吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

ECM records

【Disc Review】“When we leave” (2020) Matthias Eick

“When we leave” (2020) Matthias Eick

Mathias Eick (Trumpet, Keyboard, Vocals)
Andreas Ulvo (Piano) Audun Erlien (Bass) Torstein Lofthus (Drums) Helge Andreas Norbakken (Drums, Percussion)
Håkon Aase (Violin, Percussion) Stian Carstensen (Pedal Steel Guitar)

When we leave
Matthias Eick
ECM
2021-09-24


 ノルウェーのトランペッターMathias Eick、哀愁ヨーロピアン・コンテンポラリージャズ、ECMレコードから。
 前作“Ravensburg” (2017)と同様、ピアノトリオにバイオリン、パーカッションを加えた編成に、一部にスチールギターが加わります。
 いつもと変わらない寂寥感の塊トランペットに、いつもと変わらない哀愁滴るメロディ、それでいてとても穏やかな空気感もいつもと変わりません。
 トランペットの寂寥感に対して、音楽自体はもともと明るい色合いの人。
 ECMでの第一作“The Door” (2007)と比べても、その質感は変わりません。
 とはいえ、メロディアスな楽曲が揃ったからなのか、アンサンブルが洗練の極みに達したからなのか、全編が穏やかな空気感だからなのか、哀愁指数、郷愁指数は本作が一番高いかもしれません。
 ゆったりとしたビート。
 優しくセンチメンタル、ノルウェーの色合いなのであろうエキゾチシズム、微かな違和感を含んだメロディ。
 インプロビゼーションよりもアンサンブル。
 ドカーンとではなくジワジワくる系。
 計算し尽くされ編み上げられているのであろう、が、さりげなく聞こえる柔らかな音の流れ。
 さらに一曲一曲の中に込められた、これまたさりげない起承転結。
 さりげなくとてもドラマチック。
 あくまで穏やかなのですが、まるで涙腺と琴線を狙い撃ちしているかのようなメロディ、アンサンブル、展開。
 連発される哀愁のメロディとアンサンブル中心の構成、8ビート系中心のリズムは、ともすればポップにも聞こえるかもしれません。
 実際、ポップでキャッチーだと思います。
 が、最初の20秒のみで図らずも涙腺がゆるんでしまいそうな破壊力をもったメロディがたくさん。
 全部含めて哀愁・郷愁の金太郎飴。
 切るところによって微妙に表情は違います。
 どの表情もとてもSaudade。



 
posted by H.A.



【Disc Review】“Lonely Shadows” (2019) Dominik Wania

“Lonely Shadows” (2019) Dominik Wania

Dominik Wania (piano)

Lonely Shadows
Dominik Wania
ECM
2020-09-18


 ポーランドのピアニストDominik Wania、ソロピアノ作品、ECMレコードから。
 同レーベルからの同胞サックス奏者Maciej Obaraの“Unloved” (2017), “Three Crowns” (2019)に参加していた人。
 それらの中でタダモノではない感たっぷりの演奏を繰り広げていた人。
 メロディアスかつ浮遊と疾走が交錯する音は、ちょっと聞くだけでも凄いかもと思わせるピアノ。
 ECMからリーダー作がくるんだろうなあ、と思っていたら案の定。
 上記ではジャズの香りたっぷりの演奏でしたが、さまざまな色合いのソロ演奏集。
 全11編、コンパクトにまとめられたそれぞれが別の表情の短編集の面持ち。
 微妙なタメを伴いながらゆったりと美しいメロディを奏でていくピアノ・・・かと思えばフリー混じりの疾走・・・あるいはクラシック風味の優雅な演奏・・・はたまた押し寄せるアルペジオ・・・やはりあるのかダークで沈痛な音・・・
 めまぐるしく変わっていく景色。
 次に何が来るのか予測不可能。
 傑作“La Scala” (Feb.1995) な感じを軽くコンパクトにした、ってな感じもするし、Keith JarrettChick CoreaCecil Taylorらのレジェンドたち、近い世代のLeszek MozdzerMarcin Wasilewskiあたりが次々と入れ替わりながら登場するというか、それらが入り混じった新しいスタイルというか・・・
 一貫しているのは凄まじい演奏力、そして美しいことはもとより、シャープなのに優しくてふくよかな音、そのうえでのクールな空気感。
 激しく飛び回ってもうるさくなく、むしろ上品で優雅。
 テンポ落とせば、あるいは美しいメロディを奏でれば。後ろ髪を引かれるような綿々とした音の流れ、そして次の瞬間に来る凄まじいまでの疾走。
 クールでサラリとした質感は一聴さりげないのですが、凄い。
 やはりタダモノではありませんでした。
 現代ポーランドジャズ、畏るべし。




