“Blue Maqams” (2017) Anouar Brahem
Anouar Brahem (oud)
Django Bates (piano) Dave Holland (bass) Jack De Johnette (drums)

Blue Maqams
Anouar Brahem
Ecm Records
2017-10-13


 チュニジアのウード奏者Anouar Brahem、ジャズのメンバーとの共演。
 ここまでピアニストFrançois Couturierを中心としたフランス系かアラブ系の人との共演が多く、アメリカンなジャズの人だけとは“Thimar” (1998)以来でしょうか?
 過激なイギリス人ピアニストDjango BatesエレクトリックMilesのリズム隊。
 普通に考えると、ぶっ飛んだ激しい系のピアノトリオ。
 確かにジャズなビート感の演奏が多くなってはいますが、あくまでAnouar Brahemの静かで穏やかな寂寥の世界。
 淡々と刻まれるビートに、美しいピアノの響き。
 それを背景に、ゆったりと、訥々と、語るように奏でられるウード。
 ベース、ドラムは、あの時代のジャズのように強烈にフロント陣を煽ることはしません。
 強力な推進力ながら、あくまで抑制的な静かなビート、穏やかなグルーヴ。
 それでも時間が進むにつれ、徐々にテンションは上がっていきます。
 そのジャズ的な高揚感とともに静かに熱を帯びていくウード。
 寂寥感、やるせなく哀し気なムードはそのままですが、いつもとは違う感覚の音の流れ。
 Django Batesはいつもイメージとは異なる、音数、音量を抑えた音使い。
 たっぷりのエコーに、零れ落ちるような、儚げな、ECMな音。
 フレーズの端々に感じられる静かな凄み。
 長い時間ではありませんが、ピアノトリオの場面は恐ろしいほどに美しく、静かで流麗なジャズ。
 物悲しいメロディをベースにしたウードとのDuoの場面は、漂うような空白の多い時間。
 その他、ウードのソロ、ドラムとのDuoなど多彩な構成。
 北アフリカ~地中海沿岸~アラブの色合いに加えて、北海側ヨーロッパ、あるいはアメリカ大陸までが混ざり合う音。
 ゆっくりと周囲の景色が変わっていくような音の流れ、寂寥感はいつものこの人の作品通り。
 さらに上質、上品なジャズ的な洗練が加わった音。
 Anouar Brahemにとってもチェンジオブペース。
 一番ジャズなAnouar Brahemはこのアルバムでしょう。
 一聴、普通なようで、何度か聞いているとジワジワ来るなあ・・・




posted by H.A.