“Coup De Tête” (1979-1981) Kip Hanrahan
Kip Hanrahan (Percussion, Synthesizer, Vocals)
Carla Bley (Piano, Vocals) Orlando Di Girolamo (Accordion)
Arto Lindsay, Bern Nix, Fred Frith, George Naha (Electric Guitar)
Bill Laswell, Jamaaladeen Tacuma (Electric Bass) Cecil McBee (Bass)
Anton Fier, Ignacio Berroa, Victor Lewis (Drums)
Nicky Marrero (Bongos) Angel Perez, Carlos Mestre, Gene Golden, Jerry Gonzalez Daniel Ponce (Congas, Percussion) Jerry Gonzalez, Daniel Ponce, Nicky Marrero (Percussion) Daniel Ponce, Gene Golden, Jerry Gonzalez (Shekere) Dom Um Romao (Surdo, Agogô)
Chico Freeman (Clarinet, Tenor Sax) Carlos Ward, George Cartwright (Alto Sax) David Liebman (Soprano Sax) Byard Lancaster, John Stubblefield, Teo Macero (Tenor Sax) Michael Mantler (Trumpet) George Cartwright, Byard Lancaster, George Cartwright (Flutes) John Clark (French Horn) Billy Bang (Violin) Lisa Herman (Vocals)

Coup De Tete
Kip Hanrahan
Yellowbird
2010-07-13
キップ・ハンラハン

 ニューヨークアンダーグランド、アフロキューバンなコンテンポラリーミュージックのKip Hanrahan、第一作。
 ジャズ、ファンク、ロック、ブルース、フォーク、アフロ、キューバン、その他諸々、てんこ盛りのフュージョンミュージック。
 人種のるつぼ云々の土地柄通り、全部突っ込んで混ぜ合わせてみました、それも薄暗い地下室に危ない人たちが集まって・・・そんな感じの音。
 発表と同時に聞いたわけではなく、“A Thousand Nights And A Night: Red Nights” (1996)のDon Pullenの凄まじい演奏、あるいは後の作品に参加するDavid Murrayからさかのぼって聞いた人。
 もちろんジャズではないのだけども、ジャズ系、ファンク系の恐ろし気なメンバーの名前を眺めるだけどもその凄みが伝わってきます。
 冒頭から乾いたパーカッションの響き、ドスの効いたファンクなベースラインを背景にした、囁くように緩く歌う妖しい男声、女声。
 後にあのCreamのJack Bruce、ジャズボーカリストCarmen Lundyを求めた理由がよくわかります。
 さらに、時にクールに、時にクダを巻くようななサックスに、遠くから響いてくるようなフルート、狂気の漂うギター、バイオリン・・・
 ピアノが入るのはCarla Bleyが参加した一曲のみで、基本的にはピアノレスな音、ギターの多用が、初期の作品のクールな色合い、あるいはロック色、ポップ色の強さにも繋がっているように思います。
 それでもサックスが鳴り出すと一気にハードコアなジャズのムード・・・ 
 もちろん楽曲は、うらぶれた街角のやるせなさが漂う、Kip Hanrahanのメロディ。
 ほどほどポップでほどほどソウル、猥雑な感じながらなぜかオシャレでクールな空気感。
 硬派と軟派が交錯する感じは、アメリカ版あるいはアフロキューバンなThe Style Councilってな感じがしないでもありません。
 が、ポップスと片づけてしまうには、あまりにも凝ったアレンジに、充実したインプロビゼーションとインタープレーに、一部のアバンギャルドで激しい音。
 ここからメンバーが入れ替わりながら完成度を増していきますが、この時点でその世界観は出来上がっています。
 それは約30年後の最近作、“At Home in Anger” (2007-2011)まで変わっていないように思います。
 もし、トゲやザラつきを削ってポップさを前面に出していけば、The Style CouncilやSadeのような存在になったのかもしれません。
 後の“Vertical's Currency” (1984)でそれにチャレンジしたのかもしれません。
 あるいは、プロデューサーとして素晴らしい作品を制作したAstor Piazzollaと長く活動を共にできたならば、または、誰かしら彼に続く才能に出会っていたら、新世代のTeo Macero、あるいはアメリカのManfred Eicherになっていたかもしれません。
 が、なんだかんだでさらにマニアックに、アンダーグラウンドに潜っていくのも、この人のカッコよさ。
 まずはスーパープロデューサーのスーパーアーティストとしてのカッコいいデビュー作。
 とても妖しくて危なくて、クールです。




 posted by H.A.