吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

European

【Disc Review】“Last Decade” (2022) Benjamin Lackner

“Last Decade” (2022) Benjamin Lackner

Benjamin Lackner (piano)
Jerome Regard (bass) Manu Katche (drum)
Mathias Eick (trumpet)

Last Decade
Lackner, Benjamin / Eick, Mathias / Regard, Jerome
Ecm Records
2022-10-14


 ドイツ出身、アメリカ在住?ピアニストBenjamin Lackner、ECMレコードでの初アルバム。
 トランペットを迎えたワンホーンカルテットでの静かで穏やかなコンテンポラリージャズ。

 リーダーのピアノは繊細で美しい系。
 トランペットはノルウェーの哀愁系。
 ドラムはカラリと明るいビート感が新感覚なフランスの名手Manu Katche、ベースはこれまたフランスから。
 難しい人はいないのに、なぜか不思議系。
 このレーベルなので普通のジャズに落ち着かないのはさもありなんとしても、フリーでもない、不協和音系でもない、陰鬱でも、激しくもない。
 淡い色合いながら十分にメロディアス、終始穏やかな表情で気難しさはなし。
 が、不思議系。

 トランペットの醸し出す哀愁、ドラムとベースの明るさ、ポップさ、やんちゃさが混然としつつ、それらを支えるような、抑え込むような、あくまで控えめな美しいピアノ。
 そんな主従、イニシアティブが判然としない、かといってフリーインプロビゼーションな感じはなく、いわゆる”アンサンブル”とも違う感じ。
 ニュアンスが異なる三者三様が入り混じる、ありそうでないバランス。
 哀感とポップネスと美しさの微妙な綾。
 それが不思議感に繋がっているのでしょうか。

 そして全編を通じた強い浮遊感、淡くて穏やかな表情。
 そられが相まって、とても心地よい音。
 何度か聞いていくと、最初に感じた違和感が薄らぎ、より心地よく、より美しく感じられる音。
 これまた不思議。
 これは深い。




posted by H.A.


【Disc Review】“The Song is You” (2021) Enrico Rava, Fred Hersch

“The Song is You” (2021) Enrico Rava, Fred Hersch

Enrico Rava (Flugelhorn) Fred Hersch (Piano)

The Song Is You
Rava, Enrico / Hersch, Fred
Ecm Records
2022-09-30


 イタリアの大御所Enrico Rava、ピアノとのDuo作品、ジャズスタンダード集。
 ピアニストはオーソドックスで穏やかなイメージのベテランFred Hersch。
 名前通りの端正で穏やか、静かなジャズ。
 もちろんECMレコードなので、普通にジャズではなくて、いかにもな音。
 恐ろしいほどに透明度の高いピアノ。
 くぐもっているようで何とも言えない艶のあるフリューゲルホーン。
 ひたすら美しい。
 かつてのような激情やらサイケやらぶっ飛んでいくインプロビゼーションやらはありません。
 少々のフリーな場面も含めて、流れるように漂うように、ゆったりと穏やかに動いていく美しいモノ。
 Jobimで始まりMonkさんの連発で結ぶ神々しいメロディたち。
 クラシカルなムードを纏いつつ、残響を含めて美しい音を敷き詰めていくピアノ。
 スウイングしているようでオーソドックスなようでそうでもない、心地よく揺らぐ背景。
 その中を泳ぐ流麗なホーン。
 美しく懐かしい何かが流れていく時間。
 最後に収められたピアノのみのソロ演奏、美しく妖しいイントロダクションに導かれつつ、どスタンダード”Round Midnight"のメロディが流れてきて、これ、スタンダード集だったなあ・・・って思い出す感じの新しさ・・・、いや、新しくはないのか・・・
 隠れ名作"Diane" (1985) Chet Baker & Paul Bleyってなのを想い出して聴いてみましたが、同じく静かで穏やかで美しいながら、全く違うテイスト。
 本作の方が躍動感が強く、かつ、まろやか、ってな感じでしょうか。
 さておき、とにもかくにもひたすら美しい。
 とても素敵な静かな“ジャズ”。





posted by H.A.


