吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

ECM records

【Disc Review】“Titok” (2015) Ferenc Snetberger

“Titok” (2015) Ferenc Snetberger
Ferenc Snetberger (guitar) 
Anders Jormin (bass) Joey Baron (drums)

TITOK
SNETBERGER/JORMIN/BA
ECM
2017-06-02


 ハンガリーのギタリストFerenc SnetbergerのECMでの第二作、トリオ作品。
 ECMでの前作はソロギターでの“In Concert” (2013)、その前には同じくドイツのレーベルEnjaから本作と同じくトリオでの“NOMAD” (2005)などがあります。
 “NOMAD”ではこちらもECMと縁の深いArild Andersenがベースを弾いていましたが、本作ではベテラン大御所ベーシスト、静かなグルーヴの代表選手Anders Jormin
 予想に違わない静謐な音。
 数曲がフリーインプロビゼーションとも思しき抽象的な演奏、他はほのかなエキゾチシズムが漂う寂寥感の強いメロディ。
 明確な楽曲でバンド全体が疾走する場面も多かった“NOMAD”に対して、淡い色合いの空気感、静かに音が進む、いかにもECMな音の流れ。
 冒頭から二曲はフリーインプロビゼーション的な演奏。
 予想外の方向にあちこちに飛び回るギター。
 ベースの動きが方向性を示しているようで、その通りには流れていかない音、あるいはギターの動きにバンドが同調すると見せて、突然終わる音楽・・・
 変幻自在、予測不可能。
 が、三曲目以降は哀愁のメロディの連続、静かな音と相まって強い寂寥感を帯びた音の流れ。
 この種の音楽が最も得意であろうAnders Jorminが本領発揮。
 フリーテンポであれ、スローテンポであれ、抽象的な音の流れであれ、何であれ、静かに穏やかに続くグルーヴ。
 ソロではタメと疾走、高音と重低音が交錯する、沈むような浮遊するような不思議な感覚のメロディと躍動感のあるビート。
 シンバルの残響音だけが残る静謐な空間に重低音だけが響く場面がしばしば。
 音数が決して多いタイプではないだけに、かえって凄みを感じます。
 バッキングにしろソロにしろ、空間をしっかり開けてくるから、後続の高速フレーズがカッコいいし、スローテンポでもグルーヴが出るんでしょうかね?
 決して派手ではありませんが、全編凄い演奏です。
 リーダーのギターは勢いで弾き切るのではなく、一音一音模索するような丁寧な演奏。
 ジプシー系の音楽がベースなのだろうと思いますが、悲しげで儚げな音使い。
 ECMのお約束、全編ルバートでのスローバラードっぽい演奏も中盤に収められています。
 “NOMAD”ではド派手なArild Andersenのベースが全体をけん引し、ギターがそのうえで自在に動く印象でしたが、本作は三者が一体になって、静かでなんとも言えない深い含蓄のある音場を作っている感じ。
 わかりやすいのはそちらかもしれませんが、幻想的な色合いが強く、深みを感じるのははこちら。
 どちらがいいかはお好み次第。
 私はこちらに一票。
 どちらも名作だと思います。




posted by H.A.

【Disc Review】“Silent Light” (2016) Dominic Miller

“Silent Light” (2016) Dominic Miller
Dominic Miller (guitar, electric bass)
Miles Bould (percussion, drums)

Silent Light
Dominic Miller
Ecm Records
2017-04-07


 アルゼンチン出身のギタリストDominic Millerのソロ作品。
 あのStingバンドの人のとても静かなアコースティックギター。
 全編を通じて、とても繊細な音。
 大大御所Ralph Townerと比べるのも無粋なのですが、彼のパキーンとくる音と比べて、サラサラと流れていくような音の動き。
 あるいは、要所でタメが入るRalph Townerに対して、あくまでスムースに紡がれるアルペジオ。
 この癖のないスムースさが、永らくロック~ポップス界のスーパースターのサポートを続けているがゆえの技、音の流れなのでしょうか?
 アルゼンチンの人のようですが、少なくとも本作ではそれらしさは感じません。
 さておき、本作、Stingナンバー“Fields Of Gold”を除いてすべてオリジナル曲。
 スッキリしているようで不思議系。
 クラシック系の人とは異なるビート感と、フォーキーで哀愁が漂うコードの遷移とメロディ。
 ミディアム~アップテンポな演奏が多いのですが、静かなアルペジオ中心。
 メロディ先行の普通のバランスとは少々感じが違って、アルペジオの中にメロディが置かれているといった感じの不思議なバランス。
 あくまで静かにサラサラと音が流れていきます。
 何曲かで打楽器のサポートが入りますが、繊細な音の流れの中での静かで上品なアクセント。
 他の作品のようにロック、ポップス、フュージョン仕立てではなく、この演奏のスタイルで“Shape of My Heart”とか”Fragile”とかの美メロが演奏されるとカッコいいんでしょうけど、またそれはどこかで。
 Ralph Townerの近作は走馬燈のような音だと思っていましたが、本作も同様。
 静謐さ、穏やかさは同様ですが、少し質感は異なります、
 少し回転が速く、より淡々としていて、より線が細い感じ。
 ゆらめく光ではなく、静かに定常に輝く青白い光。
 強い感情移入が少なく感じられるクールな質感が、現代的といわれればその通り、なのでしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“Cross My Palm With Silver” (2016) Avishai Cohen

