“Yo!” (2000-2001) Silvana Deluigi
Silvana Deluigi (Voices)
Pablo Ziegler, Gustavo Beytelmann, Osvaldo Calo (Piano) Horacio Malvicino (Guitar) Walter Castro, Horacio Romo (Bandoneon) Horacio "Mono" Hurtado, Andy González (Bass) Steve Swallow (Electric Bass) Robby Ameen (Percussion)
Fernando Suárez Paz, Alfredo Triff (Violin)

YO!
SILVANA DELUIGI
ewe
2007-06-27


 Kip HanrahanのレーベルAmerican ClaveからAstor Piazzollaへのトリビュート。
 フィーチャーされるのはアルゼンチンの女性ボーカリストSilvana Deluigi。
 Kip Hanrahan作品にフィーチャーされていた囁き系、クール系の人ではなく、少々ハスキーな声で情感たっぷりに歌うオーソドックスな?タンゴ系の人。
 さらに”Tango: Zero Hour” (1986) Astor Piazzollaを制作したメンバーに、Kip Hanrahanバンドのメンバーが加わる構成。
 Astor Piazzolla色のタンゴが中心ではあるのですが、Kip Hanrahanはもちろん、Jack Bruce、さらにはメキシコ曲、Edú Lobo、Chico Buarqueといったブラジル曲なども加えた多彩な楽曲。
 楽曲ごとに編成を変えながら、Astor Piazzolla色とKip Hanrahan色が混ざり合い、交錯する構成。
 一貫しているのはダークで緊張感の高い空気感。
 冒頭のタンゴスタンダード”La Cumparsita”は、妖し気なバイオリンとソリッドなエレキベースのKip Hanrahanの色合いに染まっています。
 Astor Piazzolla、その相棒Pablo Zieglerの楽曲は、強烈な哀感が直接的に表出するAstor Piazzollaの色合い。
 ブラジル曲は強い浮遊感と妖し気なバイオリン、フリー掛かったピアノが交錯する、これまたKip Hanrahan風。
 やはり名作"A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996)を想い出してしまします。
 さらに、ソロピアノで演奏されるタンゴ、Astor Piazzollaバンドではあまり目立たなかったHoracio Malvicinoが前面にフィーチャーされたジャズっぽいタンゴもカッコいい。
 ・・・ってな感じで、いつものアフロキューバンの強烈なビートではありませんが、さまざまな南米的な要素をごちゃまぜにし、さらに妖し気で緊張感の高い現代のアンダーグランド色でコーティングし、なぜかタンゴ系のボイスがしっかり映える音作り。
 ブエノスアイレスなのか、ニューヨークなのか分かりませんが、どこかの都会の片隅、うらびれた街角の空気が交錯する、少し沈んだ、妖しく危ない空気感。
 さすがKip Hanrahanの現代タンゴ。




posted by H.A.