吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

European

【Disc Review】“Lost River” (2018) Michele Rabbia

“Lost River” (2018) Michele Rabbia

Michele Rabbia (drums, electronics)
Eivind Aarset (guitar, electronics) Gianluca Petrella (trombone, sounds)

Lost River
Michele Rabbia
Ecm
2019-05-31


 イタリア人パーカッショニストMichele RabbiaのECM作品。
 おそらくフリー系、ECMでは“Re: Pasolini” (2005) Stefano Battagliaなどへ参加していた人。
 Enrico Ravaとの共演が多いイタリアントロンボーン奏者と、ノルウェーのアンビエント~先端系ギターの変則トリオ。
 静かでスタイリッシュなアンビエント系ミュージック。
 どこまでが電子音で、どこからが人が出しているのか曖昧なビート。
 抑制された電子音が奏でる哀し気なコードの移り変わり、あるいはシンプルなリフの繰り返しの中を、静かに舞うシンバル、乾いた革の擦過音、鐘の音、ギターのシングルトーン、コード、遠くから響いてくるような、あるいはときおり前面に出てジャズを奏でるトロンボーン。
 電子音と生楽器、各々の楽器の音の境界が曖昧になり、浮遊、疾走、混沌、静謐、覚醒・・・グラデーションを描きながら次々と変わっていく景色。
 予想できない展開ながら、難解、意味不明ではなく、メロディアスでセンチメンタルな音の動き。
 終始流れているのは、どこか遠くを眺めるような柔らかな哀感。
 ビートと旋律、夢と現実、過去と未来、人間と機械・・・、それらの境界が曖昧になった、それでいて調整が取れた摩訶不思議な時間。
 とてもクールでセンチメンタル。




posted by H.A.


【Disc Review】“Metamodal” (2018) Sokratis Sinopoulos Quartet

“Metamodal” (2018) Sokratis Sinopoulos Quartet

Sokratis Sinopoulos (Lyra)
Yann Keerim (Piano) Dimitris Tsekouras (Double Bass) Dimitris Emmanouil (Drums)

Metamodal
Sokratis -Qua Sinopoulos
Ecm
2019-03-15


 ギリシャのlyra奏者Sokratis Sinopoulos、ECM制作。
 前作“Eight Winds” (2015)と同じメンバーのピアノトリオがサポートした、古楽あるいは地中海トラディショナル・ジャズフュージョン。
 本作も幽玄な弦の音たっぷり、敬虔で物悲しい空気感ながら、現代的なそしてジャズ的な音。
 とても美しく儚げなピアノの音。
 ハラハラと零れ落ちてくるようなその音が、Lyraの古風な響き、エスニックな音の動きを現代ヨーロッパに引き戻してくる、そんなバランス。
 中近東やインド系と共通する、常時哀しみが流れているようなメロディ、そして悠久なんて言葉が浮かぶ音の流れ、あくまで静かで抑制された音。
 美しいピアノトリオ、哀感を湛えたメロディ、そしてアルコで弾かれるLyraの響きが醸し出す浮遊感が相まって、気がつけば非日常の時間。
 どこか遠い懐かしい世界へ誘うトリップミュージック。
 とても穏やかで上品なので、安心してトリップできそうです。




posted by H.A.


【Disc Review】“Avec Le Temps” (2017) Giovanni Guidi

“Avec Le Temps” (2017) Giovanni Guidi

Giovanni Guidi (Piano)
Thomas Morgan (Bass) João Lobo (Drums)
Roberto Cecchetto (Guitar) Francesco Bearzatti (Tenor Saxophone)

