吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

American

【Disc Review】 “Small Town” (2016) Bill Frisell, Thomas Morgan

“Small Town” (2016) Bill Frisell, Thomas Morgan
Bill Frisell (guitar) Thomas Morgan (double bass)

Small Town
Bill Frisell/Thomas Morgan
Ecm
2017-05-26


 大御所カリスマギタリストBill Frisell、ベースとのDuo作品。
 あのニューヨークVillage Vanguardでのライブ録音。
 相手方は、スローテンポでも静かで上品なグルーヴを出す、新世代のAnders Jorminと期待する、現代ECMのハウスベーシストの一人、Thomas Morgan。
 期待通りの静謐で幻想的な音。
 冒頭はPaul Motianナンバー。
 フワフワと空間を漂うクリーントーンのギターと、静かに寄り添うように反応しながら穏やかなグルーヴを作るベース。
 ロック、カントリーっぽい得意のフレーズを駆使しながら、無重力空間を泳ぐようなギター。
 続く4ビートジャズに移ってもそんなイメージは変わりません。
 さらにはルバートでのスローバラード。
 ドラムやピアノがいない分、ビートが揺れ動き、伸び縮みするような非現実的な空気から、気がつけばビートが定まり、表出する穏やかなセンチメンタリズム。
 あるいは、これまたお得意のカントリー、あるいはマカロニウエスタンなフレーバー、アメリカンな郷愁感・・・
 さすがにこの人なので、強烈な浮遊感を含めてひねりは効いていますが、かつてのようにズギューン、グシャーンとはきません。
 あくまで静かで穏やか、淡々とした上品な音が続きます。
 近年のECMのギターアルバム、“Streams” (2015) Jakob Bro、“Amorphae” (2010,2013) Ben Monderなどにも通じる音。
 もちろん元祖はBill Frisellでしょうが、それらの若手の作品よりも音楽は明解です。
 締めは007ナンバーで笑い声と共に幕。
 さすが、お茶目なカリスマBill Frisell。
 さすが、Village Vanguard、4ビートでジャズな演奏もありますが、とてもあの猥雑な空間でのライブ録音とは思えない、全編通じた静謐と透明感、穏やかな空気感。
 さすが、Bill Frisell, Thomas Morganというか、ECMというか。




posted by H.A.


【Disc Review】“Lookout for Hope” (Mar.1987) Bill Frisell

“Lookout for Hope” (Mar.1987) Bill Frisell
Bill Frisell (electric, acoustic guitars, banjo)
Kermit Driscoll (bass) Joey Baron (drums)
Hank Roberts (cello and voice)

Lookout for Hope: Touchstones Series (Dig)
Bill Band Frisell
Ecm Records
2008-08-26


 カリスマ大御所ギタリストBill Frisellの人気?作。
 近年のクリエイティブ系のギタリストの多くの人が、この人から影響を受けているように感じますが、そのサウンドのショーケースのようなアルバム。
 私的にはさかのぼって聞いた人で、“On Broadway Volume 1” (1988) Paul Motianで初めて聞いた時は幻想的な音を出す人。
 本作と同時期の録音の“Second Sight” (Mar.1987) Marc Johnsonなどのカントリーテイストであれれ?
 “Molde Concert” (1981) Arild Andersenのギンギンのロックテイストであれっれれ?ってな感じ。
 それらの多様な色合いがギュッと詰まっているのがこの作品。
 基本的にはギタートリオ+チェロのシンプルな編成なのですが、とてもそんな風には聞こえない複雑な音。
 冒頭曲はヘビーなハードロック風。
 ディストーションを掛けたズルズルギターと、これまた超クリエイティブ系のチェリストHank Robertsとのハードな絡み合いがなんとも不思議でクリエイティブ。
 と思っていたら、いきなりレゲエのビートと、スラックキー風ののどかな空気感。
 曲者Hank Robertsもそれにつられてか平和に弾いているのが何とも微笑ましい。
 さらにはKing Crimson風のリフ、アメリカンあるいはメキシカンなフォーク風、Monk ナンバーもカントリー風、変拍子ファンクフュージョン、フリージャズ・・・その他諸々、なんでもありの凄いサウンドの連続。
 とてもクリエイティブで新しい音ばかりで、現代に至るまでのカリスマなのもよくわかります。
 が、決して難解意味不明な部分はなく、全編通じた明るい空気感はアメリカンゆえでしょうか?
 ECMっぽくもありません。
 Manfred Eicherさんも手を焼いたんじゃないのかな?
 ECMでのリーダー作はしばらく途絶えます。
 が、本年“Small Town” (2016) Bill Frisell, Thomas MorganをECMで制作。
 まだまだお元気です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Nightfall” (2015) Quercus

