“Três no Samba” (2016) Eliane Faria, André Mehmari, Gordinho do Surdo
André Mehmari (Piano) Eliane Faria (Voice) Gordinho do Surdo (Surdo)
ブラジルのスーパーピアニストAndré Mehmariのとても穏やかなサンバアルバム。
ボーカルとパーカッションのトリオ。
少々クラシックに寄せ気味のピアノに、低い音で静かにビートを刻むスルド。
その上を踊るボイス。
ウイスパー系、可憐系ではなく、ちょっと貫禄ある系の落ち着いたしっとり系の声、決して大きな声は出さないブラジル系特有の優しく穏やかな歌。
サンバ系の伝統曲、スタンダード曲が並んでいるのだと思います。
どこかで聞いたことがある、誰かが歌っていたメロディばかりなのだけども、思い出せない・・・
もちろんサンバ特有の明るいようで切ないような、いわゆるサウダージ、郷愁感・・・
そんな感じで普通の現代サンバ作品と思いきや、普通でないのは、ピアノの動きゆえ。
この編成であれば、本来は器楽を背景にしてボーカルが踊るはずなのですが、踊り、跳ねまわり、突っ走るのはピアノ。
スタートはクラシカルな上品なムード、ビートが乗ってくるとジャズなグルーヴが加わり、突っ走り、転げまわるような凄まじい動き。
スタートはクラシカルな上品なムード、ビートが乗ってくるとジャズなグルーヴが加わり、突っ走り、転げまわるような凄まじい動き。
バラードでは一転、たっぷりとタメが効いた伸び縮みするビート。
歌の後ろのオブリガードだけでも普通ではない感たっぷりなのですが、さらにインプロビゼーションのスペースもたっぷり。
遠いところに飛んで行ってしまいそうになるピアノを大地に引き留めようとしているようなスルド。
ボーカルさえもそんな役回りを演じているように聞こえます。
初期~“Veredas” (2005-2008オムニバス)あたりまでのピアノには丸みを感じましたが、この頃は鋭さが際立ちます。
そんなアグレッシブなピアノを暖かく見守るようなスルドとボイス。
これしかないようなバランスなのかもしれません
全体を眺めれば静かで穏やかで優しい音。
優しく、かつプログレッシブな、とても素敵な現代サンバ。
posted by H.A.