“Cross My Palm With Silver” (2016) Avishai Cohen
Avishai Cohen (trumpet)
Yonathan Avishai (piano) Barak Mori (double bass) Nasheet Waits (drums)



 イスラエルのスーパートランペッターAvishai Cohen、“Into The Silence” (2015)に続くECM第二弾。
 オーソドックスなワンホーンカルテットでのコンテンポラリージャズ。
 メンバーは前作からサックスが抜け、ベーシストが交代。
 前作は近年のECMっぽい抑制されたコンテンポラリージャズでしたが、本作も同じ。
 静かで淡々とした語り口。
 10分を超える長尺な演奏を冒頭と中間に配して、間を短い演奏で繋ぐ構成。
 5曲、全体で40分に満たない収録時間は、今日的には短く、かつてのLP時代のA面B面に分けてそれぞれを完結させていく構成に見えなくもありません。
 冒頭は10分を超える"Will I Die, Miss? Will I Die?"なんて意味深なタイトル。
 確かにそんな感じの静かな緊迫感の演奏。
 ピアノを中心とした静かで雅な感じのイントロに導かれ、徐々にテンションを上げ、次々と景色が変わっていくような音の流れ。
 スパニッシュなようなジャパニーズなような、もちろんイスラエルなのでしょうが、漂うほのかなエキゾチシズム。
 インプロビゼーションのスペースもしっかりとられて、徐々に高揚していくトランペット。
 が、激情には至らず、トランペットもピアノもバンドも、あくまでクールでスムースな音。
 続くは全編ルバートでのスローバラード。
 “The Trumpet Player” (2001)でJohn Coltraneの”Dear Lord”をカバーしていましたがありましたが、そのビートをフリーにして、妖し気にしたような演奏。
 漂うように、時に激情を発しながら流れていく淡い時間。
 ECMのお約束ですが、この人の色合いはハードボイルドです。
 さらに続く曲もこれまたフリービート、ピアノレスでのスローバラード。
 漂うような妖しげな演奏が続きます。
 後半(?)に移って、もう一つのピークであろう長尺曲”Shoot Me in the Leg”でようやくバンドのテンションが上がります。
 前奏のピアノの漂うような音から、ビートが入ると、トランペットが全開。
 時折激しい音を交えながら、あるいはドラムに激しく煽られながらテンションを上げていきます。
 が、さまざまな音の流れの変化を経ながらも、スムースな音の流れは変わりません。
 締めの”50 Years and Counting”も同様の色合い。
 テンションの高い演奏で緊張感も強いのですが、あくまでスムース。
 サラリとしていてスルスルと流れていく音。
 ECM的な音作りながら少し戸惑い気味にも聞こえた前作“Into The Silence” (2015)に比べると、スッキリとまとまった印象でしょうか。
 全編通じてスムースで、トゲや毒は直接的には見えてこないのですが、どこか浮世離れしたムード。
 ついつい“The Trumpet Player” (2001)の激しいバンドサウンドに乗ったスーパージャズトランペッターAvishai Cohenに期待してしまうのですが、スムースにまとめていくのがこのひとの近作のスタイル。
 作品の色合いに幅のある人だと思うのですが、ここまでの諸作のさまざまな色合いと、近年のECMの色合いがほどよい感じでフュージョンしたような感じ。
 Avishai CohenもManfred Eicherさんもいい感じのバランスを見つけたのかもしれません。
 ・・・にしても、アルバムにしても楽曲にしても、タイトルが意味深だなあ・・・




posted by H.A.


【Disc Review】“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet

“December Avenue” (2016) Tomasz Stanko New York Quartet
Tomasz Stanko (Trumpet) 
David Virelles (piano) Reuben Rogers (bass) Gerald Cleaver (drums)