posted by H.A.



【Disc Review】“En attendant” (2019) Marcin Wasilewski Trio

“En attendant” (2019) Marcin Wasilewski Trio


Marcin Wasilewski (Piano)

Slawomir Kurkiewicz (Double Bass) Michal Miskiewicz (Drums)

En attendant
Marcin Wasilewski Trio
ECM
2021-09-10






 もはやベテランなのでしょう、ポーランドのピアニストMarcin Wasilewski、トリオ作品。
 近作“Arctic Riff” (2019)はJoe Lovanoのサックス入りでしたが、本作はピアノトリオのみ。
 おそらくそれに連なるセッションでの録音。
 メンバーも長年続くSimple Acoustic Trioそのままですが、“Arctic Riff” (2019)を含めてイメージが少々変わったようにも感じます。

 少し抽象的で淡い色合いは、ECMレコードでの初作“Trio” (2004)に近い感じかもしれませんが、もっと複雑。
 三者のいわゆるインタープレーを中心とした演奏。
 定常なビートよりも、誰かが先導する自由なビートと音の流れに合わせ、他のメンバーがこれまた自由に反応していくような時間がたっぷり。

 変幻自在、予測不可能。
 あらかじめ準備された楽曲に加えて、フリーなインプロビゼーションと思しき演奏が数編。

 十分にメロディアス、ECMレコードのお約束のルバートでの超スローバラードや、8ビートな今風ジャズ、いかにもヨーロピアンなクラシック風味ジャズなどが並びますが、定常なビートの時間が減り、淡い色合いの複雑な表情。

 そのうえで、このトリオの軽快さ、明るい色合いはそのまま。
 フリーな感じ、妖しいムードは漂っているのですが、難解さや気難しさはなし。

 あくまで静かで穏やか、落ち着いています。
 そんな音の流れの中、しばしば現れる美メロ、ときおりの疾走が作り出す覚醒の瞬間、そのバランスがとてもいい感じ。

 大きな音や長い疾走の場面がない分、全編が穏やかながら強い浮遊感に包まれています。
 さらにカラリとした湿度感、サラリとした質感を含めて、大きめの音で流すと心地よさ最高。
 繊細で儚く美しい、さらに淡さ軽快さ明るさ、そのうえでのクールネスが21世紀型。
 そんな淡麗なヨーロピアンジャズ。
 苦からず、甘からず。



 

posted by H.A.



【Disc Review】“The News” (2019) Andrew Cyrille Quartet

“The News” (2019) Andrew Cyrille Quartet


Andrew Cyrille (Drums)
Bill Frisell (Guitar) David Virelles (Piano, Syntzesizer) Ben Street (Double Bass)

