“Music for a While” (2001,2002) François Couturier, Jean-Louis Matinier, Jean-Marc Larché
François Couturier (Piano) Jean-Louis Matinier (Accordion) Jean-Marc Larché (Soprano Saxophone)
フランスのピアニストFrançois Couturier、ECMで“Nostalghia - Song For Tarkovsky” (2005)を制作したTarkovsky Quartetから、チェリストが抜けたトリオ編成での作品。
名前からして全員フランス人、レーベルもフランスから。
ECMではクラシック色が強い色合い、徹底してロシアの映画監督Andrei Tarkovskyへのオマージュですが、その前はどうだったのか気になるところ。
クラシック成分はほどほど、不思議感120%のフリージャズ。
冒頭曲”Ouverture: Mozart au paradis”(楽園のモーツアルト?)からいきなり美しい高音のピアノの不思議な音階。
妖し気な空気感の中、不思議な三者の絡み合い。
ECM作品ではあまり前に出ないサックスを含めて、ECMではパイプオルガンのように聞こえたアコーディオンもここではやんちゃ系、ピアノも美しさはそのまま、音が強い感じ。
ビートが定まった時間は長いのですが、連続する不協和音、聞き慣れないコードの流れの中、不安感を煽るような三者のインプロビゼーションが続きます。
ソプラノサックスが牧歌的に響く場面があったり、おどけた表情の演奏があったりもしますが、全編を通じて不思議、不安感は消えません。
それでも暗かったり絶望的だったりはしないのは、フレンチバンドゆえの色合いでしょうか?
激烈に叫んだりする場面もほとんどありません。
また、最後に冒頭曲をリフレインしたバラード演奏、その名も”Epilogue:Requiem”が収められています。
ピキピキパキパキした美しいピアノの音、François Couturierのカッコよさが凝縮されたような演奏。
ってな感じで、入口と出口は明確ですが、間は迷宮の連続。
少々手ごわい、非日常的迷宮型フリージャズ、静謐版。
この後、チェリストAnja Lechnerを加えECMでの制作を開始、これまた不思議感120%、とても静かな“Nostalghia-Song For Tarkovsky” (2005)へと続きます。
個々のアーティストの演奏自体はあまり変わらないのかもしれませんが、アルバムのイメージは全く異なります。
ECMマジックはこの期も健在のようですね。
posted by H.A.