“Subaqueous Silence” (2019) Ayumi Tanaka Trio
Ayumi Tanaka (piano)
Christian Meaas Svendsen (double bass) Per Oddvar Johansen (drums)
日本人女性ピアニストAyumi Tanaka、ECMレコードからの第一作。
“Lucus” (2017), “Bayou” (2018) Thomas StrønenといったECMのアルバムに参加していた人。
リーダー作はホームグラウンドなのであろうノルウェーの人たちとのトリオ。
フリー風味たっぷり、静かで繊細なコンテンポラリージャズ・・・というより、音による情景描写。
静寂と寂寥の時間。
“廃墟”から始まり、”黒い雨”、”風”などを経て、”水の中の静寂”で締める展開。
確かにそんな音。
終始ゆったりとしたテンポ。
絞り込まれた音とたっぷりの空白。
流れているようで動かない、留まっているようでゆっくりとグラデーションを描きながら変わっていく音。
ひんやりした温度感、高いのか低いのか判断がつかない湿度感。
強いというよりも、ことさら強調されることなく自然に全体を包み込むような浮遊感。
それらを先導する繊細な質感のピアノ。
曖昧で抽象的な音の流れの中、ときおり整ったメロディ、定常なビートが表出します。
が、その時間は短く、再び境界が曖昧な世界へ・・・
終始沈んだムードの中、抽象的な音の流れが続きます。
が、なぜか心地よい時間。
あくまで静かで穏やか、強い音や沈痛で深刻な場面がないからでしょうか。
気持ちが沈静する不思議な時間。
これまたどこか遠いところ、非日常へと誘うトリップミュージック。
静かな夜の、あるいは忙しかった日の終わりのナイトキャップにどうぞ。