The News
Andrew Cyrille Quartet
ECM
2021-08-27


 フリージャズ系ドラムの大御所Andrew Cyrilleの近作。
 ピアノトリオ+ギターの編成、近年のECMオールスターズ。
 リーダー作は“Lebroba” (2017)以来でしょうか。
 ピアニストが交代していますが、冠されたバンド名、編成からすれば“The Declaration Of Musical Independence” (2014)の続編なのかもしれません。
 静かで幽玄な空気感は前作、前々作と同様ですが、色合いは異なります。
 気難しさがなくなり、明るい色合い、とてもメロディアス。
 優しく穏やかなコンテンポラリージャズ、ってな感じ。
 冒頭はECMレコードのお約束、ルバートでのスローバラード。
 定まりそうで定まらない、止まりそうで止まらないビート。
 温かくて懐かしい空気感と、強烈な浮遊感。
 とても美しいのであろうメロディの芯が見えそうで見えない展開。
 舞い散るシンバル、前面に出るBill Frisellの音とも相まって、往年のPaul Motianトリオを想い起こす名演奏。
 以降、ビートが定まった演奏が多いのですが、いずれも柔らかで穏やか。
 その中を漂うギターと疾走するピアノ。
 ときおりのカントリーテイスト、ブルーステイストはギタリスト、ラテンテイストはピアニストの色合いなのでしょう。
 普通にジャズな感じもたっぷりなのですが、普通にはならないのが、特別なギターとピアノに加えて、目立つことなくペースを作るベース、そして静かに自由に鳴るドラム。
 締めはたっぷりと美しいピアノとギターがフィーチャーされた、再びルバートな超スローバラード。
 全編通じて絶妙なバランスの心地よさ。
 思っていたものとは違いましたが、名作だと思います。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Overpass” (2018) Marc Johnson

“Overpass” (2018) Marc Johnson


Marc Johnson (Double Bass)

Overpass
Marc Johnson
ECM
2021-08-27


 大御所Marc Johnson、べースソロ作品。
 ECMレコード、得意にして特異な企画。
 さまざまなつわものたちのべースソロ作品がありますが、本作はオーソドックスなジャズ寄り。
 “FREEDOM JAZZ DANCE”、”NARDIS“から始まり、"LOVE THEME FROM SPARTACUS”といったスタンダードを挿みつつ、オリジナルを数曲。
 純粋にベースのみですが、取っつき難さや気難しさはありません。
 クラシックっぽくもありません。
 あくまでジャズ。
 静かな空間の中に置かれていく低音。
 たっぷりの余白。
 ときおり弓弾き、オーバーダビングが加わりますが、音色は低音の弦、一つだけ。
 きらびやかさはもちろん、アグレッシブさや実験的な要素もありません。
 でも飽きません。
 多くの場面でスウィングしていて、かつメロディアス、さらに起承転結が見える展開だからでしょうか。
 低音のみゆえ、とても穏やかで落ち着いた時間。
 どこか遠いところ、あるいは懐かしいところに連れて行ってくれるような音。
 ダークなムードだけど温かい音。
 コンボだとこんな感じにはならないのでしょう。
 ジャケットの紺、そのままな空気感。
 全編メロディアスながらベースのみゆえの非日常感、これまたトリップミュージック。
 こりゃ気持ちいいや。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“The Gleaners” (2016) Larry Grenadier

“The Gleaners” (2016) Larry Grenadier


Larry Grenadier (Double Bass)

Gleaners [Analog]
Grenadier, Larry
Ecm
2019-02-15


 アメリカンコンテンポラリージャズのベーシストLarry Grenadierのリーダー作、ECMレコードから。
 Joshua Redman、Brad Mehldau、Pat Methenyなど、いろんなビッグネームのコンボに参加していた人。
 ジャズな編成ではないベースソロ。
 “Pettiford”なんて曲があったり、ジャズスタンダードがあったりもしますが、それらはさておき、全体のイメージはジャズっぽくありません。
 クラシック風味もそこそこのノンジャンル・ベース・ミュージック。
 現代音楽的でもフリーっぽくもなく、とてもメロディアス、明解で明るい印象。
 淡い色合いを含めて、21世紀型のECMレコードっぽいといえばその通り。
 静かな空間に響く低音。
 漂っているようで決して崩れないビート、ときおりの疾走。
 低音ゆえ曖昧な輪郭で遠くから響いてくるようなメロディたち。
 優しくメロディアスな音の流れは、以前だとNew Age Musicとか呼ばれそうな感じ。
 もしピアノなどが入ればもっと馴染みやすくなるのかもしれません。
 が、それではありきたりになってしまうのでしょうか。
 ジャケットのポートレートの大樹が緑になる感じ。
 本作は特別なあくまでモノクロームな音。
 とてもつつましくてエレガント。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Emerald Tears” (1977) Dave Holland

