“Komitas/Gurdjieff/Mompou: Moderato Cantablie” (2013) Anja Lechner, Fracois Couturier
Anja Lechner (cello) Fracois Couturier (piano)
 


 ドイツのチェリストAnja Lechner、フランスのピアニストFrançois CouturierのDuo作品、本作はクラシック寄りのECM New Seriesレーベルから。
 お二人は“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)、“Tarkovsky Quartet” (2011)などで共演済。
 二人とも他のアーティストとの共演も多く、現代のECMのクラシック寄りの作品には御用達の人。
 この二人で、トルコのKomitas、アルメニアGurdjieff、スペイン?のMompouといった、思想家&音楽家?の楽曲を演奏したアルバム。
 企画から予想されるそのままの敬虔な音、静謐な空間に響くチェロとピアノの絡み合い。
 同じような企画、編成では“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)Anja Lechner, Vassilis Tsabropoulos、あるいはチェロとピアノのDuoでは“The River” (Jun.1996) Ketil Bjørnstad, David Darlingなど、定番企画のひとつ。
 近い感じではあるのですが、わかりやすい楽曲、演奏が揃っています。
 Gurdjieff3曲、Komitas1曲、Mompou3曲にFracois Couturier3曲。
 どれもゆったりとしたテンポ、悲し気なメロディですが、“Chants, Hymns And Dances”(Dec.2003)と比べると、重々しさ深刻さが薄く、軽快なイメージ。
 楽曲の影響が大きいのでしょう。
 さらに、同じくクラシック色が強いヨーロピアンジャズピアニストでも、タメとグルーヴが効き、感情的なモノも前に出るVassilis Tsabropoulosに対して、あくまでクールで淡々としたFracois Couturierといった違いでしょうか。
 Gurdjieff、Komitasの楽曲は厳かな表情。
 対してMompouの楽曲は古典ながらなぜか現代のポピュラーミュージック的な印象。
 Keith Jarrettのソロピアノで出てきそう場面もちらほら。
 たっぷりとリバーブが効いた美しい音、少し線が細めな感じがクールなピアノが映える楽曲が並びます。
 無音、空白の空間の中、あるいは静かにチェロが鳴る空間の中、ピアノの高音が心地よく響きます。
 あるいは、わかりやすいメロディ、コードを背景にすると、頻繁にスケールアウトするフレーズの美しさが際立ちます。
 Anja Lechnerのチェロはいつもながらに表情豊か。
 前後上下左右、強弱長短、自在に伸び縮みする音と優しげな表情。
 Fracois Couturierの沈痛なメロディに乗った“Voyage"などは、今にも泣きだしそうな悲し気な音、昂ぶる感情が乗ったような素晴らしい演奏。
 などなど含めて、アルバムとしての統一感を保ちながらもさまざまな表情の楽曲。
 クラシックと静かなフリージャズな空気感が交錯する、かつ、わかりやすい、素晴らしい演奏が続きます。
 クラシカルで精神的で宗教的で・・・だけではない、ジャズの耳で聞いてもとても心地よく聞ける音。
 Anja Lechner、あるいはFracois Couturierの作品を聞くならば、意外にこのアルバムからがわかりやすくていいのかもしれません。
 俗な私が知る限り・・・




posted by H.A.