【Disc Review】“Elastic Wave” (2021) Gard Nilssen Acoustic Unity

“Elastic Wave” (2021) Gard Nilssen Acoustic Unity

Gard Nilssen (Drums)
Petter Eldh (Double Bass) André Roligheten (Tenor, Soprano, Bass Saxophones, Clarinet)

Elastic Wave
Nilssen, Gard / Acoustic Unity
Ecm Records
2022-09-02


 ノルウェーのドラマーGard Nilssenのサックストリオ、ECMレコードから。
 リーダーは“Three Crowns” (2019) Maciej Obara Quartet、“Skala” (2010) Mathias Eickなど、ノルウェーの人の作品でよく見かける人。
 本作は同じくノルウェーのサックス奏者をフロントに立てたバンド、ピアノレストリオ。
 摩訶不思議系ジャズ。
 Ornette Colemanの影響が強いようで、また違った色合い。
 不思議系のメロディのテーマを決めたら後はビートをキープしつつ自由に、ってなところは似ているのですが、オーソドックスにベースとドラムがリズムをキープするOrnette Colemanバンドに対して、このバンドのリズムとコードのキープ役はサックス、その後ろで暴れまくるドラム、行ったり来たりのベース、そんなバランスの場面が多い感じ。
 リーダーのドラムは、決して激しい音でも大きな音でもないのですが、とにかく自由。
 あちこちに飛び回る打撃音。
 ベースはときおりCharlie Hadenな感じも見せる動きまくり系。
 サックスは近年に多い鋭く繊細な感じの音色。
 あの時代のフリージャズを想い起こす感じだったり、ピアノレスでのSonny Rollinsな感じもしたり、もどかし気な緊張感はJohn Coltraneな感じでもあったりしますが、こってりした感じはなく、スッキリ系。
 全部合わせて紛れもない不思議系ではありますが、沈痛さ陰鬱さはなく、激烈な場面も混沌もなし、うるさい場面もありません。
 ぶっ飛んだ感じながらサラリとした感じがいかにも今風。
 さらにテーマやインプロビゼーションの中に北欧系の懐かし気なメロディが見え隠れして・・・
 かつてのジャズの香り、エスニックな香りを振り撒きつつの新しい質感。
 小人数、ピアノレスならではのほどほどの余白。
 その中に響く各楽器の残響がとてもクール。
 そんなハードボイルドな今風ジャズ、不思議系。




posted by H.A.


【Disc Review】“The Next Door” (2022) Julia Hulsmann Quartet

“The Next Door” (2022) Julia Hulsmann Quartet

Julia Hulsmann (piano)
Marc Muellbauer (double bass) Heinrich Kobberling (drums)
Uli Kempendorff (tenor sax)


The Next Door
Julia Hulsmann Quartet
Ecm Records
2022-09-30


 ドイツのピアニストJulia Hülsmann、2022年作。
 前作に当たるのであろう“Not Far From Here” (2019)と同じメンバー、サックスを迎えたワンホーンカルテット編成。
 コンスタントな制作ペース、これだけ続けば21世紀のECMレコードの代表的ピアニスト、その穏やかで優しい系。
 いつもながらの安心・安全印、明るくて柔らか、落ち着いたヨーロピアンコンテンポラリージャズ。
 端正なピアノ。
 端正なサックス。
 端正なリズム隊。
 とても端正でノーブルなヨーロピアンコンテンポラリージャズ。
 ・・・で終わってしまうと・・・なので・・・
 ミディアムテンポで穏やかにスイングするビートの中に丁寧に置かれていく美しい音。
 クラシカルな色合いがあるのかもしれませんが、このレーベルにあっては、ジャズに寄った端正なピアノ。
 崩れたり、疾走したり、不協和音が鳴り響いたり、はありません。
 その雰囲気もときおりありますが、あくまでノーブルにまとまっていきます。
 サックスも同様。
 クラシカルな風味、音色ながら、あくまでジャズ。
 ときおりぶっ飛んでいくかと思わせつつも、これまた上品に収まっていきます。
 ともあれ本作、諸作に比べるとちょっと不思議系のメロディが増えた感、フリーな場面が増えた感、無きにしも非ずですが、その時間は長くはありません。
 全部合わせて、美しくて明るくて柔らか、上品なヨーロピアンコンテンポラリージャズ。
 トゲや毒気はないので、きっと体にもいいのでしょう。
 たぶん。




posted by H.A.


