“Antonio Loureiro” (2010) Antonio Loureiro
Antonio Loureiro (vibraphone, drums, piano, guitar, voice, etc.)
Rafael Martini (vocals, accordion, piano) Andre Mehmari (piano) Mateus Bahiense, Marcelo Pretto (brimbau, percussion, etc.) Cecilia Pacheco (harp)
Federico Heliodoro, Pablo Souza (bass) Daniela Ramos (table) Segio Krakowski (pandeiro)
Pedro Aristides (trombone) Mauricio Loureiro, Flavia Ferreirra, Diago Mala, Nivaldo Orsi, Luis Afonso “Montanha” (clarinette) Daniel Pantoja (flute) Felipe Jose (cello)
Sergio Perere, Fabiana Cozza, Leonora Weissmann, David Linx (voice) Pedro Durães (programming)

Antonio Loureiro
Antonio Loureiro
Ais
2006-07-31


 さまざまな楽器を操るブラジル人アーティストAntonio Loureiroのデビュー?アルバム。
 サンパウロ出身、スーパーピアニストAndre Mehmariとつながりが深いようで、近作ではDuoで"MehmariLoureiro duo" (2016) André Mehmari, Antonio Loureiro、“Herz e Loureiro” (2014) Ricardo Herz, Antonio Loureiroではプロデュースを任せ、本作でも一曲客演しています。
 サンパウロ系といったカテゴリがあるようですが、サンバビートではなく、ブラジリアンネイティブ~南米各地のフォルクローレ、あるいはクラシック色も強いショーロ、さらにはミナス系の色合いも強い感じ。
 Andre Mehmari を中心?として、Tatiana ParraDani & Debora Gurgel親子、Mônica SalmasoLeonora Weissmann、アルゼンチンまで地域を広げればAndrés Beeuwsaert、さらにはCarlos_AguirreQuique Sinesiあたりまでもつながりそうな感じ。
 ボーカルが前面にフィーチャーされるMPB仕立てではあるのですが、ビートがボッサボッサしていないだけに、コンテンポラリージャズのボーカル作品のようにも聞こえます。
 リオデジャネイロ中心のサンバ、ボッサ系とは一味違う、南米フォルクローレやクラシックの色合いに、さらに現代的な感覚を加えた新しい音作り。
 冒頭から、Milton Nascimento的なような、そうでもないような、ピアノ、ホーン、ボイスが絡み合いながら、さまざまな表情に景色が移り変わっていくような複雑でダイナミックな音作り。
 さらにはギターとフルートが主導するバラード。
 こちらも同様にさまざまな楽器とコーラスが絡み合いながらのドラマチックな音の流れ。
 さらにはヒタヒタと迫ってくるようなビート感~疾走と浮遊が交錯する、一時期のPat Methney Groupを想起するような場面もあり、これまたドラマチックな演奏。
 あるいは、あくまでナチュラルなサウンドの中に電子音が鳴ったり、素朴なボーカルと優雅で幻想的なハープが絡んでみたりたり・・・
 などなど、いずれも凝ったアレンジ、構成の楽曲が並びます。
 要所に水の音などをSEに加えながら、何かしら自然の状況を描写、表現しようとしているのでしょう。
 そのあたりも現代フォルクローレ通じる空気感。
 全曲、リーダーのオリジナル、変幻自在なメロディと音作り。
 締めはAndre Mehmariを加えて、複雑なアレンジ、強烈なユニゾンが続く、クラシカルなムードのおもちゃ箱をひっくり返したような演奏。
 この頃のAndre Mehmariらしい音といえばその通り。
 あえてカテゴライズするとすればポップス、MPBになるのだと思いますが、そう位置付けてしまうにはあまりにも複雑で新しい、ブラジル発、とてもクリエイティブな音楽。
 もちろんそこはかとない郷愁感とわかりやすさはお土地柄。
 とてもカッコいいと思います。




posted by H.A.