“Vienna Concert” (Jul.1991) Keith Jarrett
Keith Jarrett (piano)
Keith Jarrett、1990年代以降のソロピアノ、私が知る限り。
本作は“The Köln Concert”(Jan.1975)に代表される1970年代の作品とは作風が変わった“Paris Concert” (1988)から三年後の作品。
本作は“The Köln Concert”(Jan.1975)に代表される1970年代の作品とは作風が変わった“Paris Concert” (1988)から三年後の作品。
スタンダーズでは“The Cure” (Apl.1990)、”Bye Bye Blackbird” (Oct.1991)の間。
“Concerts:Bregenz” (1981)からの1980代型ソロピアノと同様に、甘さや興奮よりも、上品で高貴な感じの音の流れ。
冒頭、クラシック的でもあるし、フォーク的でもあるようなゆったりとしたテンポの美しいメロディからスタート。
その流れが続くこと十数分、ゆったりとしたテンポはそのままに重厚で思索的な音の流れに変わります。
メロディアスにセンチメンタルになりそうでなりきらない”Concerts:Bregenz”, “Concerts:Munchen” (May.28.1981/Jun.2.1981)、あるいは“Paris Concert” (1988)以降の特徴的な展開。
徐々にポップミュージック、ジャズからの距離を取ってきているようにも感じます。
メロディアスさが薄くなり、フリーインプロビゼーション~現代音楽的な抽象的な展開も長い時間を占めます。
その後、32分前後、かつてのゴスペルチックな展開になるかと思いきや、長くは続かず、テンポを抑えて、穏やかに慈しむような前向きな展開、かつてとは別の形のドラマチックな流れの中、一部は終了します。
第二部は漂うような音、日本的な音階、琴を模したかのような音からスタート。
とても悲し気な音の流れ。
かつてであれば強烈に加速しながら激しいフレーズが出てきそうな場面でもそうはならず、思索的でもがくような音使いが続きます。
中盤からテンポを落とすと祈るような音の流れ。
徐々に激しさを増しますがピークは作らず、とても悲し気、達観したようなエンディングへ向かいます。
最後も琴のような音使い。
長尺な25分超の間、共通したイメージがKeith Jarrettの中では流れていて、新しいメロディを模索していたようにも感じます。
“The Köln Concert”(Jan.1975)のようなわかりやすい展開ではなく、抽象的な音の場面が増え、重厚で深遠なムード。
その間に散りばめられた美しいメロディ、ドラマチックな構成。
1970年代、”The Köln Concert”前後のソロピアノは、一般受けもする素晴らしい大衆小説のようなイメージだったとすれば、1980年代の諸作は純文学の大作を目指して試行錯誤を繰り返しているようにも感じます。
様式、印象は変われど、素晴らしい音楽であることには変わりはありません。
posted by H.A.