【Disc Review】“Elegy” (2016) Theo Bleckmann

““Elegy” (2016) Theo Bleckmann

Theo Bleckmann (voice)

Shai Maestro (piano) Ben Monder (guitar) Chris Tordini (double-bass) John Hollenbeck (drums)


Elegy
Bleckmann, Theo
Ecm Records
2017-01-27


 ドイツ出身、今はアメリカ在住でしょうか、男性ボーカリストTheo Bleckmannのリーダー作、ECMレコードから。
 近い時期の“A Clear Midnight: Kurt Weill & America” (2015)で優しい系ECMの代表的ピアニスト Julia Hulsmannと共演の後のリーダー作。
 サポートは、今風軽快疾走系のピアノトリオと、これまた今風先端系ギタリスト。
 そんな手練れたちが奏でる強い浮遊感、いかにも今な感じのコンテンポラリージャズに、クルーナー系の優しい歌。
 ECMレコードのヴォーカルものは異色なのでしょうが、いかにも21世紀型ECMな音、優しく穏やか系。
 “A Clear Midnight: Kurt Weill & America”と近い質感ながら、ジャズスタンダード色がないからか、共演者の色合いか、妖しさ強め。
 が、あくまで悲痛ではない穏やか系、明るい空気感。
 とにもかくにも美しい音。
 遠くから聞こえてくるようなクラシカルな音のピアノ、静かに鳴るシンバル、丸いクリーントーンのエレキギター。
 多くの場面でのスキャットも含めて、とても幻想的。
 全編を覆う強烈な浮遊感を含めて、あの期のPat Metheny Groupな感、Milton Nascimentoな感、南米感たっぷり・・・な感じ、無きにしも非ず。
 ときおり表出する、あの疾走か?なピアノ、あの先端な表情になりそうなギター、混沌に突っ込んでいきそうなフリーなビート。
 あるいは、とてつもない美メロが出てきそうな展開、空気感。
 が、それらの片鱗が見えつつも、あくまで抑制的。
 気が付けば、また淡い色合いの中。
 全部合わせて、穏やかで柔らかでストイックな幻想、そんなイメージ。
 これでいくつかのキャッチーなメロディや、ハイテンションなインプロビゼーションの場面があれば、大名盤になるんだろうなあ。
 が、この慎ましやかなバランスがオシャレでカッコいいんでしょうね。
 とても心地よくてよろしいかと。

 名作。



posted by H.A.



【Disc Review】“A Clear Midnight: Kurt Weill & America” (2015) Julia Hulsmann, Theo Bleckmann

“A Clear Midnight: Kurt Weill & America” (2015) Julia Hulsmann, Theo Bleckmann

Julia Hülsmann (piano) Theo Bleckmann (vocals)
Marc Muellbauer (double bass) Heinrich Köbberling (drums)
Tom Arthurs (trumpet, flugelhorn)



 ドイツのピアニストJulia Hülsmann、2015年作。
 “In Full View” (2012)と同メンバーのトランペットワンホーンカルテットに男性ボーカリストを迎えた編成。
 Kurt Weillの作品集、ジャズスタンダードな曲が並んでいますが、アメリカっぽさはありません。
 作曲者の出自はドイツだから・・・はさておき、紛れもないヨーロピアンなジャズ。
 その気難しさのない、穏やかで優しい音系。
 ゆったりとした、漂うようなビート。
 深く美しい音のピアノ、動きまくるベース、静かでしばしば自由に振る舞うドラム。
 その上に乗ってくるクルーナー系の男声、繊細ながらキリッとしたトランペット。
 どスタンダード“Mack the Knife”から始まりますが、クレジットを見るまで気づきません。
 アレンジされ、フェイクされていますが、奇をてらった感じではありません。
 聞き慣れたメロディではないのですが、とてもメロディアス。
 そんな感じのジャズスタンダードの演奏が並びます。
 もともと優雅なメロディ、コードが、表情の異なる別種の優雅さに様変わり。
 いかにもECMレコードな静かなフリーの場面もちらほら交えつつ、全部合わせてヨーロピアンな色合いのジャズ。
 少しだけ妖しのだけど、あくまで優雅で上品な優しい今風ジャズ。
 そんなバランスが心地よくてよろしいのでは。




posted by H.A.