Avec Le Temps
Giovanni Guidi
Ecm
2019-03-21


 イタリアのピアニストGiovanni Guidi、トリオにサックス、ギターが加わる編成。
 ベースにThomas Morganが戻り、名作”This Is the Day” (2014)などを制作したレギュラーバンドなのであろうトリオを中心に、一部にサックス、ギターが加わる編成。
 柔らかくて淡い色合いの前々作”This Is the Day” (2014)と、ハイテンションで少々ぶっ飛び気味だった前作“Ida Lupino” (2016)の半ばな色合い。
 冒頭はトリオ、甘くてセンチメンタルなイタリアンメロディを、終始今にも止まりそうなスローなルバートで奏でる、強烈な浮遊感、感傷と郷愁の”This Is the Day” (2014)の世界。
 続くはギターとサックスを加えて、Ornette Coleman色が漂うジャズ。
 さらにフリー度を高め、攻撃的でハイテンションな演奏へとなだれ込み、静かなフリージャズと交錯する世界へ・・・
 そして終盤、再び甘美なルバートでのバラード、その連続、あの”Nuovo Cinema Paradiso”の世界。
 穏やかに始まり、中盤の混沌を経て穏やかに締める、一編の映画のような時間。
 紆余曲折を経て、ハッピーエンドのようなそうでもないような、懐かしさと感傷が交錯するエンディング。
 甘美なルバートでのスローバラードが続く”This Is the Day” (2014)のようだったら・・・とか何とか思いながらも、哀しげながらも暗くはないこの人の真骨頂、あるいはイタリアンシネマのような空気感が常時流れています。
 ドラマのような一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Absinthe” (2018) Dominic Miller

“Absinthe” (2018) Dominic Miller

Dominic Miller (guitar)
Mike Lindup (keyboards, piano) Nicolas Fiszman (bass) Manu Katché (drums)
Santiago Arias (bandoneon)

Absinthe
Dominic Miller
Ecm
2019-02-28


 アルゼンチン出身~イギリス在住、Stingの盟友Dominic MillerのECM第二作。
 ソロ、デュオの前作”Silent Light” (2016)から、本作ではバンドネオンも迎えたコンボ編成。
 静かに淡々と爪弾かれるアコースティックギター、これまた静かながらロック寄りの現代的なビート、ときおりのピアノと電子音。
 フロントに立つのは、ギターのアルペジオに加えて漂うようなバンドネオン。
 クールで現代的な色合いに、強烈な浮遊感と懐かしさが混ざり合う音。
 全てオリジナル曲、淡く漂うような前作に対して、本作ではクールな質感はそのままに、寂寥感の強いメロディのバラード群。
 あのStingの”Shape of My Heart”に強い浮遊感を加えたムードがひたすら続く・・・、そんな感じ。
 さて、あの名曲はこの人の色合いだったのかあ?とか思ったり、思わなかったり・・・
 ジャズ度はなし、かといってとんがったアバンギャルド色はないし、フォークでもなく、南米色も少なくとも表面上は薄い感じ。
 が、寂しげで哀しげながら全編に漂う穏やかな空気感は、やはりSaudade、南米の空気感なのでしょうか。
 近年のECMの淡くて柔らかな色合いに、この人独特のクールな寂寥感が混ざり合う、とても素敵な音。




posted by H.A.


【Disc Review】“And Then Comes The Night” (2018) Mats Eilertsen

“And Then Comes The Night” (2018) Mats Eilertsen

Mats Eilertsen (bass)
Harmen Fraanje (paino) Thomas Strønen (drums)



 現代ECMのファーストコールベーシストのひとり、ノルウェーのMats Eilertsen、ECMでのリーダー作第二弾。
 編成はシンプルなピアノトリオ、前作”Rubicon” (2015)よりも淡く漂うような色合いが強くなった繊細で静かな音。
 ピアノは引き続き美しく繊細な音を奏でるオランダのHarmen Fraanje、ドラムはECM御用達、ノルウェーのフリー系Thomas Strønenに交代。
 いかにも近年のECM的なルバートでのスローバラードを中心とした、静かで淡い色合いの音。
 ベース、ピアノ、ドラム、三者三様の自由なビート。
 ゆったりと散りばめられていく美しい音。
 Keith Jarrettをより繊細にしたような静かなピアノ、変幻自在に動くこれまた繊細なドラム、音の流れ全体を下から支えるベース。
 余白の多い空間。
 自由な動きが拡散していくようで発散はせず、各人の波動は常に同期が取れているような、絶妙なアンサンブル。
 その静かで淡い音の流れの中から、ときおり表出するセンチメンタルなメロディ。
 そんな繊細なインタープレーが織り成す綾。
 夢うつつの時間、全身の力が抜けていくような音の流れが続きます。
 哀しげながら絶望でも激情でもない、穏やかな空気感、
 根底に流れているのはヨーロッパのSaudadeなのでしょうか。
 どこか遠いところへ誘う、静かなトリップミュージック。




posted by H.A.



