いかもしあません。
 普通に4ビート(そうでもないか・・・)、ハードボイルドな感じの二人のサックスがとてもカッコいい。
 が、それを引っ搔き回していくジャズからはみ出した未来的、ときにグシャラグシャラに凶悪なギターの音。
 そんな音を煽っているんだか、どこ吹く風のマイペースなのか、摩訶不思議な親分の激しい打撃音。
 つられてサックス陣も狂気渦巻く世界へ行ったり、行かなかったり・・・
 Bill Frisellが静かにソロ奏でるあの懐かしい“Byablue”なんてマニアックな趣向もあったりしますが、 その後はいきなり激烈凶悪系なギターが鳴り響いたりして・・・
 そして締めはゴスペル(スピリチュアル?)チックなサックスの朗々とした独奏。
 変幻自在、予測不可能。
 普通にジャズな演奏がある分、かえって振れ幅が大きくなったように感じたり、落ち着いたように感じたり。
 いずれにしても、この期の連作で共通しているのは、甘さなし、苦み走った男っぽい感じ、ちょっとへんてこりん。
 ジャケットのポートレートな感じ。
 このくらいのバランスの方が自然に聞けていいなあ。今日は。




posted by H.A.



【Disc Review】“Jack of Clubs” (1984) Paul Motian

“Jack of Clubs” (1984) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)

Jack Of Clubs
Soul Note
1985-12-31


 今は亡き名手Paul Motian、1980年代、アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルでの連作。
 近い時期にECMレコードでの“It Should've Happened a Long Time Ago” (1984)でBill Frisell, Joe Lovanoとのトリオ編成もありますが、こちらは前作 “The Story of Maryam” (1983)と同じくサックス二管、ベース入り。
 同編成は次作“Misterioso” (1986)まで続きます。
 これまた激しい系。
 端正なJoe Lovanoと狂気なJim Pepper。
 一人で両極端、どちらにでも振れていくBill Frisell。
 もちろん質感は前作と近く、沈痛で危機感煽り系のムードも同様。
 が、少しだけ穏やかになった感もあります。
 バラードっぽかったり、ミニマル的展開があったり、静かなギターのみの演奏があったり、サックス二本のみが絡み合う時間がたっぷりあってみたり。
 結果、不思議感も増大。
 天才的スタイリストのみなさま方がやることはわけわからず、予測不可能。
 それがカッコいい。
 それにしてもシンプルながらカッコいいジャケットのポートレート。
 まったく爽やかではなく、毒気たっぷりですが、やるせなくて男っぽい感じそのまま。
 まだここでは優しさよりも狂気強め。
 そのバランスがこの期のこのバンド。




posted by H.A.



【Disc Review】“The Story of Maryam” (1983) Paul Motian

“The Story of Maryam” (1983) Paul Motian

Paul Motian (drums)
Bill Frisell (electric guitar) Ed Schuller (bass)
Joe Lovano (tenor saxophone) Jim Pepper (tenor, soprano saxophones)

Story Of Maryam
Soul Note
1984-12-31


 かつてBill Evans, Keith Jarrettを支えたスタリストPaul Motian、1980年代アヴァンギャルドジャズ、イタリアSoul Noteレーベルから。
 ECMレコードからの“Psalm” (1982)に続くアルバム、同じくBill Frisellのギターとベースのトリオにサックス二管入り。
 とても妖しく激しい音。
 よじれたメロディ、ぶっ飛んでいくビート。
 浮遊と激烈を行き来するギターに、狂気が入り混じる二本のサックス。
 近い時期のECMレーベルからの諸作では、静かなイメージもあるのですが、こちらはぶっ飛んだ激しい系。
 テンションの高い混沌はエレクトリックMilesの派生型のようにも思えますし、ブチ切れた演奏が始まればPharoah Sandersが加わった頃のJohn Coltraneバンドのような感じもします。
 あるいは十二分に激しい“Fort Yawuh” (1973) Keith Jarrettをさらにグチャラグチャラにした感じは、Keith Jarrettアメリカンカルテットの行きついた先、ってな感じもします。
 いずれにしても、エレキギターの音が新しいというか、妖しさ激しさを先導しているというか、不思議さ120%。
 そんな激しい演奏の合間に挟み込まれるジャズでバラードな演奏がとてもハードボイルド。
 が、その時間は短く、再び混沌の中へ・・・
 時代はフュージョン、AOR真っ盛りだったのだと思うのですが、どこ吹く風。
 後の甘美なBroadwayシリーズとは全く違うハードネス。
 毒気たっぷり、遅れてきた激烈フリージャズたっぷり、それに少々の優しさが交錯する男臭い音。
 硬派でカッコいいんじゃないでしょうか。

※これは爽やか系。



posted by H.A.



【Disc Review】“Side-Eye NYC (V1. IV)” (2019) Pat Metheny

“Side-Eye NYC (V1. IV)” (2019) Pat Metheny

Pat Metheny (Guitar)
James Francies (Keyboards) Marcus Gilmore (Drums)


SIDE-EYE NYC (V1.IV)
PAT METHENY
ADA/BMG/MODERN RECORDINGS
2021-09-10


 Pat Metheny、新作は新メンバーでのトリオ。
 スタジオ録音とライブ録音が半分ずつ。
 少し前の録音、“From This Place” (2019)とも時期は遠くないのだと思いますが、全く違うメンバー。
 ドラムは長年の盟友Antonio Sanchezではなく同世代の名手Marcus Gilmoreへ、キーボードは若手コンテンポラリージャズの名手。
 デジタル色も交えつつのコンテンポラリージャズ。
 キーボードは21世紀型。
 Herbile Hancockな感じに、Hip Hop的というか、ミニマル的というか、そんな色合いも交えつつの今な感じのコンテンポラリージャズピアノ&オルガン&シンセサイザー。
 冒頭は長尺で激しい演奏のライブ音源。
 ドラムは静かにヒタヒタと迫ってくる系、“Still Life (Talking)” (1987)あたりのあの感じ。
 静かな緊張感、シンセサイザーとフワフワしたエレピが絡み合う中でギターが奏でる物憂げなメロディ。
 複雑に形を変えながら、中盤から終盤に向けて激しいインプロビゼーションとともにテンションを上げていくバンド、強い高揚感の中での幕。
 今風ポップな先端ジャズに彩られたドラマチックなPat Methenyサウンド。
 なるほど、新基軸はこの線か・・・
 と思いきや、以降は意外にも普通な感じのコンテンポラリージャズフュージョン。
 続くBetter Days Ahead、他にもBright Size Life, Turnaround, The Batといった懐かしい楽曲も演奏され、それらはどこかで聞いたバージョンに近い感じ。
 他にもジャズブルース・フュージョンやら、爽やかフュージョンっぽい感じやら。
 ギターはいつも通りですが、リズムはひねった感じがそこかしこ、キーボードはジャズフュージョンの形を守りつつも変幻自在、アグレッシブなインプロビゼーション。
 “From This Place” (2019)は壮大でゴージャスな音絵巻でしたが、本作は少々カジュアル、今風コンテンポラリージャズ。
 さて、次は本作の一曲目の線なのか、あるいは”The Way Up” (2003-4)From This Place” (2019)路線なのか、それらのフュージョンなのか、はたまたもっと別な形なのか。
 さて、、、?



 


posted by H.A.



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