【Disc Review】“Abaton” (2002) Sylvie Courvoisier, Mark Feldman, Erik Friedlander

“Abaton” (2002) Sylvie Courvoisier, Mark Feldman, Erik Friedlander

Sylvie Courvoisier (Piano)
Mark Feldman (Violin) Erik Friedlander (Cello)


Abaton
Courvoisier, Sylvie
Ecm Import
2003-10-14


 スイスのピアニストSylvie Courvoisier、Mark Feldmanのバイオリンとチェロを迎えたトリオ作品。
 クラシック~現代音楽な作品ですが、ECM New Seriesではなく、ECMレコードから。
 楽曲を準備したのであろう長尺な演奏が揃ったCD一枚目、短い演奏が続くCD二枚目は即興演奏集なのでしょう。
 静謐な空気感。
 ゆったりとした音の流れ、定まらないビート。
 不思議感、不安感たっぷりの旋律。
 哀し気な表情、不穏なムードを醸し出す不協和音。
 三者の誰が前に出るともなく、カウンターを当て合うようなアンサンブル。
 たっぷりの余白。
 ときおり強烈に加速したり、音量が上がったりしますが、次の瞬間は残響音のみ、あるいは無音・・・
 全部合わせて強烈な緊張感、強烈な非日常感。
 極めて耽美的、内省的。
 が、甘いメロディは出てきません。
 いわゆるわかりやすいグルーヴもありません。
 あるいは、それらの断片が見え隠れするだけで、長くは続きません。
 ジャズの耳からすれば、気難しく難解。
 が、暗くはなく、あくまで透明、あるいは雑味のない“白”な空気感。
 透明で美しい音。
 静謐ながら、とても豊かな表情。
 流れ始めてしばらくすると、部屋の空気感が変わってしまうような気がします。
 非日常的な空気感ですが、とても心地よいので、何かよからぬものに絡めとられていってしまうような感、無きにしもあらず。
 そんな音。



posted by H.A.



【Disc Review】“Hafla” (2021) Jon Balke Siwan

“Hafla” (2021) Jon Balke Siwan

Jon Balke (Keyboards, Electronics, Tombak)
Mona Boutchebak (Vocals, Quitra) Derya Turkan (Kemençe) Bjarte Eike (Baroque Violin) Helge Norbakken (Percussion) Pedram Khavar Zamini (Tombak) Per Buhre (Vocals, Viola)


Hafla
Jon Balke Siwan
ECM
2022-04-22


 ノルウェーの大御所Jon Balke、北アフリカ、中近東、その他のエスニックな色合いが交錯する摩訶不思議なプロジェクト、ECMレコードでの第三作。
 “Siwan” (2007,2008)、“Nahnou Houm” (2017)ときて、本作。
 メインのボーカリストは前作と同じアルジェリアの女性、他のメンバーは前々作から続いているのだと思います。
 古の地中海周辺をテーマとした(?)プロジェクトだったように思うのですが、ヨーロッパ周辺の経度の南北すべてをカバーしたというか、どこなのかわからない場所、その過去と未来感が交錯する・・・、そんなサウンド。
 アフリカンな感じでナチュラルだけど先端の香りも漂うビート、抑制された打楽器群。
 聞き慣れない音階。
 古楽、あるいは中近東的な弦の響き。
 ヨーロッパな流麗さを纏った、あるいはときに土の香りもするようなストリングス。
 それらが複雑に交錯する美しいアンサンブル。
 そして、何語か分からない透明で美しい女声。
 哀し気ながらどこか懐かし気で穏やかな空気感。
 それら合わせて、紛れもなくメロディアスで美しい音楽、奇を衒った感もないのだけども、強烈な非日常感。
 何が歌われ、語られているのかはわかりません。
 古いのか新しいのかも判然としません。
 あえてカテゴライズするとすれば、古楽とエスニックミュージックとポップスのフュージョン、ってな感じなのだと思います。
 が、それにとどまらず、先端的な色合いを感じるのは、おそらくは静かに鳴り続けるパーカションと、ときおりさり気なく響くシンセサイザー的な音、そして緊張感を高めるストリングス。
 全編哀し気な非日常の音ですが、決して深刻ではなく、気難しくもない、あくまでナチュラルで優しい空気感。
 それが聞きやすさに繋がっているように思います。
 優しいトリップミュージック。




posted by H.A.



