吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

Japanese

【Disc Review】“Subaqueous Silence” (2019) Ayumi Tanaka Trio

“Subaqueous Silence” (2019) Ayumi Tanaka Trio

Ayumi Tanaka (piano)
Christian Meaas Svendsen (double bass) Per Oddvar Johansen (drums)


Subaqueous Silence
Ayumi Tanaka Trio
ECM
2021-10-29


 日本人女性ピアニストAyumi Tanaka、ECMレコードからの第一作。
 “Lucus” (2017), “Bayou” (2018) Thomas StrønenといったECMのアルバムに参加していた人。
 リーダー作はホームグラウンドなのであろうノルウェーの人たちとのトリオ。
 フリー風味たっぷり、静かで繊細なコンテンポラリージャズ・・・というより、音による情景描写。
 静寂と寂寥の時間。
 “廃墟”から始まり、”黒い雨”、”風”などを経て、”水の中の静寂”で締める展開。
 確かにそんな音。
 終始ゆったりとしたテンポ。
 絞り込まれた音とたっぷりの空白。
 流れているようで動かない、留まっているようでゆっくりとグラデーションを描きながら変わっていく音。
 ひんやりした温度感、高いのか低いのか判断がつかない湿度感。
 強いというよりも、ことさら強調されることなく自然に全体を包み込むような浮遊感。
 それらを先導する繊細な質感のピアノ。
 曖昧で抽象的な音の流れの中、ときおり整ったメロディ、定常なビートが表出します。
 が、その時間は短く、再び境界が曖昧な世界へ・・・
 終始沈んだムードの中、抽象的な音の流れが続きます。
 が、なぜか心地よい時間。
 あくまで静かで穏やか、強い音や沈痛で深刻な場面がないからでしょうか。

 気持ちが沈静する不思議な時間。
 これまたどこか遠いところ、非日常へと誘うトリップミュージック。
 静かな夜の、あるいは忙しかった日の終わりのナイトキャップにどうぞ。




posted by H.A.



【Disc Review】“Black Orpheus” (2012) Masabumi Kikuchi

“Black Orpheus” (2012) Masabumi Kikuchi

Masabumi Kikuchi (piano)

Black Orpheus
Masabumi Kikuchi
Ecm Records
2016-05-20

 菊地雅章氏、2012年のソロピアノ、東京でのライブ録音、ECMレコードから。
 おそらく遺作。
 とても静かで穏やか、繊細な音。
 幽玄の方が語感が合うのかもしれません、
 超スローテンポ、淡い色合い、漂うような音の動き。
 定まりそうで定まらないビート。
 メロディの核が見えそうで見えない、見えそうになると崩れていく、そんな流れの繰り返し。
 淡く緩やかな音の流れは、中盤に収められた“Black Orpheus”のテーマに向けて収斂していき、その後また崩れていく、そんな感じにも聞こえるステージ構成。
 予定していた展開なのかもしれませんし、偶然そうなったのかもしれません。
 いずれにしても、とても繊細な綾がゆったりと紡がれていくような時間。
 ソロゆえか“Sunrize” (2009)よりもさらに繊細。
 外国とは一線を画する日本的なモノを感じます。
 その静謐な緊張感の中に没頭するもよし、サラサラと流れてゆく心地よい音を聞き流すもよし。
 本邦のスタイリストが奏でる、スタイリッシュな静けさ。

※別のアルバムから。


posted by H.A.



【Disc Review】“Sunrize” (2009) Masabumi Kikuchi

“Sunrize” (2009) Masabumi Kikuchi

Masabumi Kikuchi (piano)
Thomas Morgan (bass) Paul Motian (drums)



 菊地雅章氏、2009年のトリオ作品、ECMレコードから。
 大御所Paul Motian、近年の ECMのファーストコールなベーシストとのトリオ。
 静かで穏やか、とても繊細な音。
 甘いメロディを奏でるわけでも、フリーに飛び交うわけでも、疾走するわけでもない、ゆったりとしたテンポで淡く断片的なメロディを繰り出すピアノ。
 それに寄り添うように静かにビート繰り出すドラム、ベース。
 不思議で先の読めない音の流れの中にときおり表出する、美しいメロディの断片。
 メロディが見えてきそうで見えない、ビートが定まりそうで定まらない、抽象的なようでなぜか美しい音の流れ。
 小さく聞こえる苦悶するようなうなり声、ときおりのフリーで激しい音。
 が、なぜか優しい音。
 全部合わせてとても繊細。
 21世紀前後からECMレコードの音楽は淡く優しくなったように感じますが、それとも違うように思います。
 類似するピアノトリオがすぐには思いつかない、希少な質感。
 日本的な旋律や音階があるわけではありません。
 が、この繊細な感じが日本的な色合いなんだろうなあ、と思う演奏集。

※別のアルバムから。


posted by H.A.