“Nightfall” (2015) Quercus
June Tabor (voice) Iain Ballamy (tenor, soprano saxophones) Huw Warren (piano)

NIGHTFALL
QUERCUS
ECM
2017-04-28


 イギリスのボーカリストJune Tabor率いるQuercusのECM作品。
 前作は“Quercus” (2006)。
 その作品名をバンド名とし、他のレーベルはチェックしていませんが、ECMでは10年ぶりの制作。
 メンバーも音の雰囲気も変わりません。
 静謐に、透明に、ジャジーに、ECMコーティングされたブリティッシュフォーク。
 美しいピアノと、“Ballads”(Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)なColtrane、あるいはCharles Lloydなサックス。
 淡々と語るクールで乾いたボイス。
 全編スローなテンポ、おそらくブリティッシュ周辺の曲であろうトラディショナル曲が半数。
 遠い所を眺めるような、どこか懐かし気な音・・・・
 ってな感じで、”Quercus” (2006)と同じ形容になってしまう、一貫性のある音。
 さり気なく収められたジャズスタンダード”You Don't Know What Love Is”, “Somewhere”、あるいはBob Dylanナンバーも、すっかりその空気感の中に取り込まれ、全編通じて遠い所を眺めるような音。
 前作と比べると、少々勇まし気な音の流れのトラディショナル曲が目立つかもしれません。
 ブリティッシュエスニックなんてのがあるとすれば、そんな感じなのかもしれません。
 そんな曲は映画” Braveheart”な雰囲気。
 ま、不勉強な私は、スコットランド、イングランド、ブリティッシュの関係がきちんと整理ができていないのですが・・・
 ともかくにも、全編淡々としている分、気持ち穏か、じわじわときます。
 タイトル通りに”夕暮れ時”な空気感。
 これを聞きながら、静かに歴史のお勉強でもしてみましょうかね・・・


※別アルバム収録のBob Dylanナンバー。
 本アルバム収録バージョンはサックスが載ってくる分、もう少しジャジー。
 それもECMマジックですかね?


posted by H.A.



【Disc Review】“Quercus” (2006) June Tabor, Iain Ballamy, Huw Warren

“Quercus” (2006) June Tabor, Iain Ballamy, Huw Warren
June Tabor (voice) Iain Ballamy (tenor, soprano saxophones) Huw Warren (piano) 