【Disc Review】“Opening” (2021) Tord Gustavsen Trio

“Opening” (2021) Tord Gustavsen Trio

Tord Gustavsen (piano, electronics)
Steinar Raknes (double-bass, electronics) Jarle Vespestad (drums)


Opening
Tord Gustavsen Trio
ECM
2022-04-08


 ノルウェー発、哀愁のピアニストTord Gustavsen、トリオ作品。
 前作“The Other Side” (2018)と同様、オーソドックスなピアノトリオ編成ですが、ベーシストが交代しているようです。
 静謐で沈んだ空気感は、この人のいつもの音。
 ECMレコードでの初作であろう“Changing Places” (2001)と変わらない沈痛な哀感。
 が、前作の流れを引き継いでか、かつての悲壮感が漂うような沈痛さ、あるいは演歌な感じではなく、穏やかで軽い方向、あるいは淡い色合いに振れてきているように思います。
 ゆったりと丁寧に置かれていくメロディ。
 哀し気でキャッチーなメロディが揃い、涙ちょちょ切れ、これでもかこれでもかと押し寄せてくる怒涛の哀愁。
 概ねゆったりとしたテンポながらも、全体を通じた穏やかなグルーブと、ときおりの疾走。
 ・・・と、ここまでは初期の作品とも同じ。
 が、終始哀し気ながら、穏やかでほんのり温かな感じ、そのうえでときおり不穏さが表出する、そんなバランス。
 バンド全体のタッチが軽快になり、さらに三者が自由に動く時間が増え、それが初期とは違った軽くて淡い色合いと強い浮遊感に繋がっているようにも思います。
 暗いムードや胸を締め付けるような、あるいはベタつくまでの哀感がよければ、初期作品の方がお好みに合うのでしょう。
 が、メロディが強いだけに、このくらいのバランスの方がちょうど心地よいようにも思います。
 静かで穏やかな諦観。
 悟りの境地。
 そんな音。
 本作も極めて上質、この人のアルバムにハズレなし。



posted by H.A.



【Disc Review】”A Retrospective” (1975,1976,1977,1980) OM

“A Retrospective” (1975,1976,1977,1980) OM


Christy Doran (Guitar, Guitar Synthesizer) Bobby Burri (Double Bass) Fredy Studer (Drums, Percussion) Urs Leimgruber (Soprano, Tenor Saxophone, Flute)

A Retrospective
ECM Records
2006-06-06


 スイスのバンドOM、1970年代のジャズファンク~フュージョン、ECMレコードからのアルバム。

 縁のあるJAPOレーベルでの何作かから、ECMが編集したオムニバスなのだと思います。

 バンド名はあのとても怖い“Om” (1964) John Coltrane由来らしいのですが、音の方は妖しいながらも怖くはない、さまざまな色合いのジャズファンク。

 エレクトリックMilesからフリー混じり、はたまたPat Metheny Groupのような感じまで。

 ャズとロックが交錯するヒタヒタと迫ってくるビートに、ゴリゴリボコボコなウッドベース、あの期のJohn McLaughlinっぽいサイケなギターとWayne Shorterっぽいぶっ飛びソプラノサックス。 

 “In a Silent Way” (Feb.1969)、“Bitches Brew” (1969)的というか、”Weather Report” (1971)的というか。

 これがカッコいいやら懐かしいやら。

 妖しく激しいのですが、埃っぽくはなくて、スッキリした感じもするのはスイスのバンドゆえでしょうか?

 さらにはオムニバスゆえか、スペーシーなサウンドやら密林なサウンドやらも交錯しつつ、気が付けばPat Metheny Group的柔らかさと爽やかさ、ポップネスな演奏が始まったていたりして。

 確かにあの時代のサウンドなのですが、それらがかえって新鮮に聞こえます。

 一聴気難し気ですが、毒気はさほど強くなく、サラリとした質感。

 隠れた名作・・・かな。





posted by H.A.



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