【Disc Review】“Brazilian Rhyme” (1999) Satoru Shionoya

“Brazilian Rhyme” (1999) Satoru Shionoya

Satoru Shionoya (Piano)
Jonathan Maron (Bass) Satoshi Tomiie (Keyboards, Drum Programming)
Dan Levine (Trombone) Ken Fradley (Trumpet) Paul Shapiro (Tenor Sax)
Harumi Tsuyuzaki (Vocals) Danny Madden, Stephanie James (Backing Vocals)

BRAZILIAN RHYME
塩谷哲
ファンハウス
1999-07-07


 ジャズピアニスト塩谷哲氏の”Brazilian Rhyme”。
 もちろんEarth, Wind & Fireのアレ、”パラッパッパ・パッパッパ”。
 これはレアなのでしょうか?人気作なのでしょうか?
 さておき、ミニアルバムのCDではいろんなアレンジ、ミックスの”パラッパッパ・パッパッパ”5連発。
 これはたまりません。
 さらに、間々に挿まれる、ジャズな疾走ピアノがこれまたカッコいい。
 これはホントにたまりません。




posted by H.A.



【Disc Review】“Libertango in Tokyo” (2011) Naoko Terai, Richard Galliano

“Libertango in Tokyo” (2011) Naoko Terai, Richard Galliano
Naoko Terai (violin) Richard Galliano (accordion, bandneon) 
Stephane Logerot (bass) Orchestra Camerata Ducale

リベルタンゴ・イン・トーキョー
寺井尚子
EMIミュージックジャパン
2011-12-21


 寺井尚子、Richard GallianoのPiazzollaトリビュート、Tokyo Jazzでのライブ録音。
 ベースを加えたトリオを中心としてストリングスがサポートする形。
 企画だけ見ると、あるいは“Libertango”なんてタイトルを見ると、ちょっと引いてしまう感もあるのですが、これがエキサイティングでカッコいい演奏。
 冒頭の“Libertango”から激しい演奏。
 この曲、私的には食傷気味で無意識に避けてしまうのですが、このバージョンはカッコいい。
 フロントのお二人のスムース&強烈な疾走感、ジェットコースターのような演奏。
 基本的には打楽器、ピアノがいないトリオの演奏に、ストリングスが彩りを加えるぐらいのバランスですが、強烈です。
 激情系のバイオリンがフロントに立ち、背後で強烈なグルーヴを作り、時に突っ走るRichard Galliano。
 激しい展開、ブチ切れ気味の流れにしばしばなりつつも、あくまでスムース。
 気がついていませんでしたが、お二人、似たタイプなのかもしれません。
 トゲや毒が少ないのも共通点でしょうか。 
 ビート感を含めて相性バッチリでしょう。
 トリオのみ強烈な疾走感、エキサイティングな場面もしばしば。
 トリオだけで全部やってしまってもよかったんじゃない、と思ったり、思わなかったり。
 Piazzolla三曲に他はRichard Gallianoのオリジナル中心。
 タンゴ風のRichard Gallianoのオリジナル曲になると、ストリングスも全開。
 哀感、緊張感、その他諸々Piazzolla風ではあるものの、いかにもフレンチっぽい、明るくてオシャレな感じもちらほら。
 またジャズ的なインプロビゼーションのスペースがたっぷり。
 二人ともキッチリとした起承転結に強烈な疾走感のソロ、さらに終盤はブチ切れ気味の激しさと興奮。
 もちろん重厚なイメージのPiazzollaバンドよりも軽快です。
 それら、ジャズでもタンゴでもない空気感あたりで好みがわかれるのかもしれませんが、バランスのとれた素晴らしい演奏だと思います。
 締めはタンゴの定番”La Cumparsita”に、ストリングスが映える名曲”Oblivion”。
 完成度の高い演奏に加えて、エンターテイメントとしてもキッチリまとまっています。
 お二人とも人気があり過ぎて、あるいはポップな演奏が出来てしまうだけに、マニアな人々からは距離を置かれる感じもあるのですが、素晴らしいアーティスト、演奏だと思います。
 ジャズからタンゴへ入っていくにはちょうどいい入口なのかもしれません。
 数えきれないぐらいにあるのであろうPiazzollaトリビュート作品、私が知っているのはごく一部だけですが、このアルバム、お気に入りの最右翼、かな?




posted by H.A.

