“Birdwatching” (2015) Anat Fort
Anat Fort (piano)
Gary Wang (bass) Roland Schneider (drums)
Gianluigi Trovesi (bass clarinette)
 
Birdwatching
Anat Fort Trio & Gia
Ecm
2016-02-19
アナト フォート

 イスラエル出身のピアニストAnat Fort、ECM第三弾。
 前作“And If” (2010)のトリオにイタリア人クラリネット奏者が加わる編成。
 編成もさることながら、前作とは少々異質なムード。 
 Gianluigi Trovesi、ジャズの人だと思うのですが、”Vaghissimo Ritratto”(2007)などのECM参加諸作を聞く限り、穏やかで上品なアバンギャルダー、あるいはクラシック~現代音楽寄りの音の人(?)だと思いますので、そんな色合いの作品にしようと思ったのかもしれません。
 結果としては、ここまでの彼女の作風と、ECMのレーベルカラーがとてもいい感じでバランスした、素晴らしいアルバム。
 ここまでの諸作に比べて沈んだ感じ、妖しさ、深刻さが増幅。
 全曲リーダーのオリジナル曲、淡くて優しいメロディは相変わらずなのですが、哀感が強くなるとともに、抽象的な音の流れ、フリージャズな時間が増えているように思います。
 特に前半はそんな感じ。
 が、中盤以降はとてもメロディアスでドラマチック。
 ここまでの作品にはあった軽さが薄くなり、陰影、そしてドラマチックさが強くなってきました。
 いい感じで変わったなあと思います。
 冒頭のソロピアノ”First Rays”は美しくて沈んだ感じがとてもECMな感じだし、中盤の組曲風“Song of the Phoenix”は胸が締め付けられるように悲しくドラマチック。
 続く得意?のワルツの”Murmuration”なども、“Peel” (1998,1999)の冒頭曲とは異質な深みと陰影を感じます。
 全編通じてそこはかとなく漂う郷愁感、寂寥感・・・
 などなど、この人の穏やかさ優しさとECM的な妖しさ、深刻さのバランスが取れた名曲、名演が並びます。
 そんな素晴らしいバランス、陰影と深みのある空気感なので、ピアノの弾き方がどうとかは些末な話で気にならなくなります。
 これなら1970年代からのECM好き、あるいはマニアな人も満足するんじゃないかな?どうだろ?
 “Birdwatching”ってな平和でのどかなタイトルは少々ミスマッチ。
 ジャケットのポートレートの雰囲気がピッタリくる音。
 もし、この人の薄味さ、普通っぽさゆえに避けていた人(私?)がいるならば、先入観は捨てて聞いてみましょう。
 知る人ぞ知る大名作になる予感。
 こういったのがあるから、なかなかECMから抜けられないなあ・・・
 
 


posted by H.A.