“Quercus” (2006) June Tabor, Iain Ballamy, Huw Warren
June Tabor (voice) Iain Ballamy (tenor, soprano saxophones) Huw Warren (piano)
イギリスのボーカリストJune TaborのECM初作品。
詳細についての情報は持っていませんが、1960年代から活動している大ベテランのフォーク?の人でしょうか?
ピアノ、管とのトリオの編成、ECMでのそれ系の人といえば、同じくイギリスのNorma Winstonの諸作、あるいは近年ではSusanne Abbuehl諸作を想起します。
それらに近いテイスト、妖しさを少々薄めて、ストレートにフォーク寄りの音の作り、といったところでしょうか。
ピアノ、サックスの人もイギリスの人。
派手な演奏はありませんが、ECMならではの美しい音。
ピアノはクラシックの香り、ヨーロッパっぽさは濃厚ですが、明るい質感は少々アメリカ的でもあり、カッチリと律儀に弾く感じ。
サックスはコンテンポラリー系に多いクール系、こちらも素直にサラリと吹くタイプ。
Thomas Strønenとのバンド”Food”でECM制作しており、フリー系の志向もある人なのかもしれませんが、オーソドックスな質感。
“Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)なColtrane、あるいはECMのCharles Lloydをもう少しバイタルにした感じでしょうか。
そんなECM的ではあるものの、カッチリとした音を背景にして、ボイスは低く沈んだハスキー系、確かに英米のフォークシンガーにいそうな感じの声と節回し。
ヨーロッパとアメリカの中間の雰囲気、それがイギリスっぽいといえばその通り。
同じフォーク系でも北欧系だとエキゾチシズムを感じますが、さすがにポップミュージック、フォークミュージックの総本山のイギリス系、耳慣れた音流れは自然に耳に馴染みます。
そこに緩やかなECMマジック、静謐さ透明感が加わると、やはり特別な質感です。
ECMの真骨頂、ルバートっぽいスローバラード“Near But Far Away”なんて最高です。
わかりやすいのだけども、どこか遠くを眺めているような、遠い所から聞こえてくるような、懐かしいような、切ないような・・・
最初から最後まで、寂寥感と郷愁感が漂う美しい音。
本作、発表は2013年ですが、録音は2006年。
なぜ止まっていたのかはわかりませんが、十分にECMサウンド、仕上がりも上々です。
