“Vermillion” (2021) Kit Downes
Kit Downes (piano)
Petter Eldh (double-bass) James Maddren (drums)
イギリスのピアニストKit Downes、ピアノトリオ作品、ECMレコードから。
ECMでは“Time Is A Blind Guide” (2015) Thomas Stronenでタダモノではない感たっぷりな疾走ピアノ、リーダー作としてはパイプオルガン演奏“Obsidian” (2017) 、ベースレスの変則編成“Dreamlife of Debris” (2019)ときて、ようやくオードドックスなピアノトリオ編成。
が、オーソドックスではない不思議感たっぷりな音。
難解さ、気難しさはありません。
美しく、サラサラとした質感の音。
メロディアス、でも幻想的、そんなバランス。
柔らかな音の軽やかなピアノ。
饒舌なベースと静かで自由なドラム。
静かながら凝りまくったビート。
誰が何拍子で何を演っているのかわからない複雑さ。
三者三様、キッチリと主張しているのですが、誰が突出するわけではない一体感。
淡いメロディ、静かで穏やかな音の流れ。
疾走や激情はありません。
ECMでのお約束、ルバートでのスローバラードもありません。
ビートが効いているのに、なぜか漂う浮遊感。
メロディアスなのですが、なぜかその芯をつかめない感じ。
不思議感たっぷり。
でも迷宮感はない、穏やかで明るい色合い。
強い浮遊感、淡い色合いは、21世型ECMの典型のような感じですが、このバランスは新しいのかも、とも思います。
いずれにしても心地よい時間。
不思議感ゆえなのでしょう、飽きそうにありません。