“Emerald Tears” (1978) Dave Holland


Dave Holland (Double Bass)

Emerald Tears
Holland, Dave
Ecm Records
1996-03-26


 Dave Holland、1970年代後半のベースソロ作品。
 エレクトリックMilesの雄にして、この期のECMレコードハウスベーシスト。
 リーダー作としては“Conference of the Birds” (1972)以降、間が空いているようで、その後コンボで作を連ねる少し前。
 それらと同様、硬派でハードボイルドな音、但しベースソロ。
 すべてインプロビゼーションなのか、あらかじめ楽曲を準備していたのかはわかりません。
 激しく動き回る音。
 どの方向に動いていくのか予測不可能。
 例の超絶疾走はもとより、クダを巻いたり、スウィングしたり。
 ピアノもギターもトランペットも聞こえない苦み走った音は、甘さゼロ。
 そんな中に数曲挿まれるタイトル曲を含めたメロディアスで哀し気なバラードがとてもハードボイルド。
 酸いも甘いも嚙み分けた男の狂気と哀愁、ってな感じ。
 Emerald Tearsってタイトルや、洒落た雰囲気のジャケットは似合わないと思っていました。

 が、それを眺めながら聞いていると、境界の明確な二面性、明度は低いが暗くはない感じがピッタリな気がしてきました。

 ダークなベースの音一色。
 が、複雑に織り成される複雑な色合い、そんな作品。



 

posted by H.A.

【Disc Review】“Music From Two Basses” (1971) David Holland, Barre Phillips

“Music From Two Basses” (1971) David Holland, Barre Phillips


David Holland, Barre Phillips (Double Bass)

Music From Two Basses
ECM Records
2005-08-12



 ベーシスト二人のDuo、1970年代初頭、ECMレコードから。
 時はエレクトリックMiles、さらに1960年代以降の激烈なフリージャズ華やかなりし頃。
 それらの中心にいたのであろうお二人のベーシスト、予想通りの激しい演奏集。
 インプロビゼーションが数編、準備された楽曲があるのであろう演奏が数曲。
 地下で何かがうごめいているようなドロドロとしたムード。
 ありがちな沈痛~陰鬱路線ではなく、暗い感じでもないのですが、凄まじい緊張感の中の激しいバトル。
 いかにも1970年代初頭な激烈さ。
 怒涛のように続く上昇下降、マシンガンのような超高速ピチカートあり、ズルズルギュインギュインなアルコあり。
 甘さや軽さなどみじんもない、情け容赦ない重厚な肉弾戦。
 秘技、奥義を尽くして、どちらかが倒れるまで闘いは続く・・・ってな感じの演奏。
 ちょっと怖い。
 が、ベースだけなのでうるさくはありません。
 そして散々暴れたのちにときおり定まるビート、もの悲しいメロディ。
 とてもクール、とてもハードボイルド。
 苦み走った男の何とか、そんな演奏集。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Trickster Orchestra” (2021) Cymin Samawatie, Ketan Bhatti

“Trickster Orchestra” (2021) Cymin Samawatie, Ketan Bhatti

Cymin Samawatie (voice) Ketan Bhatti (drums)
Trickster Orchestra:
Mahan Mirarab (guitar, oud) Niko Meinhold (piano) Mohamad Fityan (nay, kawala) Sabrina Ma, Taiko Saito (marimba, vibraphone) Joss Turnbull (perc, electronics) Ralf Schwarz (bass) Susanne Fröhlich (recorders, paetzold recorder) Tilmann Dehnhard (flutes) Mona Matbou Riahi (clarinet) Wu Wei (sheng) Milian Vogel (bass clarinet, electronics) Florian Juncker (trombone) Naoko Kikuchi (koto) Bassem Alkhouri (kanun) Biliana Voutchkova (violin) Martin Stegner (viola) Anil Eraslan (cello) Rabih Lahoud, Sveta Kundish (voice)

