吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

ECM records

【Disc Review】“Statements” (2003, 2004) Batagraf

“Statements” (2003, 2004) Batagraf
Jon Balke (Keyboards, Percussion, Vocals)
Frode Nymo (Alto Saxophone) Kenneth Ekornes, Harald Skullerud, Helge Andreas Norbakken, Ingar Zach (Percussion) Arve Henriksen (Trumpet) Sidsel Endresen, Miki N'Doye (Recitation) Solveig Slettahjell, Jocelyn Sete Camara Silva, Jennifer Mykja Balke (Voice)



 ノルウェーのピアニストJon BalkeのバンドBatagrafの何とも不思議なアルバム。
 “Clouds In My Head” (1975) Arild AndersenなどからECMに参画している大ベテラン。
 ヨーロピアンらしいクラシックの香りと美しい音、さらに強烈な疾走感がカッコいいピアニスト。
 近年では同じく北欧の若手アーティストのサポート、“The Door” (2007)、“Midwest” (2014) Mathias Eickなどでもよく見かけます。
 バンドでの表現が好きなようで、以下のようないろんなバンドに参加、あるいは自ら作っています。
  Masqualero、“Bande a Part” (1986)  etc.
  Oslo 13、“Nonsentration” (1990)  etc.
  Magnetic North Orchestra、“Further” (1993), “Kyanos” (2001)  etc.  
 それらは十分にジャズな音だったのですが、本作はジャズからはみ出した不思議なバンド。
 詞の朗読なども絡めつつ、ナイジェリア?の「バタ」なる楽器?音楽?を中心とした音なのだと思います。
 メンバーはノルウェーの人が中心のようなのですが、音は完全に無国籍、ノンジャンル。
 アフリカ的なパーカションとフワフワしたエレクトリックピアノ、電子音、声、そしてジャジーながら狂気を秘めたサックスが交錯する不思議な世界。
 ムードとしてはフューチャージャズな感じもあるし、アコースティックなパーカッションがプリミティブな民族音楽的でもあるし。
 ジャズとか何とかのジャンル云々はもとより、一体ここはどこなのか、ヨーロッパなのかアフリカなのか、今なのか過去なのか未来なのか、さっぱりわからない空間。
 さらに、声とか口笛とかが醸し出す、現実なのか非現実なのかすら曖昧なムード。
 でも、あくまで静かで穏やか。
 そんな背景の中に、唐突にコラージュされる乾いた女性のボイス、泳ぐような乾いたサックスの響きがとてもクール。
 ときおり現れる電子音、穏やかで淡い感じは環境音楽的な感じなのだと思いますが、無機質な感じではなくて、あくまでアコースティックな響きが中心。
 ちょっと聞きではなんだこりゃ?
 が、マニアックなようで、エスニックなようで、慣れてしまえばわかりやすくて心地いい音。
 意味不明でも難解でもない、全編通じてとてもカッコいい静かなグルーヴ。
 サックスの動きがジャズっぽいのも、とても心地いいバランス。
 ボイスには、同胞Nils Petter Molværの作品に参加するSidsel Endresenがクレジットされているし、音量を上げ、ハードさ、深刻さを加えると、彼の音にも近い場面が多いのは、ノルウェーの空気感ゆえなのでしょうか?
 全編を漂う哀感、さらにちょっとしたところにオシャレな感じもあり、全く違う音なのですが、Kip Hanrahan を想起します、ってなのは飛躍しすぎなのでしょうかね?
 そちらはニューヨーク&キューバですが、こちらは北欧&アフリカ。 
 さながら静かでエスニックな環境音楽、現実と非現実が交錯するトリップミュージック。
 残念なのは、あの素晴らしいアコースティックピアノが聞けないこと。
 が、さすがに何をやってもタダモノではないクリエイティブなオヤジ。
 とてもカッコいい音、名作だと思います。



 
 posted by H.A.

