吉祥寺JazzSyndicate

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Tango/Folklore

【Disc Review】“Aguasilabas” (2019) Sebastian Macchi Trio

“Aguasilabas” (2019) Sebastian Macchi Trio

Sebastián Macchi (voice, piano, rodhes, guitar)
Carlos Aguirre (fretless bass, voice) Gonzalo Díaz (drums, percusion, glockenspiel, voice)

AGUASILABAS
SEBASTIAN MACCHI TRIO
bar buenos aires
2019-09-27


 アルゼンチンのシンガーソングライター、あるいはピアニストSebastián Macchiの現代フォルクローレ。
 Carlos Aguirre のレーベルShagradamedraから。
 オーソドックスなピアノトリオ編成を中心にボーカルを載せた歌物中心、Carlos Aguirreがベースを担当。
 ゆったりとしたテンポ、フワフワとしたフォルクローレベースのビートに、優しく哀し気なメロディ、繊細な音使い。
 CD一枚、全13曲、全編それ。
 とても繊細なCarlos Aguirreの音楽を、さらに繊細にしたような音。
 零れ落ちるような美しいピアノと儚げな声。
 疾走する場面はなく、強い浮遊感を纏いつつ、淡々と音楽は進みます。
 河沿いミュージックなんて言葉があるようですが、確かに水が流れていくような、ときおり川面がきらめいているような、木漏れ日のような音。
 景色は緩やかに移ろっていきます。
 少しビートが上がっても、その強いビートを包み込むようなこれまた繊細な歌声。
 全曲少し哀し気な表情のキャッチーなメロディ。
 いろんな構成、いろんなメロディが揃っていて、楽曲ごとに表情は異なるのですが、どこを切り取ってもセンチメンタルにならざるを得ない音の動き。
 それでいて沈痛さや深い哀しみとは距離のある、淡いセンチメンタリズム、どこか懐かしい空気感。
 あくまで前向きな音。
 本家本元、南米のSaudade、その現代の音。
 名作“Luz de agua” (2005)に並ぶ名作。




posted by H.A.

【Disc Review】“La musica del agua” (2019) Carlos Aguirre

“La musica del agua” (2019) Carlos Aguirre

Carlos Aguirre (piano, vocal)



 現代フォルクローレのリーダーの一人Carlos Aguirreの2019年最新作。
 全編歌物、ピアノの弾き語り。
 リーダー作は“Calma” (2017) Carlos Aguirre Trío以来でしょうか。
 コンテンポラリージャズなそちらに対して、本作は濃厚な現代フォルクローレ色。
 テーマは『水の音楽』。
 楽曲は自身のオリジナルではなく、おそらくは南米の先人たち、Shakrada Medraで名前を見受ける仲間たちの作品。
 ここまでのリーダー諸作と少し印象が異なるのは、それが大きいのかもしれません。
 バラード中心、少しずつ各曲の表情は異なります。
 もちろん、いずれもフォルクローレの香りたっぷり、優しく少し悲し気なメロディ。
 それらが丁寧に綴られていきます。
 “Carlos Aguirre Grupo (Crema)” (2000)の華やかなアレンジ、強烈なセンチメンタリズム、“Carlos Aguirre Grupo (Violeta)” (2008)の激しさ、ドラマチックさはありません。
 全編に漂うほのかなセンチメンタリズム、やるせなさ、遠いところを眺めているようなムード。
 が、悲痛さはありません。
 Saudade。
 そんな空気感の中、優しいメロディが穏やかに奏でられ、歌われ、流れていきます。
 脚色や演出を取り除いた生のアルゼンチンSaudadeは、こんな感じの音なのでしょうね。


※少し前の演奏から


posted by H.A.



【Disc Review】“Fogo” (2009) Rolo Rossi

“Fogo” (2009) Rolo Rossi 

Rolo Rossi (piano)