Trickster Orchestra
Cymin Samawatie, Ketan Bhatti
ECM
2021-04-23


 中近東エスニックコンテンポラリージャズコンボCyminologyのボーカリストCymin Samawatie、インドルーツのドラマーKetan Bhattiの双頭リーダー作。
 オーケストラと銘打った大編成ですが、管弦楽団でもビッグバンドでもない、世界各地の楽器が入り混じるノンジャンル・無国籍楽団。
 Cyminologyでは、歌は中近東エスニック、ボーカルが引くとジャズな感じでしたが、本作は全く質感が異なります。
 ボーカル入りは数曲のみ、ジャズ度なしのクラシックベースな感じ、でもクラシックっぽくはない、エスニック感たっぷり、でも西欧色が強いような、不思議なバランス。
 淡く、静かで、穏やかで・・・ってな近年のECMレコードな感じでもありません。
 静かに妖しく始まり、徐々に強くなる音、次々と景色は変わっていきます。
 西欧系、バイオリン系の楽器が目立つものの、それらとマリンバ、笙、箏などが交錯する展開。
 メロディは中近東でもインドでもアジアでも、もちろんヨーロッパでもない、それらの色合いが現れては消えていく不思議系。
 時代感の希薄さ、ダークで緊張感の高い空気感、妖しくときおり激しくなる展開は、レトロなサスペンス映画のサントラっぽい感じがしないでもない・・・そんな色合い。
 混沌、プログレッシブロックな強いビート、敬虔で清廉なコーラスなども交えながら、目まぐるしく形を変えていく音の流れ。
 変幻自在、予測不可能、摩訶不思議な迷宮サウンド。
 前衛的で非日常的ですが、計算し尽くされたアンサンブルなのでしょう。
 気難し気でも、実験色が強烈なわけでもない、これまた摩訶不思議なバランス。
 ジャズでもロックでもクラシックでも伝統音楽でもない、中近東なのかインドなのかアジアなのかアフリカなのか、やはりヨーロッパなのか、また、いつの時代かもわからない、それらが混然一体となったフュージョンミュージック。
 終始緊張感に覆われた深刻な表情の物語が最後に行きつく先は、ハッピーエンドの大団円か、それとも・・・
 さて、何が見えるか、どう感じるかは聞く人次第。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Bayou” (2018) Thomas Strønen

“Bayou” (2018) Thomas Strønen

Thomas Strønen (Drums, Percussion)
Ayumi Tanaka (Piano) Marthe Lea (Clarinet, Vocals, Percussion)

Bayou
Thomas Strønen
ECM
2021-04-09


 ノルウェーのドラマーThomas Strønen、ピアノ、クラリネットとの変則トリオ。
 ピアノは日本人女性、クラリネットも女性。
 静かで自由な時間、迷宮系。
 美しいピアノと妖しいクラリネット、ときおり聞こえる女声の歌。
 それらに合わせるように鳴る静かな打音、擦過音。
 フリーなインプロビゼーションが中心でしょうか。
 ここまでの諸作では何曲かはあったビートの効いたジャズな演奏はありません。
 派手なインプロビゼーションの場面もありません。
 ゆったりとした流れ、たっぷりの余白。
 誰かの発した音に合わせるように形を変えていくバンド。
 美しい音とメロディアスなフレーズたち。
 が、長く一定の形を保つことなく、漂い、消えていく音。
 少し音量を変えると、あるいは聞く位置を変えるだけでも形が変わってしまいそうな繊細さ。
 そんな音の流れが最初から最後まで続きます。
 予測不可能、ジャズやクラシックなわかりやすさはなく、聞き慣れた音ではありません。
 終始緊張感に包まれ、明るくもありません。
 それでも心地よいのは、個々のフレーズがメロディアスだから、そしてどこか懐かしい空気が流れているからでしょうか。
 静かな迷宮。
 儚く繊細な時間。


 

posted by H.A.



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