【Disc Review】“Up and Coming” (2016) John Abercrombie

“Up and Coming” (2016) John Abercrombie
John Abercrombie (guitar)
Marc Copland (piano) Drew Gress (bass) Joey Baron (drums)

Up and Coming
John Abercrombie
Ecm Records
2017-01-13


 John Abercrombie、オーソドックスな編成でのギターカルテット作品。
 “39 Steps” (2013)と同じメンバー、同じくオーソドックスな色合いの強いジャズ作品ではありますが、さらに幽玄な感じが増した感じでしょう。
 シャキッとしたジャズバンドに、どこか遠い所から聞こえてくるような、空間に漂い、気がつけば消え入りそうになるようなギター。
 1970年代からのグニョグニョウネウネした過激な演奏は“The Third Quartet”(Jun.2006)あたりが最後でしょうか?
 以降、フリーな演奏は多々あれど、枯れた味わいも含めて穏やかなムード。
 過激なMark Feldmanとの最後の共演作“Wait Till You See Her”(2008)も過激さが薄らぎ、淡くて穏やかな音。
 さらに近作はオーソドックスな雰囲気のジャズ中心、本作もそんな一作。
 ソリッドギター?の固めで細めの音、エフェクティングもほとんど使っていない感じでしょう。
 1970-80年代もジャズスタンダードを演奏することはありましたが、音作り、フレージング含めて殺気立った雰囲気がありましたが、この期はとても静かで穏やか。
 Marc Coplandと楽曲を分け合い、淡々としたジャズが続きます。
 他の人とちょっと違うのが、ギターが前面に出る場面の沈んだ空気感。
 奇をてらったところがあるわけではないのに、なんだか不思議です。
 ギターが引いてピアノトリオになると、急に空気が軽く明るくなるのも不思議なバランス。
 ピリピリしていたかつての殺気が別の何かに変わったものの、あの緊張感は残っている、ってな感じでしょうか。
 冒頭のルバートでのスローバラードを含めて、“39 Steps” (2013)に比べると、漂うような音の流れの場面が多く、現在のとても静かなJohn Abercrombieの音が映える演奏が続きます。
 終盤に納められたあの“Nardis”も、幽玄で枯れたムードの不思議な味わい。
 ここでのギターも沈んでいます。
 かつての音とは全く印象は異なりますが、やはり御歳おいくつになっても不思議感たっぷり、普通には収まらない御大の特別な音、でしょう。





(Mar, 1974) “Timeless”  
(Mar, 1975) “Gateway” 
(Mar, 1975) “Cloud Dance” Collin Walcott 
(Jun, 1975) “The Pilgrim and the Stars” Enrico Rava 
(Feb, 1976) “Untitled” “Pictures” Jack DeJohnette 
(May, 1976) “Sargasso Sea” with Ralph Towner 
(Aug, 1976) ”The Plot” Enrico Rava 
(Feb, 1977) “Grazing Dreams” Collin Walcott 
(May, 1977) “New Rags” Jack DeJohnette 
(July, 1977) “Gateway 2” 
(July, 1977) “Deer Wan”  
(Nov, 1977) “Characters”  
(Jun, 1978) “New Directions” Jack DeJohnette 
(Dec, 1978) “Arcade” 
(Jun, 1979) “New Directions in Europe” Jack DeJohnette 
(Nov, 1979) “John Abercrombie Quartet” 
(Nov, 1980) “M” 
(Dec, 1980) “Eventyr” Jan Garbarek 
(1981)    “Five Years Later” with Ralph Towner
     :
(1984)    “Night” 
(1985)    “Current Events” 
(1987)    “Getting There” 
(1988)    “John Abercrombie / Marc Johnson / Peter Erskine
(1989)    “Animato” 
     :
(1990)   “Music For Large & Small Ensembles” Kenny Wheeler" 
(Feb.1990) “The Widow In The Window” Kenny Wheeler
     :
(Jun.1992) “While We're Young” 
(Nov.1992) “November” 
(Apl.1993) “Farewell” 
(Jun.1993) “Afro Blue” The Lonnie Smith Trio 
(Jul.1993)  “Speak of the Devil” 
(Mar.1994) ”Purple Haze”、”Foxy Lady” The Lonnie Smith Trio
(Dec.1994) “Homecoming” Gateway 
(Dec.1995) “In The Moment” Gateway 
(1996)   “Tactics” 
(Sep.1998) “Open Land” 
(May.1998) “Voice in the Night” Charles Lloyd 
(Oct.1998) “The Hudson Project” John Abercrombie/ Peter Erskine/ Bob Mintzer/ John Patitucci ‎
(Dec.1999) “The Water is Wide”, “Hyperion With Higgins” Charles Lloyd 
(Dec.2000) “Cat 'N' Mouse” 
(2002)   “Lift Every Voice” Charles Lloyd 
(2003)   “Class Trip” 
(Mar.2006) “Structures” 
(Jun.2006) “The Third Quartet” 
(Sep.2007) “Brewster's Rooster” John Surman 
(2008)   “Wait Till You See Her” 
(2011)   “Within a Song” 
(2013)   “39 Steps
(2016)   “Up and Coming”  


 posted by H.A.