 アルゼンチンのピアニストRolo Rossiのソロピアノ作品。
 キッチリとしたビートと美しいメロディの端正な演奏集。
 ジャズ的なビート感ではなく、その意味ではクラシック的なのですが、もっとポップでわかりやすい感じの音。
 Shagrada Medraには、“Caminos” (2006) Carlos Aguirre、”Piano Solito” (2016) Sebastian Macchi、”Paino Pampa” (2016) Sebastian Benassiなどなど、ソロピアノ作品がたくさんありますが、その中でもポップス寄りな感じでしょうか。
 カクテルピアノ、なんて言葉がありますがそんな感じでもなく、テンポが速くて次々と連なるように繰り出される音。
 フォルクローレな奇数系の浮遊感のあるビート、バラードではほどほどにタメと揺らぎを効かせて音が置かれていきますが、なぜかキッチリした感じ。
 とてもセンチメンタルなメロディがなぜか恋々とせず、キリッとして聞こえます。
 朗々としたピアノ・・・なんて形容も違和感がありますが、そんな感じ。
 全くもって普通な感じなのですが、それがかえって不思議というか、個性的というか・・・
 フォルクローレを含めた現地のポピュラーミュージックの色合い、現地の空気感が内包された音なのでしょう。
 センチメンタルでも明るくて前向きなのはいかにもアルゼンチン。
 そのキッチリとした端正なソロピアノの一作。




posted by H.A.

【Disc Review】“Ecos Del Sendero” (2008) Duo Tritten Bonfiglio

“Ecos Del Sendero” (2008) Duo Tritten Bonfiglio

Andres Tritten, Leandro Bonfiglio (guitar)
Oscar Manassero (udu, percussion) Guillermo Copello (violin) Carolina Velazquez (guitar) "Chey" Ramos (bombo)



 アルゼンチンのギタリストのDuoアルバム。
 ギター二本のアンサンブルを中心として、楽曲によって加わるエスニックな楽器が加わる構成。
 おそらく二人ともクラシックの人なのでしょう。
 ビート感はとても穏やかですが、純クラシック、フォルクローレとは少々違う質感。
 インタプレー的な絡み合いに加えて、リフ的なのアルペジオの繰り返しが印象に残るアンサンブル。
 その場面はミニマルミュージック的なのかもしれませんし、全体を通して作り込まれたクラシック音楽というよりも、サラサラと水が流れているような、風が吹いているような音の流れ。
 甘すぎないメロディと、強烈な疾走、浮遊の場面が少ないことも、そんな淡くてさり気ない感じにつながっているのかもしれません。
 このレーベルの立地にちなんで“川沿いミュージック”なんて言葉があるようですが、まさにそんな音、そのクラシックギター版。




posted by H.A.


【Disc Review】“Parece Pajarito” (2005) Coqui Ortiz

“Parece Pajarito” (2005) Coqui Ortiz

Coqui Ortíz (voice, guitar)
Julio Ramírez (accordion, verdulera, bandoneón) Fernando Silva (contrabass) Cacho Bernal, Corcho Benítez (percussión) 
Luis Barbiero (flute, píccolo) Raúl Junco (cuento breve, glosas) Carlos Aguirre (piano) Juan Quintero (voice)

 アルゼンチンのシンガーソングライターCoqui Ortizの現代フォルクローレ。
 “En Grupo” (2002) の次作に当たるのでしょうか?
 とても平和な音。
 “チャマメ”というフォルクローレのカテゴリがあるようで、その作法に従ったギターとアコーディオン、バンドネオンの絡みを中心として、フルートが加わる構成が中心。
 ギターがつま弾く軽快なリズムに、のほほんとしたアコーディオン。
 その上に乗っかる優し気で朗々とした男声。
 平原のトウモロコシ畑の中の街の長閑で平和なお祭り・・・的な空気感は、メキシコやテキサスにも通じるサウンド。
 北米と南米、距離は離れていますが、根っ子のスペイン時代からの空気感が残っているんでしょうねえ。
 楽しげな中にあるそこはかとない哀しさは、もちろん南米Saudade。
 ときおり聞こえるピアノが美しくてタメが効いていてカッコいいなあと思っていると、御大Carlos Aguirreだったりします。
 わずか二曲への参加ですが、さすがの存在感。
 そんなオシャレな感じも少々。
 おおらかでのんびりした南米ミュージック。




posted by H.A.


【Disc Review】“Casa” (2016-2017) Clara Presta, Federico Seimandi

“Casa” (2016-2017) Clara Presta, Federico Seimandi

Clara Presta (piano, voice) Federico Seimandi (bass)
Juan Pablo Theaux (timpe, guitar) Lisandro Mansilla (sax) Rodrigo Carazo, Guadalupe Gómez (voice)

