“Tarkovsky Quartet” (2011) François Couturier
François Couturier (Piano)
Jean-Louis Matinier (Accordion) Anja Lechner (Cello) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)
フランスのピアニストFrançois Couturierのロシアの映画監督Andrei Tarkovskyへのオマージュバンド。
オマージュ作品自体は先に“Nostalghia- Song For Tarkovsky” (2005)がありますが、そのメンバーでTarkovskyを冠したバンドとしたようです。
前作に当たるソロピアノ作品も“Un jour si blanc” (2008)もTarkovsky オマージュ色は強く、その思い入れたるや・・・本作もそうなのでしょう。
先のカルテット作、ソロ作と同様に、静かながら陰影に富んだ音。
無音、空白の時間が目立つ空間に、四人が発する静謐で繊細な音が絡み合う音の流れ。
とても美しく悲しげなメロディと、広い空間に響く透明度の高いピアノの音。
多用されるスケールアウト、不協和音までが美しく聞こえるこの人ならではの音使い。
静かに背景を付けるアコーディオンのノスタルジックな響き。
強烈な陰影をつけるチェロ。
思い出したようにフロントに立ちリードするサックスがアクセント・・・
全てゆったりとしたテンポ。
強い感情の起伏もなくなく、あくまでクールに淡々と過ぎていく時間。
前作“Nostalghia” (2005)に比べるとメロディ、コードが明確な曲が多く、よりわかりやすく、さらに全体的に丸く穏やかに、明るくなっているように思います。
中盤以降に少々の毒気はありますが、フリージャズの面持ちは強くありません。
難解さ、不思議感は少々薄らぎましたが、それでいて十二分にアーティスティックな時間。
フランス勢を中心に、チェリストはドイツ人。
静謐で悲し気、沈痛な感じもあるのですが、なぜか暗かったり、絶望的だったりはしません。
フレンチ中心のバンドゆえ、あるいは現代の空気感ゆえでしょうか?
白い壁、柔らかな明かりがある、人気の少ない現代美術の展示会が似合いそうです。
Tarkovsky的かどうかについては他の人にお任せしますが、休日の午前~午後あたりにピッタリ合う音。
穏やかで上質、かつ非日常的な時間が過ぎていくはず。
たぶん。
posted by H.A.