【Disc Review】“My Foolish Heart” (2016) Ralph Towner

“My Foolish Heart” (2016) Ralph Towner
Ralph Towner (guitar)

My Foolish Heart
Ralph Towner
Ecm Records
2017-02-03


 Ralph Towner、久々のソロギターアルバム。
 もはや説明無用。
 部屋の湿度が下がる音。
 この季節の必須アイテム。


 ってな感じで十分なのかもしれませんが・・・
 近年では”Chiaroscuro”(Oct.2008) with Paolo Fresu、”Travel Guide” (2013) with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryanと共演作が続いていて、ソロでは”Time Line” (Sep.2005)以来、十年振りでしょうか?
 時間は経ちましたが、それらと同じ質感の穏やかで柔らかいガットギターの音の流れ。
 “Solstice” (Dec.1974)、”Batik” (1978)あたりから聞いた第一印象は、キッつい音の人。
 1970年代ECM独特の音質、ハイテンションな空気感も手伝って、氷のような低い温度感、触ると切れてしましそうな人、ってな感じ。
 後にその前の”Diary” (Apl.1973) などを聞くと、元々はそんな音の人ではなくて、キッつい音は1970年代のECMマジックだったのね・・・と思い直した次第。
 先入観を捨てて聞くと、同時期の人気作”Sargasso Sea” (May.1976) with John Abercrombieなども穏やかに聞こえてくるのが不思議なものです。
 1980年代以降の諸作は柔らかい音の流れ。
 瑞々しさはそのままに、丸く穏やかになった音。
 特に近作は遠い所を眺めるような、あるいは、静かに動く走馬灯のような音の流れ。
 タイトル曲からイメージされるようにBill Evansがアイドルのようで、1970年代の作品から所縁の楽曲をコンスタントに取り上げています。
 本作もそんな上品で理知的、さらに穏やかで優しい音。
 この人のギターが流れると、部屋の湿度が下がって少し涼しくなるように感じます。
 内省的、耽美的なようで、その実、キリッとしていて湿っぽくなく、スッキリした音。
 極めて明瞭な音なのに、現実とはちょっと乖離しているような、どこか懐かしい遠い所から流れてきているような音。
 特に近年のソロギター作”Ana” (Mar.1996)、”Anthem”(Feb.2000)、”Time Line” (Sep.2005)その傾向が顕著でしょう。
 本作もそんな音、タイトル曲を除いて全てオリジナル曲、淡くて懐かし気なメロディ。
 全編を支配する穏やかなセンチメンタリズム。
 漂うような音の流れと、アップテンポが交錯しつつ、前者が相対的に多い分、近作の中では本作が一番淡くて穏やかな色合いかもしれません。
 ま、どれも金太郎飴のような作品群なのですが。
 ジャケットのポートレートは明るい印象のカラー写真。
 闇と光が交錯するようなミッドナイトブルーと、明るく透明なエメラルドグリーンが対象的な水面。
 そんな音でしょう。
 上部が1970年代の諸作、下部が1980年代以降~現代、ってなのは考えすぎでしょうね、きっと。





(1972)     ”Trios / Solos” Ralph Towner / Glen Moore 
(Apl.1973)    ”Diary” 
(Jul.1974)    ”Matchbook” with Gary Burton 
(Dec.1974)   ”Solstice” 
(May.1976)   ”Sargasso Sea” with John Abercrombie 
(Dec.1976)   ”Dis” Jan Garbarek 
(Feb.1977)   ”Solstice/Sound and Shadows” 
(Jul.1977)    “Deer Wan” Kenny Wheeler 
(Nov.1977)    ”Sol Do Meio Dia” Egberto Gismonti 
(Jan.1978)    ”Batik” 
(Jul.1979)    “Old Friends, New Friends” 
(Oct.1979)    ”Solo Concert” 
(1980)     “Départ”  Azimuth 
(Mar.1981)    ”Five Years Later” with John Abercrombie 
(Dec.1982)    ”Blue Sun” 
(May.1985)    ”Slide Show” with Gary Burton 
(Jan-Dec.1988) ”City of Eyes” 
(1991,1992)   ”Open Letter” 
(1988,1991,1992) “If You Look Far Enough”  Arild Andersen
(May.1993)   ”Oracle” with Gary Peacock 
(May.1995)   ”Lost and Found” 
(Oct.Nov.1995) "Fabula" Maria João 
(Dec.1995)   ”A Closer View” with Gary Peacock 
(Mar.1996)   ”Ana” 
(1997)     “If Summer Had Its Ghosts” with Bill Bruford & Eddie Gomez
(Feb.2000)   ”Anthem” 
(Sep.2005)   ”Time Line” 
(2008)     “From a Dream” with Slava Grigoryan and Wolfgang Muthspiel 
(Oct.2008)   ”Chiaroscuro” with Paolo Fresu 
(2013)     ”Travel Guide” with Wolfgang Muthspiel, Slava Grigoryan
(2016)     “My Foolish Heart” 


posted by H.A.

