『ストレイト・ストーリー』(1999)
1999年、監督デヴィッド・リンチ、出演リチャード・ファーンズワース、シシー・スペイセク、ハリー・ディーン・スタントン、他。
デヴィッド・リンチ、幻想と現実が交錯する過激な二作『ロスト・ハイウェイ』(1997)、『マルホランド・ドライブ』(2001)の間の作品。
それらとは全く違うテイストの人情味溢れるドラマ。
主人公は娘と長閑な隠居生活を送る老人。
病気で倒れた兄を訪ねるために、トラクターでの旅を決心します。
その道程、数百キロ、数週間の出来事。
ヒッチハイクする訳ありの若い妊婦、鹿を轢き殺してしまった女性、自転車でツーリングする若者たち、トラクターの暴走~故障、助けてくれた男性、同じ町の老人、修理工の双子・・・、道中でのさまざまな人々との関わり、さり気ないやり取りの中で語られる主人公の経験、見識。
ヒッチハイクする訳ありの若い妊婦、鹿を轢き殺してしまった女性、自転車でツーリングする若者たち、トラクターの暴走~故障、助けてくれた男性、同じ町の老人、修理工の双子・・・、道中でのさまざまな人々との関わり、さり気ないやり取りの中で語られる主人公の経験、見識。
そして、のどかな風景と、静かでセンチメンタルなBGM。
それだけ。
リンチさんならではの謎も夢と現実の交錯も、暴力も性もありません。
美しい風景をたっぷり観ることが出来ますが、空と田畑と山と道路、田舎町のみ。
美しい風景をたっぷり観ることが出来ますが、空と田畑と山と道路、田舎町のみ。
おそろしいまでに地味な映画です。
が、なぜか目を離すことができない、静かでゆったりとした時間。
美しい景色とBGMが醸し出す空気感、そして、達観したハードボイルドネスがにじみ出る主人公の頑固で合理とはかけ離れた行動、必要以上に距離を詰めない微妙な他者との関係がとてもいい感じ。
歳を重ねて弱ってしまった普通の人なのに、何ともカッコいいお爺さん。
とにもかくにも静かでゆったりとした時間、ベタつかずサラリとした、それでいてしみじみじわじわとくる人間模様。
リンチさん云々を抜きにしても、素晴らしい時間、何かが残る映画。
posted by H.A.