“The Carnegie Hall Concert” (Sep.26.2005) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
 
Carnegie Hall Concert
Keith Jarrett
Ecm Records
2006-09-26
キース ジャレット

 Keith Jarrett、“The Melody At Night, With You” (1998)で病床から復帰し、“Radiance” (2002)に続くソロコンサート。
 本作も前作に続き10分以内の短めの演奏集、抽象的、現代音楽的な演奏が中心。
 “La Scala” (Feb.1995)ようなドラマチックな展開を期待してしまうのですが、そうはなりません。
 以降の作品を眺めても“Radiance”からは、21世紀型のソロピアノのスタイルに遷移したようにも思います。

 冒頭から抽象的な演奏の連続。
 特に前半は、少なくともポップミュージック、ジャズ的な意味でのメロディアスな演奏ではなく、現代音楽的な音の流れ、あるいはヘビーなビート感が目立ちます。
 Part IIIでようやくセンチメンタルなメロディの漂うような演奏が登場しますが、これも少し重いムード、発展させることなく短く終わり、Part IVのぶっ飛んだフリーの展開へと続きます。
 さらに重々しく始まるPart Vの中盤から美しいメロディが見え隠れし始め、ドラマチックな展開になるか・・・?と思わせながら大きく盛り上がることなく、淡く悲し気な空気を残したまま終了、再びぶっ飛んだフリーなPart VIが始まります。
 中盤、Part VIIに”Let It Be”っぽいフォークロックな展開が登場、続くPart VIIIでセンチメンタルなメロディがようやく奏でられ、静かながら胸に迫るような演奏。
 “La Scala”にもあったどこか懐かし気な美しいメロディ。
 後の名作“January” (2008) Marcin Wasilewskiなどは、“La Scala”、あるいはこのあたりからの影響が強いのかな、と思ったり。
 さらに抽象的で激しいPart IXに続いて、締めのPart Xは祈るような敬虔なムード、シンプルなリフをベースとした、熱は高くはないものの、かつてのゴスペルチックな演奏。
 場面々をとらえれば、紛うことなき1970年代から続くKeith Jarrettのピアノミュージック。
 抽象的、離散的な演奏ばかりではありませんし、かつての演奏を髣髴とするような場面も多々ありますが、展開の予想はできません。
 その時々に降りてきたモノを音に変えていくスタイルも変わっていないのだと思いますが、連続するインプロビゼーションの中から美しいメロディを生みだす、あるいはそれに到達する“La Scala”のようなやり方はあまり前面には出ません。
 Part VIII~Part Xがそのゴールに当たるのかもしれませんが、演奏が分断されていることもあり、長編映画を見ていた感覚の“La Scala”に対して、短編小説を読むような本作。
 大衆小説、純文学、前衛小説が交錯するようなステージ。

 そして、三分以上続く拍手の後に始まるアンコールは大衆小説のオンパレード。
 既成?の美しい楽曲“The Good America”、さらにあの”Mon Coeur Est Rouge(Paint My Heart Red)"、なんと “My Song”・・・以降も続く演奏。
 アンコールというよりも第二部。
 難解だとか、流れが見えないとか、なんとか言わずにKeith Jarrettの感性の動きを感じるのがよいのでしょうね。
 私はまだそこまで大人には成れていませんが。
 それでもPart VIII、Part Xなんて美曲、直接的に胸に迫るような演奏が潜んでいるので聞き逃せないことは、ファンゆえの悲しい性でしょうか・・・




posted by H.A.