“The Melody At Night, With You” (1998) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
キース ジャレット Keith Jarrett、療養からの復帰第一作。
この前の作品が“La Scala” (Feb.1995), “Tokyo '96” (Mar.1996), “A Multitude of Angels” (Oct.1996)。
“La Scala”で新しいソロピアノの形を完成させたとも思われる後の療養。
とても静かなスタンダード曲の演奏。
とても穏やかな音。
冒頭の“I Loves You, Porgy”。
ただただ、淡々とメロディ+αを奏でるのみ。
微妙にタメが入り、訥々とした印象の音の流れ。
ここまでのKeith Jarrettにはなかった音の置き方。
長年のファンからすれば何が起こったのかわからない不思議な音。
続く”I Got It Bad”などでは饒舌なインプロビゼーションも展開され、決してリハビリの途上なわけばかりではなさそうです。
では、Keith Jarrettはこの演奏で何を表現しようとしたのか?
さらに後の同じ空気感のCharlie HadenとのDuo”Jasmine”, “Last Dance” (2007)を含めて繰り返し聞いても、おおよそ二十年後の今の耳で聞き直してみても適当な言葉が見つかりません。
ただただ、慈しむような優しいピアノの音が流れるだけ。
曲が進むにつれ、穏やかになる気持ち。
単に原曲の素晴らしさだけではない何かがある、特別な音であるように感じます。
これに類するような演奏は他にはないと思います。
あの“Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962) John Coltraneなととも全く質感の異なる優しく穏やかな音。
最高の癒しの音。
いつかこの時のKeith Jarrettが考えたこと、やりたかったことが、しっくりとわかる日が来るのかもしれません。
posted by H.A.