“Isabela” (2021) Oded Tzur
Oded Tzur (tenor sax)
Nitai Hershkovits (piano) Petros Klampanis (double-bass) Johnathan Blake (drums)
イスラエルのサックス奏者Oded Tzur、ECMレコードでの第二作、郷愁感たっぷりのコンテンポラリージャズ。
前作“Here Be Dragons” (2019)は静かで穏やかな名演でしたが、本作も同じメンバー。
同胞のピアニストに欧米のベース&ドラム、オーソドックスなジャズカルテット編成。
冒頭は、僅か二分に満たない時間ながら、静けさから激烈一歩手前まで展開する、このアルバム全体を象徴するようなイントロダクション。
続いてミディアムテンポに乗った懐かしさが溢れるようなメロディ。
少々のエキゾチシズムを纏ったSaudadeな世界。
例によって日本の懐かしいメロディに通じる感じなのが不思議。
Charles Lloydな感じの透明度が高く美しい音からダーティな音までが交錯するサックス、軽快に動きまくるピアノ。
このピアノが凄い。
転がりまくり、要所々で疾走しまくり。
あくまでサポートしている感じではあるのですが、軽やかで美しいフレージング、強烈な存在感。
前作では繊細なイメージが強かったように思うのですが、本作では強烈な疾走が前面に。
同胞の名手Shai Maestroにも近い感じは現代イスラエルの色合いなのかもしれませんし、近年のECMレコードのピアニストの代表的な色合いの一つかもしれません。
いずれにして凄まじい演奏力。
終始穏やかな前作とはまた違った、徐々に音量と激しさを増していくハイテンションな演奏が印象に残ります。
そして終盤に収められた10分を超えるタイトル曲は、今にも止まりそうなスローバラード。
ドラムが定常にビートを出している時間が長い分、ECMレコードのお約束全編ルバートな感じではないのですが、強烈な浮遊感。
穏やかで懐かし気なメロディと空気感。
漂うサックス、軽やかに転がるピアノ、目まぐるしくパターンを変え、テンションを上げながら自由な形に遷移していく、あくまで静かなドラム。
とてもドラマチック。
そして締めはいかにもイスラエルな感じのエスニックなメロディ、アップテンポのハイテンションな演奏。
これまたドラマチック。
凄まじい演奏力に裏打ちされた、少しだけエスニックな違和感が漂う、Saudadeなコンテンポラリージャズ、今回はテンション高め、ってな感じでカッコいいんじゃないでしょうか。
posted by H.A.