December Avenue
Tomasz Stanko
Ecm Records
2017-04-14


 ポーランドジャズの親分?Tomasz Stanko、New York Quartet名義での第二作。
 前作“Wislawa”(2012)はオーソドックスな現代的ジャズピアノトリオとちょっとひねくれたトランペットの共演・・・そのままの音でしたが、本作はバラードが中心、少し面持ちが異なります。
 アップテンポな曲もありますが、前作のバラード部分の比重が大きくなりました。
 漂うようなフリーなビートに寂寥感の強いメロディ。
 枯れた味わいが強くなってきた、渋いトランペット。
 冒頭から今にも止まりそうなスローなビートを背景にして、トランペットがフワフワと漂う展開。
 何曲か収められたルバートでのバラードは、ECM、あるいはこの人の真骨頂ですが、かつてのような激情を爆発させて叫ぶ場面はほとんど無くなりました。
 代わりに、前作ではしおらしかった、キューバ出身、いまやECMアーティストのピアニストDavid Virellesが暴れています。
 インプロビゼーションのスペースもしっかりもらって、さらに免罪符がもらえたのか、一気に爆発して激烈フリーへ、なんて場面もいくらか。
 美しい音、オーソドックスなサウンドの中で不思議な音の流れは、さすがECMのピアニスト、ただモノではない感じが漂っています。
 数曲のアップテンポでは、元気溌溂なピアノトリオを背景にした淡々とした印象のトランペット。
 かつての”Balladyna”(1975)のような、血汗が飛び散りそうなほど激烈な作品を作ることはもう無いのでしょうし、”Suspended Night”(2003)前後の諸作のように、バラード中心でも緊張感の高い演奏もないのかもしれません。
 穏やかにリラックスした風のTomasz Stankoサウンド。
 かつてと比べると著しくマイルドになったものの、全編を通じたハードボイルドなムードは、あの時代の東欧でフリージャズをやっていた人ならではの凄みなのでしょう。
 いずれにしてもECMとしては少々異色、渋くてまずまずオーソドックスな現代ジャズな作品。
 毒気はほんのわずか、ほんの気持ちだけしびれるぐらい。
 妖しさもほんの少し。
 かつての戦士の、穏やかで落ち着いた一作。




(1970) Music For K

(1972) “Jazzmessage from Poland”
(1973) “Purple Sun”
(1974) “Fish Face”
(1975) “TWET”
(1975) “Tomasz Stańko & Adam Makowicz Unit”
(1975) “Balladyna
(1976) “Unit with Adam Makowicz”
(1976) “Satu” Edward Vesala

(1978) “Live at Remont with Edward Vesala Quartet”
(1979) “Almost Green”
(1980) “Music from Taj Mahal and Karla Caves”
(1983) “Stańko”
(1984) “Music 81”
(1985) “A i J”
(1985) “C.O.C.X.”
(1986) “Korozje” with Andrzej Kurylewicz
(1986) “Lady Go…”
(1988) “Witkacy Peyotl / Freelectronic”
(1988) “The Montreux Performance aka Switzerland”
(1989) “Chameleon”
(1989) “Tomasz Stańko Polish Jazz vol. 8”
(1991) “Tales for a Girl, 12, and a Shaky Chica”
(1992) “Bluish”
(1993) Bosonossa and Other Ballads
(1994) “Balladyna”
(1994) “A Farewell to Maria”
(1996) “Roberto Zucco”
(1995) Matka Joanna
(1996) Leosia
(1997) Litania:Music of Krzysztof Komeda
(1999) From theGreen Hill
(2001) “Reich”
(2001) “Egzekutor”
(2002) Soul of Things
(2004) Suspended Night
(2005) “Wolność w sierpniu”
(2006) Lontano
(2009) Dark Eyes
(2013) Wisława
(2016) December Avenue


posted by H.A.


【Disc Review】“Alba” (2015) Markus Stockhausen, Florian Weber

“Alba” (2015) Markus Stockhausen,  Florian Weber
Markus Stockhausen (trumpet, flugelhorn) Florian Weber (piano)

Alba
Markus Stockhausen
Ecm Records
2016-05-20


 ドイツのトランぺッターMarkus Stockhausen、同じくドイツのピアニストFlorian WeberとのDuo作品。
 もともとクラシックの人、ジャズ系を演奏する際は、エレクトロニクスを交えた近未来サウンド、トランペットはMiles Davisなクール系といったイメージでしたが、本作はアコースティックオンリーでの、静謐系コンテンポラリージャズ。
 それも静謐度高めのメロディアスな音の流れ。
 楽曲は概ね二人で分け合っていますが、いずれも穏やかで淡い色合いのしっとりしたメロディ揃い。
 現代音楽~フリージャズな作品は聞いていないのですが、“Karta” (1999)や“Electric Treasures” (2008)あたりのフューチャージャズ~激烈系のイメージが強くて、ここまで静かに淡々とメロディアスに演奏されてしまうと、面食らってしまうというか、何というか・・・
 クラシックの色も強い丁寧な音使いのピアノと、同様に丁寧に音を紡いでいくクールなトランペット。
 二人とも派手な音使いはありませんが、キリっとした、かつ落ち着いた演奏。
 リズム隊なしでビートの制約がないだけに、二人で自由に漂うような演奏が続きます。
 自由ですがフリージャズ色は全くなし。
 あくまでメロディアスで少々センチメンタル、時に牧歌的。
 もちろんインプロビゼーションを含めた演奏力は折り紙付き。
 このレーベルにありがちな夜な空気感、あるいは、暗さや深刻さもなく、毒気もありません。
 さらに、ベトつくような甘いメロディもなく、あくまで淡い色合い、穏やかで爽やか。
 昼でもなく、朝な音。
 一曲目のように全編ルバートのスローバラードばかりだったりすると、気持ちよくて二度寝してしまいそうですが、ほどよくキリっとしているし、長い演奏もないのが朝にはいい感じ。
 澄んだ空気が流れていくような、淡々とした音の流れ。
 平日の朝には穏やか過ぎるのかもしれませんが、休日の朝のBGMにすると、上品で上質な一日が始まるかも。たぶん。

※唯一?夜な曲。

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