“Theme to the Gaurdian” (1974) Bill Connors
Bill Connors (guitar)

Theme To The Gaurdian
Universal Music International Ltda.
2000-11-16


 Bill Connorsのアコースティックギター、ソロ作品。
 ECMの縁も深いReturn to Foreverの“Hymn of the Seventh Galaxy” (1973)に参加し、脱退した後のECM作品。
 なんだか複雑な流れですが、ECMでも“Love, Love” (1973) Julian Priester Pepo Mtotoあたりでやっていたハードフュージョンな演奏とは全く違う静謐な世界。
 バッキングをオーバーダビングした形ですが、アコースティックギター一色。
 ECMのアコースティックギターといえばRalph Towner
 確かに音自体はいかにもECMの録音で似た感じですが、空気感は異なります。
 1970年代のRalph Townerが激しさ、厳しさと優しさが交錯するイメージだとすれば、本作は静謐でピリピリした感じ、線が細くてより繊細な感じ。
 さらに終始穏やか。
 もちろんECM特有の低めの温度感ですが、Ralph Townerほどの冷たさ、鋭さはありません。
 激しい場面は少なく、むしろ少し寂し気な空気感ですが、後の名作“Of Mist and Melting” (1977)の雰囲気、ヒタヒタと迫ってくるようなビート感が本作にもあります。
 あのビートは、それに参加していたJack Dejohnetteの真骨頂なだけでなく、Bill Connorsの色合いなのでしょうね。
 スパニッシュな感じの音の流れもあわせて、ヒタヒタ、ジワジワと迫ってくる緊張感。
 本人のオリジナル曲は哀感漂うメロディ揃い。
 シングルトーンを中心としたインプロビゼーションもとてもメロディアスで切なげなフレージングが映える音の流れ。
 それでもさすがにアメリカン、哀感はあっても、どこかフォーキーでカラッとしています。
 それらあわせて、ほどほど穏やかな淡い感じの緊張感。
 次の名作“Of Mist and Melting” (1977)は、参加メンバーの色合いも加わり、寒風吹きすさぶような激しさが印象に残りますが、本作はあくまで穏やか。
 柔らかな空気感の中、微かな寂寥感。
 ちょうどジャケットのポートレートのような音です。
 これはジワジワとくる隠れた名作でしょう。




posted by H.A.