【Disc Review】“Summerwind” (2018) Lars Danielsson & Paolo Fresu

“Summerwind” (2018) Lars Danielsson & Paolo Fresu 

Lars Danielsson (bass, cello) Paolo Fresu (trumpet, flugelhorn)

Summerwind
Paolo Fresu
Act
2018-09-28


 スウェーデンのベーシストとイタリアのトランペッター、大御所二名のDuo作品。
 下の方でうごめくベースあるいはチェロと、ゆったりと漂うようなクールなトランペット。
 冒頭、あの”枯葉”が別のモノのように響きます。
 二人のオリジナル曲を中心に、いくつかのヨーロピアンメロディ。
 Lars Danielssonのあの激甘メロディは抑制され、淡い色合いの漂うような音の流れ。
 内省的で沈んだ空気感。
 躍動するベースと、ゆったりしたトランペットの感傷的な音。
 今にも静止しそうなほどに漂いながら、ときに強烈に加速しながら、静かな時間は進んでいきます。
 各曲短い演奏、三分に満たない楽曲も散りばめられ、次々と切り替わっていく淡い景色。
 遠い過去を眺めているようにも聞こえるし、何気ない日常のクールダウンのようにも聞こえます。
 クールな佇まい、静かでスタイリッシュ、淡い色合い、沈んだ空気感。
 やはりメロディアス。
 日常の喧騒から離れ、夢うつつな時間が流れていくような心地よさ。
 そんな名人芸。




posted by H.A.



【Disc Review】“Canto Primeiro” (2019) Beatriz Nunes

“Canto Primeiro” (2019) Beatriz Nunes

Beatriz Nunes (Vocals)
Luís Barrigas (Piano) Afonso Pais (Guitar) Mário Franco (Contrabass) Jorge Moniz (Drums) Tiago Canto (Flute) 
Carla Santos, Jorge Vinhas (Violin) Kátia Santandreu (Viola) Emídio Coutinho (Cello)



 ポルトガルのボーカリストBeatriz Nunes、おそらくデビュー作。
 静かなコンテンポラリージャズ。
 サポートはピアノトリオを中心としたアコースティックな音。
 クラシックの香りが漂う端正で美しいピアノと静かなドラムとベース、おそらくジャズの人たちなのだと思います。
 静かで間の多い空間の中の、極めて透明度の高い美しい声。
 少しキャンディな感じもちらほらする微妙なニュアンスで、テクニカルなスキャットまでやってしまう、何ともいい感じの歌。
 中心となるオリジナル曲は、少し不思議系。
 哀しげな表情のようでどこかクール。
 ヨーロピアンなクラシカルで透明度の高い音の中に漂う、微かなエキゾチシズム。
 4ビートもなければ、普通にポップスな感じでもありません。
 メロディも決してキャッチーな感じではないのですが、美しいピアノの音と、さらに輪をかけたような美しさ、図らずとも聞き入ってしまう声。
 さらにときおりのストリングスカルテットが上品な緊張感を付け加えていきます。
 静かに流れていく、何処か不思議な違和感のある綺麗な音。
 大化けする予感、そんな特別な声。




posted by H.A.

【Disc Review】“Bridges” (2015) Adam Baldych

“Bridges” (2015) Adam Baldych

Adam Bałdych (Violin)
Helge Lien (Piano) Frode Berg (Bass) Per Oddvar Johansen (Drums)

