『パリ、テキサス』(1984)

パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]
ハリー・ディーン・スタントン
東北新社
2006-08-25


 1984年、西ドイツ・フランス合作、監督ヴィム・ヴェンダース、出演ハリー・ディーン・スタントン、ディーン・ストックウェル、オーロール・クレマン、ナスターシャ・キンスキー、他。
 男女、家族の複雑な思いを描いた人間ドラマ。
 妻の失踪の失意で放浪を始めた主人公、数年の後に発見され、弟夫妻、そして彼らに育てられていた息子との生活を始めます。
 お互いの微妙な探り合いから始まり、次第に意気投合し、弟夫妻に無断で母を探す旅に出る主人公と息子。
 育ての親の叔父叔母に気を遣いながらも、行方不明の母に思いを馳せる息子。
 実の息子同然に暮らしてきた甥を奪われた弟夫妻の複雑な思い。
 失った過去と自分を取り戻そうとするかのように、妻、息子、そして思い出の地テキサス州パリに思いを馳せる主人公。
 そして妻との再会・・・
 それらの複雑に込み入った思いが、寡黙に、時に雄弁に、絶妙なニュアンスで表現されていきます。
 終始ゆったりしたペースで穏やかな映像。
 それいて先の読めないドキドキするような展開。
 親子、兄弟、夫婦、家族の複雑な思いやりの交錯、悲喜こもごも。
 善し悪しの判断がつかない複雑な展開と結末は、これが作り物ではない現実の人間模様かもねえ・・・と思ったり、思わなかったり・・・
 なお、背景に流れる音楽は名作“Paris, Texas” (1985) Ry Cooder。
 寂しげに聞こえていた音楽が、映画を見ると温かな音に聞こえてくるような気もするし、やはり寂しげで不条理にも聞こえるし・・・
 音楽と同様に、考える余白たっぷりの静かな名作。




posted by H.A.