【Disc Review】“Sailing Wonder” (1977) Yoshiaki Masuo ‎

“Sailing Wonder” (1977) Yoshiaki Masuo ‎
Yoshiaki Masuo (guitars, synth, percussion)
Eric Gale (Electric Guitar) Dave Grusin, Mike Nock (Synth) Rechard Tee (piano, organ, clavinet) Gordon Edwards, T. M. Stevens (Electric Bass) Steve Gadd, Al Mack, Howard King (Drums) Bashiri (congas) Warren Smith (percussion) Shirley Masuom, Judy Anton (chorus)

セイリング・ワンダー
増尾好秋
キングレコード



 夏の終わりに似合う音シリーズ。
 あの時代のフュージョン作品で最も好きな作品の一つ。
 大好きなStuff中心のメンバーに、メローな曲、あくまでナチュラルな音作り・・・
 さらに航海モノ、南の島モノが大好きな立場としては、完璧な音。
 トロピカルフュージョンてな言葉がありましたかね?
 その語感よりは硬派な音。
 40年近くも前、あの時代の音。
 懐かしさはありますが、2016年の耳で聞いても古さは感じません。
 冒頭のタイトル曲。
 ゆったりとしたビートに、さりげない哀愁が漂うメロディ。
 ブンブンうなるヤクザなベースにタイトなドラム。
 いかにもRichard Teeなグルーヴィーなピアノ。
 さらに増尾さんとEric Galeのツボを押さえた切ないギターの絡み合い・・・
 インタールードでのEric Galeのこれしかないようなフレーズには何度聞いてもゾクッときます。
 おまけに波の音のSE・・・
 いやはやなんともちょっとやり過ぎでは・・・
 そしてエンディングに向けた再度のギターソロ、バンドのグルーヴのカッコいいこと。
 シンプルながらこの上もなくドラマチック。
 いつまでも続けばいいに・・・と思う時間。
 最後のさりげないコーラスまで完璧なアレンジ。
 さらに、続く波の音の中からトロピカルで素敵な二曲目が立ち上がり、コーラスに繋がる流れはまさにパラダイス。
 その可愛らしい曲の背後でこれまたヤクザにブンブンうなるベースがカッコいい。
 その後もエキサイティングなラテンジャズ、爽やかで穏やかなバラード、さらにはゴリゴリ、キメキメのハードフュージョンなどなど。
 ゆるゆるから超ハイテンションまで、海~南の島なムードがてんこ盛り。
 それにしてもタイトル曲の波の音のSEにはしびれるなあ・・・
 えっ?古い?ダサい?
 最高でしょう。
 夏のドライブにはこれがなくちゃね。
 えっ?行動パターンが古い?




posted by H.A.

【Disc Review】“Flower Clouds” (2013) Naoko Sakata Trio

“Flower Clouds” (2013)
Naoko Sakata (piano) Trio
 
FLOWER CLOUDS
ナオコ サカタ トリオ
澤野工房


 最近気になっているピアノニスト。
 澤野工房さんからですが、日本人、ヨーロッパ系、不思議系、アグレッシブ系。
 ヨーロッパ的ジャズ大好き人間としては、やっとそんな音楽を演奏してくれる日本人が出てきたと、大きな期待。
 情報が無ければ日本人とは思えないぐらいヨーロッパ的な音。
 クラッシックの香りがする美しく深い音使いですが、誰に近いのかと考えてみても思いつかない。
 滑らかにかつ急激に上方向にスライドしていくロングフレーズ、さらにその連発が特徴かな?アグレッシブでエキサイティングなのだけども、キレイなメロディを文字通り綴っていくような音使い、その他この人ならではのたくさんの引き出しがありそう。
 フリージャズ的な音楽への指向が強いのかもしれませんが、そんな曲でも、美しいピアノの音と、適度に入ってくるわりやすいフレーズによって難解さが希釈され、ほどよいバランス。
 いずれにしても 魅力的かつ個性的なピアニストであることは間違いありません。
 さて、これからどんな方向に伸びていくのか楽しみなピアニスト。




posted by H.A.
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