【Disc Review】“Dawn Dance” (1981) Steve Eliovson

“Dawn Dance” (1981) Steve Eliovson
Steve Eliovson (Acoustic Guitar)
Collin Walcott (Percussion)

Dawn Dance
Universal Music International Ltda.
2008-11-18


 南アフリカ?のギタリスト、唯一のECM作品。
 このアーティストについてほとんど情報をもっておらず、このアルバムもほとんど見かけないのですが、名作です。
 世評がどうかは知りませんが、幻のアーティストの幻の名作、ってな感じかもしれません。
 アコースティックギターをオーバーダビングし、パーカッションがサポートする構成。
 ベースもドラムもいませんが、ほどよい音の厚みとビート感。
 どことなく爽やかで、バッキングだけを聞いているとフォーキーでPat Methenyっぽくもあるし、シングルトーンでのソロはスパニッシュ風だったり、さまざまな表情が入り混じります。
 ジャンルにはこだわっていないタイプなのだと思いますが、誰の色合いでもない、穏やかな流れと強烈な疾走感が交錯する素晴らしいギター。
 アコースティックギター一本を中心とした音作りはRalph Towner的ではあるのですが、この期の彼の諸作よりも柔らかな感じ、あるいはBill ConorsのECM諸作よりも明るく丸い感じでしょうか。
 基本的には明るく爽やかな空気感。
 エコーたっぷりな瑞々しく美しい音を含めて、いかにもECMっぽい空気感も漂っています。
 Collin Walcottのサポートは穏やかな色付け程度。
 強いエスニックテイストやアバンギャルドな感じはありませんが、アコースティックギター一色の音の流れの中で、いい感じのアクセントになっています。
 全曲オリジナル曲、どの曲も淡い色の穏やかなメロディ、少々の寂寥感。
 静かなだけでなく、ヒタヒタと迫ってくる、あるいはジワジワと盛り上がってくる流れの構成が印象的で、ほどよい興奮と陶酔感もあります。 
 抜群の演奏力、独特の空気感を含めて、Eicherさんも期待していたんじゃないかな?
 が、一作のみ。
 何が起こったのか、起こらなかったのかはわかりません。
 そんな謎な感じはしない、わかりやすい音。
 こちらは少し謎めいた感じの素晴らしいジャケットのポートレートを眺めつつ、穏やかで爽やかなギターの音を楽しむのが吉。




posted by H.A.

【Disc Review】“Swimming with a Hole in My Body” (1979) Bill Connors

“Swimming with a Hole in My Body” (1979) Bill Connors
Bill Connors (guitar)

水と感傷
ビル・コナーズ
ユニバーサル ミュージック
2016-10-26


 Bill Connors、“Theme to the Gaurdian” (1974)に続くアコースティックギターソロ作品。
 その間にコンボでの名作 “Of Mist and Melting” (1977)があります。
 基本的には先のソロ作品“Theme to the Gaurdian” (1974)と同じ、淡くて穏やかな空気感。
 ヒタヒタと迫ってくるようなビート感は三作共通ですが、前作“Of Mist and Melting” (1977)のように激しくも冷たくもありません。
 少し悲し気、寂し気な楽曲と、フォーキーな香りとスパニッシュな香りが交錯するメロディアスなシングルトーン。
 ハードフュージョンを演奏していたとはとても思えないような静謐さ。
 “Theme to the Gaurdian” (1974)と比べると、いくぶんテンポアップして、バッキングも厚めの演奏が増えているような感もありますが、1970年代Ralph Towner諸作のようにグサグサくる感じではなく、あくまで線が細めで繊細な音。
 少し温度感低めの音作り、清涼感の塊のようなアコースティックギターの音と柔らかなメロディは“Theme to the Gaurdian”と同様。
 何となく涼し気でこれからの季節にピッタリの音。
 おっと、タイトルもジャケットもそんな感じでしたね。
 趣のあるタイトルのように感傷的な音ですが、ジャケットのポートレートのようにどんよりした感じではなく、とても静かながら、爽やかで湿度感は低め。
 平和で穏やか。
 そんな音です。




posted by H.A.

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