Quercus
Tabor
Ecm Records
2013-06-04
ジューン・テイバー

 イギリスのボーカリストJune TaborのECM初作品。
 詳細についての情報は持っていませんが、1960年代から活動している大ベテランのフォーク?の人でしょうか?
 ピアノ、管とのトリオの編成、ECMでのそれ系の人といえば、同じくイギリスのNorma Winstonの諸作、あるいは近年ではSusanne Abbuehl諸作を想起します。
 それらに近いテイスト、妖しさを少々薄めて、ストレートにフォーク寄りの音の作り、といったところでしょうか。
 ピアノ、サックスの人もイギリスの人。
 派手な演奏はありませんが、ECMならではの美しい音。
 ピアノはクラシックの香り、ヨーロッパっぽさは濃厚ですが、明るい質感は少々アメリカ的でもあり、カッチリと律儀に弾く感じ。
 サックスはコンテンポラリー系に多いクール系、こちらも素直にサラリと吹くタイプ。
 Thomas Strønenとのバンド”Food”でECM制作しており、フリー系の志向もある人なのかもしれませんが、オーソドックスな質感。
 “Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)なColtrane、あるいはECMのCharles Lloydをもう少しバイタルにした感じでしょうか。
 そんなECM的ではあるものの、カッチリとした音を背景にして、ボイスは低く沈んだハスキー系、確かに英米のフォークシンガーにいそうな感じの声と節回し。
 ヨーロッパとアメリカの中間の雰囲気、それがイギリスっぽいといえばその通り。
 同じフォーク系でも北欧系だとエキゾチシズムを感じますが、さすがにポップミュージック、フォークミュージックの総本山のイギリス系、耳慣れた音流れは自然に耳に馴染みます。
 そこに緩やかなECMマジック、静謐さ透明感が加わると、やはり特別な質感です。
 ECMの真骨頂、ルバートっぽいスローバラード“Near But Far Away”なんて最高です。
 わかりやすいのだけども、どこか遠くを眺めているような、遠い所から聞こえてくるような、懐かしいような、切ないような・・・
 最初から最後まで、寂寥感と郷愁感が漂う美しい音。
 本作、発表は2013年ですが、録音は2006年。
 なぜ止まっていたのかはわかりませんが、十分にECMサウンド、仕上がりも上々です。




posted by H.A.


【Disc Review】“Funk Reaction” (1977) Lonnie Smith

“Funk Reaction” (1977) Lonnie Smith
Lonnie Smith (Organ, Synthesizer?)
Eddie Daniels (sax) Richie Hohenburger (guitar) Yaron Gershovsky (piano) and others

ファンク・リアクション
ロニー・スミス
Pヴァイン・レコード
2013-04-17


 Lonnie Smithの1970年代ソウルジャズ。
 Blue Noteでブルージーな演奏のイメージも強い人ですが、この期ではソウルジャズ~フュージョンな音。
 跳ねるベースにタイトなドラム、ファンキーなギターのカッティングとシンセサイザー。
 Herbie Hancockが “Head Hunters” (Sep.1973)、あるいは“Man-Child” (1974-75)あたりで確立した音なのでしょうか? 
 さらにソフト、ポップになって、ボーカルも乗せて・・・
 それでもいかにもなボーカル曲は最後と最後のみで、インプロビゼーションのスペースがたっぷり確保されているのが1970年代なバランス。
 冒頭から心地いいフェイザーが掛かったギターのカッティング。
 タイトな8ビートにフワフワとした音を出すフロント陣のバランスがとてもいい感じ。
 ディスコな感じのビートの演奏も少々ありますが、中心は柔らかで穏やかなグルーヴ。
 さらにちょっと切ないメロディ。
 その結晶が白眉の“It's Changed”。
 レアグルーヴなんて語感がピッタリな音。
 何のことはないミディアムテンポのソウルバラードなのかもしれませんが、これは染みます。
 ジャズなギターが奏でる切ないメロディに、静かに弾みながら後押しするような絶妙のベースライン、ちょっとあざとい感じのコーラスもいい感じの演出。
 さらに中盤からのシンセサイザーのソロのカッコいいこと、切ないこと。
 これだけ音数が少ないのにカッコいいインプロビゼーションはないのでは?
 少し変えると別の曲になってしまうような完成度の素晴らしさ。
 さすが、生粋のジャズメンLonnie Smith・・・かどうかはさておき、1960年代のコテコテな感じからは想像できないような洗練。
 胸がキュンとする、なんて言葉は気持ち悪くて使わないのですが、そんな音。
 その他含めて、心地よいソウルジャズ~フュージョンがたっぷりと。
 “Bitches Brew” (Aug.19-21,1969)を根っこにして、上記のHerbie Hancock諸作で整理され、確立し、本作もその流れの中の一作。
 あるいは、“Big Band Bossa Nova” (1962) Quincy Jonesあたりからあった、ポップなジャズが、時代の流行りの音と融合してできた音。
 さらに発展して、いきついたピークが“Winelight” (1980) Grover Washington Jr.あたり、ってな感じが私的な捉え方。
 ま、そんな野暮な話はさておいて、あの時代のノスタルジーと呼ぶにはあまりにも素敵な音ですねえ。




 posted by H.A.


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