“And If” (2010) Anat Fort
Anat Fort (piano)
Gary Wang (bass) Roland Schneider (drums)
Paul Motianの逝去と、制作、発表のタイミングの関係はわかりませんが、彼へのオマージュでもあるのでしょう。
冒頭と最後の曲名は”Paul Motian”。
いかにもPaul Motian、いかにもECMな、スローでのフリービート、ルバートでのスローバラード、2バージョン。
とても悲し気でハードボイルド。
いかにも・・・
二曲目かからビートが入るといつものAnat Fort。
というか、前作“A Long Story” (2007)よりも明るい“Peel” (1998,1999)に近い感じでしょうか。
少し遅れ気味に音を置く感じは薄くなったままながら、穏やかにどこまでも続いていく感じ、その中で明後日の方向に動いていく感じが戻ってきました。
ECM的な少し沈んだ空気感、悲しげな表情、妖しさ、緊張感が強い場面はありますが、あくまで明るく穏やかで優し気。
いかにも女性的な空気感。
いかにも女性的な空気感。
興奮や妖しさを求める向きには物足らないのかもしれませんが、穏やかに流れていく音はとてもいい感じ。
一聴、平和なようでなんだか複雑で、少しだけひねくれている感じがあるのも奥が深そうでいい感じ。
それがこの人の個性、Eicherさんが買っているところなのでしょうかね。
本作の録音は前作とは違って、ECMのホームグランド、オスロのRainbow Studio、プロデューサーはManfred Eicherのみ。
が、逆に、明るく穏やかでわかりやすい質感は、ECMのイメージとは異質な感じ。
この人なりのポジションが確立しましたかね。
posted by H.A.