“Radiance” (2002) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
 
Radiance
Keith Jarrett
Ecm Records
2005-05-03
キース ジャレット

 Keith Jarrett、“The Melody At Night, With You” (1998)で療養から復帰し、“Whisper Not” (Jul.1999)・・・など、毎年トリオ作品を録音する中、久々のソロピアノ。
 大阪、東京での録音。
 “La Scala” (Feb.1995)で新しいスタイルを完成させたかと思われる後のピアノインプロビゼーション。
 ここから21世紀型 Keith Jarrettのソロピアノのスタイルが始まっています。
 かつての作品では同じく日本でのステージ"Dark Intervals" (Apl.1987)的な展開。
 15年の歳月が流れていますが、そこで試行していた展開を再び始めたと考えるべきなのか、長尺な連続する演奏の中からピークを作っていく形ではなく、短い演奏を積み上げていく形で音楽を組み立てる方法に変えたのか・・・
 その他含めてどんな意図、事情でスタイルを変えたのかはわかりません。
 “The Köln Concert” (Jan.1975)が長編の大衆小説、“La Scala” (Feb.1995)が長編の純文学だとすれば、本作以降は、短編の大衆小説、純文学、抽象的な散文的なモノも入り混じる短編小説集、といった感じ。
 演奏の切れ味は鋭く、凄まじい演奏が多いのですが、抽象的な時間が長くなっています。
 Part1~13は大阪のステージ全体、Part14,15は東京の冒頭、Part16,17は東京のエンディング。

 冒頭Part1は鋭い切れ味、静かなフリージャズ的な音。
 美しいメロディが見え隠れする場面はありますが、目まぐるしく次のべ面へと切り替わっていきます。
 Part2でビートは定まりますが、激しいクラシック的な展開。
 Part3で落ち着き、穏やかでフォーキーなバラード。
 Part4、Part5は再びフリー~現代音楽的な抽象的な音の流れ。
 激しい演奏が続きます。
 Part6は物悲しげな表情、少し重めの今にも止まりそうなスローバラード。
 Part7はまたまた激しいフリーを経て、Part8はフォーキーでメロディアスな演奏。
 Part9で漂うようなバラードがようやく登場しますが、綿々としたというよりも淡々とした表情。
 Part10は揺れ動きながら静かに音が散りばめられていくような音使い。
 メロディが見え隠れするような展開を経ながら、崩れ落ちそうになりながら、終盤に音がまとまり、穏やかな表情~波のようなリフレインで締め、“La Scala”などのステージ全体をコンパクトにまとめたような演奏。
 短いインタールード的なPart11から、少しヘビーなリフ、高速なパッセージが映えるPart12でステージは幕。
 アンコールPart13はとても繊細音使いの美しいバラード。

 東京のステージPart14も抽象的な演奏からスタート。 
 まとまりそうでまとまらない、穏やかになりそうそうでまた激しくなる音の流れ。
 激しく攻撃的な音のまま終了します。
 その流れを引き継ぎながら、その激しさ和らげるかのようなバラードPart15。
 重厚で厳しい表情から始まりますが、徐々に美しいメロディが定まり、優しい表情へと変わっていき、静かに幕。
 こちらはそれぞれ長尺な演奏、“La Scala”などかつての前後半の二部構成の一部のような構成。
 東京のステージの終盤に当たるPart16は穏やかな短いバラード。
 続く長尺なPart17は、波が押し寄せるような、グラデーションをつけながら微妙に変わっていく音使い、大阪のPart10と似た展開からスタート。
 穏やかだったPart10と比べると激しい演奏から、Part12に近い重いビートの演奏で幕。

 長尺な“La Scala”などと違って曲が断片化し、抽象的な展開も多いため、グラデーションをつけながら終盤のピークを目指す印象は薄いのですが、おそらく大阪のステージのピークはPart10。
 そこに向けて何かを繋ぎ、組み立てながらイメージを作っていっていることは感じられます。
 そして熱を冷ますようなメロディアスなアンコール。
 かつての演奏と構成は変われど、目指しているところ、やはりKeith Jarrettのソロピアノの本質は変わらないのでしょう。




posted by H.A.