“Ravensburg” (2017) Mathias Eick

Mathias Eick (trumpet, voice) 
Andreas Ulvo (piano) Audun Erlien (bass) Torstein Lofthus (drums) Helge Andreas Norbakken (drums, percussion) Håkon Aase (violin)

RAVENSBURG
MATHIAS EICK
ECM
2018-03-02


 ノルウェーのトランペッターMathias Eickのコンテンポラリージャズ。
 すっかり現代ECMの代表トランペッターになったようで、コンスタントに制作しています。
 前作”Midwest” (2014)と同様、オーソドックスなトランペットカルテットにバイオリンが加わる編成ですが、メンバーは大幅に変わっています。
 本作もこの人の色合い、寂寥感の強いジャズですが、少々明るいイメージだった前作に対して、本作はダークで哀感強め。
 しっとりしたジャズだけど、アコースティック4ビートな場面は少なく、現代的な複雑で乾いたビートを刻むドラムと、控え目に淡々と音を置くエレキベース。
 ピアノは前作に参加した大御所Jon Blakeではありませんが、“Skala” (2010)などに参加していたいかにも北欧系、繊細で美しい音の人。
 さらに狂気を秘めたようなバイオリンと、時にスキャット、そして主役のサブトーンたっぷり、寂寥感の塊のような音のトランペット。
 バイオリンはThomas Stronenの“Time Is A Blind Guide” (2015)、“Lucus” (2017)に参加していた人。
 派手に前面に出てくる場面は多くないのですが、トランペットとの揺らぐような絡み合いがとてもカッコいい。
 楽曲はもちろんこの人の描く、哀感、寂寥感の強いメロディ。
 ノルウェーのトラディショナルな空気感と、ロックやフォーク、その他諸々の要素が混ざり合う現代の音。
 静かに淡々と進みつつも、漂い揺らぎながらじわじわと迫ってくるような音の流れは、穏やかながらとてもドラマチック。
 近年のECMの定番、淡くて穏やかでエスニック、そして揺らぎのあるコンテンポラリージャズ。
 どことなく寂しげで懐かしげな空気感は、Nordic Saudade。
 ダークで沈んだ質感だけども、なぜか和みます。




posted by H.A.