“Liberetto III” (2017) Lars Danielsson
Lars Danielsson (double bass, cello, piano, wah-wah cello, guembri)
Grégory Privat (piano) John Parricelli (guitars) Magnus Öström (drums, percussion)
Arve Henriksen (trumpet, voice) Mathias Eick (trumpet) Björn Bohlin (english horn, oboe d'amore) Dominic Miller (acoustic guitar) Hussam Aliwat (oud)

LIBERETTO III
V/A
ACT
2017-05-26


 北欧ジャズの大御所Lars DanielssonのLiberettoシリーズ第三弾。
 “Liberetto” (2012)、“Liberetto II” (2014) と変わらない、哀愁短編小説集のような、悲し気でメロディアス、ドラマチックな楽曲。上品、上質なヨーロピアンコンテンポラリージャズ。
 今回のピアニストはカリブのGrégory Privat
 この人のバンドのピアニスト、古くはBobo Stenson、その他以下などの強烈な面々。
  “Libera Me” (2004) Carsten Dahl
  “Pasodoble” (2006,2007), “Tarantella” (2009) Leszek Mozdzer
  “Liberetto” (2012)、“Liberetto II” (2014) Tigran Hamasyan
 よくもまあ、私的な好みの人ばかり連れてくるというか、何と申しましょうか。
 凄まじいテクニック、疾走感もさることながら、それぞれ個性は違えど、Larsさんの頭の中で鳴っている少々沈痛気味の哀愁のメロディに合いそうな人をチョイスしているんでしょうね。たぶん。
 であれば、私の好みに合うのは偶然ではなく必然なのでしょう。たぶん。
 上記の三人のピアニストに比べて、強烈な個性は譲りますが、その分、上品でスッキリした感じ。
 自身のリーダー作“Ki Koté”(2011)、“Tales of Cyparis” (2013)などでは、強烈な疾走感に加えて、カリブ~南米系特有の浮遊感が加わる素晴らしい演奏でしたが、本作でも要所で軽快に突っ走っています。
 さておき、本作も全編哀愁が漂う切ないメロディに圧倒的なバンドの演奏力。
 ピアノトリオ+ギターをベースとして、曲ごとにホーン他のゲストが入る構成。
 ゲストはこの人のアルバムではお馴染みの寂寥感の塊のような音のノルウェー人トランペッター二人に、その他エキゾチック系の楽器などなどなど。
 楽曲ごとに前面にフィーチャーされる人が変わっていきますが、美メロ、美コードをベースに長尺にインプロビゼーションする・・・というよりは、凝った構成とアンサンブルが中心になってきた感じでしょうか?
 クラシック系、アラブ系、スペイン系、ディストーションが効いたギターがうなるロック、ボッサのバラード、いかにもなヨーロピアンピアノジャズ前向き系、沈痛系、尺八のような響きのトランペットの寂寥系、疾走系・・・その他諸々。
 諸々のテイストが混在しているのですが、ここまでの諸作に比べて、全体の演奏がカッチリ、スッキリしている分、また、インプロビゼーションが前面に出る場面が少なく感じられる分、ポップに聞こえるかもしれません。
 そのあたりで好みがわかれるのかな?
 いずれにしてもメロディはあの昭和的?な哀感が漂うLars Danielssonワールド。
  北欧哀愁短編小説ジャズは健在です。





 Lars Danielson諸作、私が知る限り。
 他にもたくさんの参加作品があるのでしょう。
 現在のACTのシリーズとその前の作品の間で期間が空いています。
 オリジナル曲の作風がその間で変わっているのが面白いところ。
 くどいまでの美メロはそれまでの親分Lars Janssonの影響が強かったりするのかな?
 いずれにしても現代の北欧ジャズの親分、その最右翼の一人、ですかね。

Time Unit” (1984)
"New Hands" (1986)
"Tiá Diá" (1987) with Alex Acuña
  "The Eternal Now" (1987) Lars Jansson
"Nightlight" (1990) with Alex Acuña
"Poems" (1991)
  "A Window Towards Being" (1991) Lars Jansson
"Fresh Enough" (1992)
"Far North" (1994)
"Continuation" (1994)
"European Voices" (1995)
  "Invisible Friends” (1995) Lars Jansson
  ”The Time We Have” (1996) Lars Jansson
  "Our Standards" (1996) Joey Calderazzo
"Origo" (1997)
"Live At Visiones" (1997)
  ”Hope” (1999) Lars Jansson
  "Witnessing" (2002) Lars Jansson

Libera Me” (2004)
The Time” (2005) Leszek Mozdzer, Lars Danielson, Zohar Fresco
“Live” (2005,2006) Możdżer, Danielsson, Fresco
Melange Bleu” (2006) Lars Danielsson
Salzau Music On The Water” (2006) Danielsson, Dell , Landgren
Between Us & The Light” (2006) Możdżer, Danielsson, Fresco
  "Notes From The Heart" (2006) Ulf Wakenius
Pasodoble” (2006,2007)
  "Love Is Real" (2008) Ulf Wakenius
  "Voyage" (2008) Youn Sun Nah
Tarantella” (2009)
  "Same Girl" (2010) Youn Sun Nah
  "Arabesque" (2011) ‎with Cæcilie Norby
  "Vagabond" (2012) Ulf Wakenius
Liberetto” (2012)
  "Lento" (2012) Youn Sun Nah
Polska” (2013) Możdżer, Danielsson, Fresco
Liberetto II” (2014)
  "Just The Two Of Us" (2015) ‎with Cæcilie Norby  
Jazz at Berlin Philharmonic III” (2015) Leszek Możdżer
  "Sun Blowing" (2016) with Marius Neset, Morten Lund
Liberetto III” (2017)

posted by H.A.