“Saburi” (2010) Cyminology
Cymin Samawatie (vocal) Benedikt Jahnel (piano) Ralf Schwarz (bass) Ketan Bhatti (drums, percussion)
シミノロジー ドイツの中近東系エキゾチックジャズバンドCyminologyのECM第ニ作。
基本的には前作“As Ney” (2008)と同様にしっとりした質感。
が、ビート感は少しだけ強め。
敬虔なムードは減少し、ジャズ的なムードが強くなっているかもしれません、
エキゾチシズムも少々抑えられた感じがしますが、それは単にボイスが前に出る場面が相対的に少なめ、ピアノが前面に出る場面が少し多いだけなのかもしれません。
エコーがたっぷり聞いたとても美しいピアノトリオの演奏の場面が目立ちます。
流麗だけど、時折現れるスケールからずれたような高音が逆に美しい、漂うような繊細な音の流れ。
静かで余白の多い空間に残る響きの美しいこと。
メロディはいつもの不思議な寂寥感が漂う中近東なエキゾチック系ですが、スキャットで歌われる場面もちらほら。
ペルシャ語の聞き慣れない響きよりも耳に馴染みやすいのかもしれません。
その分妖しさが少なくなっているのかもしれませんが、慣れていない人にとってはこのくらいのバランスの方がよいかもしれません。
全編悲しげですが、優しげにも聞こえます。
俗っぽさもある“Bemun” (2006)と比べてみると、さすがにECM制作。
ピアノは遠くで鳴っているように聞こえるし、ボーカルもあくまでしっとりとした透明度の高い、それでいて生々しい声。
時折の無音、あるいはベースだけを背景にした空間に響く声の清々しいこと。
派手さが抑えられた上品で上質、深遠な感じの音。
どこか浮世離れした遠いところに連れて行ってくれそうな感じはどの作品も同様ですが、このくらいの現実感とのバランスがいい感じ。
次作、ヴィオラを加えさらに格調高い“Phoenix” (2014)へと続きます。
posted by H.A.