 ポーランドのバイオリニストAdam Bałdych、カルテットでのコンテンポラリージャズ。
 サポートはノルウェーの名手のピアノトリオ。
 オーソドックスな編成ですが、普通のジャズ~コンテンポラリージャズとは少々質感が異なります。
 基調はジャズですが、クラシック、ヨーロピアントラディショナルの強い香りが漂う、繊細かつドラマチックな音。
 中心となるオリジナル曲は、エキゾチシズムを漂わせながらの憂いを含んだメロディ。
 後ろ髪を引かれるようにタメを効かせて置かれていく繊細なピアノと変幻自在に動き回るバイオリン。
 どこかに飛んで行ってしまいそうなバイオリンを現実に引き戻すかのようなピアノ。
 美しく繊細なピアノの音に導かれて静かに始まり、徐々にテンションを上げ、楽曲の終盤にはドカーンとくるドラマチックな構成の楽曲がたくさん。
 全編通じてハイテンションです。
 インプロビゼーションだけでなく、それらの抑揚感を含めて計算し尽くされたような完成度。
 全体を漂う非日常的なエキゾチシズムと哀しい音の流れは、どこか遠い時代の遠い所から聞こえてくるようにも感じるし、ドラムを中心とする乾いたビート感はいかにも現代の音のようにも聞こえます。
 哀しく、どこか懐かし気で、ドラマチックな東欧コンテンポラリージャズ。




posted by H.A.


【Disc Review】“The New Tradition” (2013) Adam Baldych

“The New Tradition” (2013) Adam Baldych

Adam Baldych (violin) Yaron Herman (piano)

The New Tradition
Adam Baldych & Yaron Her
Imports
2014-06-10


 ポーランドのバイオリニストAdam BaldychとイスラエルのピアニストYaron HermanのDuo作品、ドイツのACTレーベルから。
 静謐と激情が交錯する時間。
 クラシックの色合いが強いヨーロピアンなテイストのピアノに、こちらもクラシックがベースなのだろうけども、地中~中近東の香り、ヨーロピアントラディショナルな香りも強いバイオリン。
 強い哀愁が漂うメロディと少し沈んだ空気感、強い緊張感は、このレーベルの雄、Lars DanielssonLeszek Mozdzerの諸作を想い起こします。
 それらと同様に、美しく冷たく硬質なピアノを背景にした、太い音の激情バイオリン。
 あくまでメロディアスなフレーズを紡いでいき、徐々に高揚しつつピークに達するスタイル。
 たった二人の決して大きな音ではない演奏ながら、とてもドラマチック。
 終始哀し気で少々深刻系の空気感はポーランドジャズの人の色合い。
 とてもハイテンションで躍動感が強い音、それでいて静かで美しい、現代バイオリンジャズの一作。




posted by H.A.


【Disc Review】“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

“Lucent Waters” (2018) Florian Weber

Florian Weber (piano)
Linda May Han Oh (double bass) Nasheet Waits (drums)
Ralph Alessi (trumpet)

LUCENT WATERS
FLORIAN WEBER
ECM
2018-10-26


 ドイツのピアニストFlorian Weberのトランペット入りカルテット、ECMでの初リーダー作。
 “Alba” (2015) Markus Stockhausenでとても静かで穏やかな演奏していた人。
 サポートはアメリカンRalph Alessi、そのバンドのドラマーNasheet WaitsのECM御用達の人たちに、知る人ぞ知る強烈なアジア系女性ベーシストLinda Oh。
 “Alba” (2015)とは面持ちを変えて、自由に激しく動きつつも、少し線が細めの繊細な音。
 静かなフリービート時間が中心。
 美しい音で美しいメロディを奏でるピアノ、それに寄り添いときおり強烈な推進力のベース、自由にアクセントをつけていくドラム。
 夢と現実を行き来するような時間。
 数曲で加わる覚醒を促すような鋭いトランペット、ときおりの激しいビート。
 が、テンポと音量が下がると、また夢の中・・・
 ”水”をテーマにした楽曲を集めたようで、確かにそんな演奏が続きます。
 1970年代ECMとは全く違う質感、21世紀型ECMの穏やかで優しい、繊細な音。
 美しさと妖しさはそのまま。
 とてもわかりやすいのですが、メロディが甘すぎたりセンチメンタルに過ぎたりしない、クールな色合いなのも現代的なのでしょう。
 静かなヨーロピアンコンテンポラリージャズ、その21世紀型ECMな音、これまた白日夢系。




posted by H.A.


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