“Danse” (2017) Colin Vallon & Patrice Moret & Julian Sartorius

Colin Vallon (piano) Patrice Moret (double-bass) Julian Sartorius (drums)

Danse
Colin -Trio- Vallon
Ecm Records
2017-01-27


 スイスのColin Vallon率いるピアノトリオ、ECMでの第三作。
 前作“Le Vent” (2014)と同様、不思議感たっぷりのコンテンポラリージャズ。
 音のイメージは少しずつ変化しています。
 クラシカルな色合いはそのまま、ミニマルな感じは抑えられ、より繊細になったイメージ。
 かといってオーソドックスなジャズに近づいたわけでもなく、アバンギャルドでもない、何とも不思議な音。
 シンプルなようで複雑なビート。
 三者三様、ピアノの右手と左手さえも違うビートを出しているような、それでいて拡散することなくピッタリと収まっていく、摩訶不思議なサウンド。
 沈んだムードのメロディ、リフは決してキャッチーではありませんが、難解でも沈痛でもありません。
 乾いた音、静かで繊細なドラム、揺らぎつつもペースを作るベース、そして美しいピアノ。
 硬質なリフで同じところを徘徊しているようで、気がつけば崩れ落ちるような儚い音、疾走を伴ったスムースな音、あるいはジャズなインタープレー、フリーなインプロビゼーション・・・、変幻自在、予測できない音の流れ。
 どれもが計算された演奏のようにも、即興のようにも聞こえます。
 アルバム全体の一貫したムード、どのカテゴリにも寄らない独特の構成、複雑ながらスッキリとまとまった質感は、前作まででやろうとしてきたことが完成したようにも思えます。
 とにもかくにも、美しい音で編み上げられる、とても繊細な音絵巻。
 これが21世紀型ジャズの新しい形、と言われれば納得の一作。




posted by H.A.