“Like Song Like Weather” (1998) Norma Winstone & John Taylor
Norma Winstone (Voice) John Taylor (Piano)
 
Like Song Like Weather
Norma Winstone
Enodoc
1998-06-29
ノーマ ウインストン
ジョン テイラー


 Norma Winstone, John Taylor夫妻のDuo作品。
 アバンギャルドではないけど、ちょっと普通のジャズからは距離があるイメージのお二人ですが、本作は紛うことなきジャズです。
 半数がジャズスタンダード、残りが盟友Kenny Wheeler, Tony Coe, Carla Bley, Steve Swallowなどの曲者ジャズの皆さま方の楽曲。
 素直でアメリカンなジャズにはなりません。
 が、John Taylorのジャズピアニストぶりは、まあ普通に想像できるとしても、Norma Winstoneが意外にも素直にジャズを歌っています。
 ジャズ的な歌唱なのかどうかはわかりませんが、しっとりとした質感がピッタリはまっています。
 John Taylorの硬質で透明度の高い美しい音、クラシックが香る格調高いピアノと、上品でしっとりとしたボイスの組み合わせは極上。
 しっとり、と書いてしまうと湿った感じのニュアンスですが、乾いているような感じもあって、微妙な湿度感のボイス。
 さらに、ハスキーなのか澄んでいるのか、太いのか細いのか、高いのか低いのか・・・何とも言えない不思議なボイス。
 クールでどこか達観した感じ、寂寥感も強いのですが、これまた暖かな感じもあって・・・
 そんな微妙なボイスで少し沈み込む感じで歌われるジャズ。
 Kenny Wheelerが入ればそのままAzimuthになるのですが、その屈折した感じは薄目、なんだかんだで落ち着いた静かなジャズ。
 後の“Songs and Lullabies” (2002) Fred Hersch & Norma Winstoneと比べると、同じようでこちらの方が沈んだ感じ、ピアノも少々とんがった感じで、それがありきたりの音に留まらないカッコよさ。
 “Azimuth” (Mar.1977) から二十余年、近作の“How It Was Then... Never Again” (1995) Azimuthでは落ち着いた感もありましたが、さらに大人になったような音。
が、枯れた雰囲気はありません。
 “How It Was Then... Never Again”は美しい夜景のジャケットでしたが、本作はこれまたとても美しい夕暮れ。
 そんな穏やかで落ち着いた気分に浸れる、上質、極めつけの一作。
 ほんのちょっとだけ普通と違うような感じなのがいい感じです。




posted by H.A.