Casa
Independiente
2018-02-05


 アルゼンチンの男女Duoの現代フォルクローレ。
 フォーキーで優しい、でも不思議感たっぷりな現代の音。
 ピアノとボーカルの女性とベースを中心として、楽曲によって少人数のゲストが加わる編成。
 音楽自体は静かなバラードを中心としたオーソドックスなテイスト。
 クラシック、ジャズ、フォルクローレ、少々のタンゴの香りがするポップス風味。
 ピアノもベースも奇をてらった感じでも派手な感じでもありません。
 むしろ訥々した感じ、少人数での南米ミュージックゆえの柔らかな浮遊感。
 さらに諸々ひねったような不思議感。
 シンプルなようで凝ったアレンジなのだと思います。
 全編に哀感が漂っていますが、激甘センチメンタルではない淡くてクールな感じ、複雑な動きのオリジナル曲は、いかにも現代の若者のメロディ。
 そんな音を背景にした、とても繊細で美しい声。
 ブラジルNo.1の超美声Gisele De Santiを薄めにしたような感じでしょうか?
 透明度高い可憐系、さらさらと流れながら、上に上がると自然に裏返る、ふわりとした心地よい声。
 素晴らしい歌なのですが、なぜか前面に出る感じではなく、ピアノ、ベース、ゲストのギター、サックスと対等にアンサンブルの一部として溶け込んでいるさり気ないイメージ。
 全編に漂うどこか懐かし気な空気感は、もちろん南米Saudade。
 などなど含めて、近年の現代フォルクローレの色合いが揃ったようなサウンド、優しい系。




posted by H.A.

【Disc Review】“Trino” (2017) Aca Seca Trio

“Trino” (2017) Aca Seca Trio

Juan Quintero (Voice, Guitar, Ronroco, Pandero cuadrado) Andrés Beeuwsaert (Voice, Piano, Keyboards, Bass, Pandero cuadrado) Mariano Cantero (Voice, Drums, Percussion, Efecters)

Trino トリノ
Aca Seca Trio
NRT
2018-04-20


 アルゼンチン、現代フォルクローレの定番ユニット、Aca Seca Trio の最新作。
 近作の関連作品に“Hermanos” (2013) 、“Serpentina” (2017) などがありますが、トリオの作品としては“Ventanas”(2009)以来でしょうか?
 瑞々しいギターに零れ落ちてくるようなピアノ、朗々とした男声のスキャットにコーラス。
 本作ではゲストはなくトリオのメンバーだけでのシンプルな音。
 元気で若々しい音、アルゼンチン現代フォルクローレの定番サウンドのひとつ。
 Juan Quinteroの楽曲を中心に、Sebastian Macchi、Jorge FandermoleのShagrada Medra勢などなど。
 このバンドにしてはセンチメンタル度が強いなあ・・・と思っていたら、Sebastian Macchiの曲だったり、幻想的だなあ・・・と思っていたら、Andrés Beeuwsaertの曲だったりします。
 それにしてもAndrés Beeuwsaertのピアノがカッコいい。
 クラシカルな上品さを漂わせつつ、タメが効いていて、要所で突っ走る美しい音。
 元気で前向き、フォークロックなJuan Quinteroとの組み合わせ、そのバランスがいいんでしょうね。
 そんなこんなでいつものこのバンドの音。
 これまた定番。




posted by H.A.

【Disc Review】“Fiero.” (2017) Quinteto Bataraz

“Fiero.” (2017) Quinteto Bataraz

Lisandro Baum (piano) Pablo Farhat (violin) Matías Gobbo (bandoneon) Sebastián Henríquez (guitar) Carolina Cajal (contra-bass)

FIERO
QUINTETO BATARAZ
Independent


 アルゼンチンのバンドQuinteto Bataraz、タンゴ、フォルクローレ、ジャズ、クラシックなど、さまざま要素が入り混じるアンサンブル。
 いわゆるAstor Piazzollaキンテートの編成。
 基本はタンゴなのだと思いますが、クラシック色、フォルクローレ色が入り混じるコンテンポラリージャズな感じ、でもジャズ的なビート感ではないので、さて、何でしょう・・・?
 ってな感じのバランス。
 現代タンゴのDiego Schissiの音楽に近いのかもしれませんが、もう少し柔らかい感じでしょうか。
 複雑にビートを変えながらアップダウンする音の動き。
 それでいて上品でつつましやかで淡々とした音の流れ。
 Astor Piazzolla的展開、静かなジャズ、室内楽クラシック、もろ“展覧会の絵”のインタールード・・・、端正なピアノ、漂うバンドネオン、悲し気なバイオリン、クールなギター・・・
 次々と風景が変わっていくような音の流れ、ピアノ、バイオリン、バンドネオン、ギターが代わる代わるフロントに立ち、他のメンバーがアンサンブルを加えつつ、音量と熱量が上がっていく構成はタンゴのそれ。
 が、淡くてクールな感じのメロディ、演奏、計算しつくされたと思われるアンサンブルの中に時折現れるインプロビゼーションが現代な感じ。
 Astor Piazzolla縁の音の現代版。
 彼の音楽にさまざまな要素をフュージョンした、クールな現代の音。
 ベタつかない感じ、また、明るくて軽快、前向きな感じが、とてもいい感じ。
 こんな感じが現代アルゼンチンの若者のタンゴの色合いなのでしょうかね・・・?
 中身もいいのですが、ジャケットがカッコいいなあ。




