“Ocean” (1986) Stephan Micus
Stephan Micus (Dulcimer, Zither, Ney, Sho, Shakuhachi, Voice)

Ocean
Stephan Micus
Ecm Import
2000-07-18


 ドイツのマルチインスツルメンタリストStephan Micus、ECMでの無国籍、ノンジャンルな静かな音。
 前作に当たるのであろう“East of the Night” (1985)はギター中心でしたが、本作はDulcimer, Zither(打弦楽器)と尺八を含めた木管が中心。
 聞き慣れない音、アジアなのか、ヨーロッパなのか、中東なのかわからない、無国籍ワールドミュージック色が強くなってきました。
 冒頭曲ではヴォイスが入って、妖しい感も増幅。
 といってもメロディの芯が明解で、フォーク~ポップミュージックっぽさもあり、その微妙、絶妙なバランス。
 二曲目以降は、前作と同様の静かでゆったりとした幽玄な音の流れ。
 恐らくヨーロッパ系の古楽器であろう弦の音と日本的な笙、尺八が絡み合う不思議な空間。
 弦楽器が琴のように聞こえ、笙がパイプオルガンのように響く、何とも摩訶不思議な感覚。

時間が止まっているような、ゆったりと動きだすような、そんな音の流れ。

 テーマはもちろん海なのでしょうが、地中海や北海よりも、瀬戸内海的でしょかね。
 日本的な夜明け、あるいは夜明け前な感じ。
 きらめく陽光はありませんが、激しい波もうねりもありません。
 とても静かで穏やかです。
 前作が山間部の夜明け前であれば、本作はまさに海辺のそれ。
 ジャケットのポートレートそのままの音。
 トリップ度、トランス度、高。
 これも名作です。




posted by H.A.