posted by H.A.


【Disc Review】“Tanguera” (2017) Diego Schissi Quinteto

“Tanguera” (2017) Diego Schissi Quinteto

Diego Schissi (piano)
Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon, voice) Ismael Grossman (guitar) Juan Pablo Navarro (contrabass)
Lidia Borda, Nadia Larcher, Micaela Vita (voice)

Tanguera
Club del Disco
2018-06-01


 現代タンゴのDiego Schissi、“Timba” (2016)に続く最新作、ライブ録音。
 本作は不動のバンドメンバーに何曲かにボーカリスト。
 少し面持ちが異なるのがオリジナル曲ではなく、タンゴクラシックのアーティストMariano Moresの楽曲に絞って取り上げていること。
 あの硬質で不思議なピアノの短いイントロを過ぎると、いかにもなボーカルも含めて、タンゴなイメージそのままのハイテンションな情熱系の序盤。
 この人のバンドらしく不思議感はたっぷりですが、強いビートに沈痛で哀し気なメロディ、激しくアップダウンする音の動き。
 前半はそんなハイテンションな演奏が続きます。
 中盤からギターとバンドネオンの優しいDuo、ピアノとバイオリンの優雅なDuoなどをを間に挿みつつ、徐々に優雅で優しい表情の場面が増えてきます。
 終盤は前向きな印象、ドラマチックなバラードに、少々コミカルな演奏でクールダウン。
 さらに締めはピアノSoloでのとてもメロディアスなバラード、ほっとするようなエンディング。
 キツめの音から穏やかな音へのグラデーション。
 次々と景色と空気感が変わっていくような構成は、ハッピーエンドなサスペンス映画を見たような感覚。
 これが現代、あるいは伝統的なタンゴの時代からのステージ構成の王道なのかな?
 ドラマチックです。



posted by H.A.


【Disc Review】“Timba” (2016) Diego Schissi Quinteto

“Timba” (2016) Diego Schissi Quinteto

Diego Schissi (piano)
Guillermo Rubino (violin) Santiago Segret (bandoneon) Ismael Grossman (guitar) Juan Pablo Navarro (contrabass)

Timba
Club del Disco
2016-06-27


 現代タンゴのDiego Schissi、2016年作品。
 “Tongos” (2010)と変わらないメンバー。
 “tipas y tipos–en vivo en café vinilo” (2012), “Hermanos” (2013)は他のメンバーが加わっていましたが、Diego Schissiバンドは不動のメンバーのキンテート。
 本作はフォルクローレ風味は抑え気味、現代音楽~クラシック色が強めのバランスの複雑で不思議なタンゴ。
 重苦しい弦の響きから始まる複雑なアンサンブル。
 先の読めない変幻自在な展開。
 クラシカルなタンゴの香りの目まぐるしい楽器の絡み合い。
 “Tongos” (2010)、“tipas y tipos–en vivo en café vinilo” (2012), “Hermanos” (2013)あたりで感じられたフォルクローレな色合い、優しく感じられた質感が薄まり、デビュー作“Tren” (2008)の強さ、高い緊張感に戻ったようにも感じます。
 さらに少々ダークな色合い。
 ピアノが前面に出る場面は少なくなり、終盤の何曲かに限られています。
 アンサンブル中心、少人数で静かな場面でも前面に立つのはバイオリン、バンドネオン、ギターが中心。
 結果としては、コンテンポラリージャズの色合いも薄くなっているようにも感じます。
 共通するのは繊細さ。
 前半の激しく沈痛な面持ちの絡み合いから、終盤に収められたピアノを中心とした静かな数曲にほっとしつつも、最後は妖し気なボイスと叫び声、SEを絡めた不穏な空気感の中で幕・・・
 そのタイトルの英訳は“Dead talking”・・・なるほど・・・




posted by H.A.


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