“Fasıl” (Mar.2008) Marc Sinan, Julia Hülsmann
Marc Sinan (guitar) Julia Hülsmann (piano)
Marc Muellbauer (double-bass) Heinrich Köbberling (drums, percussion)
Yelena Kuljic (vocals) Lena Thies (viola)
 
Fasil
Marc Sinan
ECM
2009-03-24
マーク シナン 
ジュリア・ハルスマン 


 トルコ、アルメニアをルーツに持つギタリストMarc SinanとドイツのピアニストJulia Hülsmannとの双頭?リーダーアルバム。
 いかにもECM、無国籍でとても静かな妖しい音、女性ボーカルをフィーチャーしたコンテンポラリージャズ作品。
 ギターのMarc Sinanは、アラビアンなのか、スパニッシュなのか、クラシックなのか、なんとも形容しがたい無国籍な質感の寂寥感の強い音。
 あまり前面には出ませんが、時折の中近東的エキゾチックな音が印象的。
 もう一人のリーダー、Julia HülsmannはECM、ACTなどにたくさんの録音のある穏やかなピアニスト、ECMでは二作目。
 ピアノトリオでの“The End Of A Summer” (Mar.2008)と同月の録音。
 曲者ぞろいのECMにあっては癖や妖しさのない珍しいタイプだと思うのですが、本作は他の諸作と少し違います。
 いつものピアノトリオにエキゾチックなアコースティックギター、儚いボイス、ヴィオラが加わって寂寥感の塊のような音。
 楽曲はJulia Hülsmannのオリジナル曲を中心として、メンバー共作の即興的、中近東的な演奏、ほぼ全編がバラード。
 彼女のイメージとはちょっと異なる、少々暗め、寂し気で緊張感も高いメロディ。
 多くの楽曲でフィーチャーされるYelena KuljicはいかにもECMな儚い声。
 “Somewhere Called Home” (1986) Norma Winstone、“So I Write” (1990) Sidsel Endresen、あるいは“Celestial Circle” (2010) Marilyn MazurのJosefine Cronholmのような、乾いた感じの寂寥感。
 加えて怖いくらいの切迫感。
 エキゾチックな感じもあるのですが、ドイツの人のようです。
 そのお三方を中心に展開される強烈な寂寥感、とても静かな無国籍ワールドミュージック的なジャズ。 
 何曲かにフィーチャーされるヴィオラも寂寥感を助長する役回り。
 Julia Hülsmannのピアノは相変わらず穏やかな感じで、強い自己主張はしませんが、要所のスケールアウト、舞い落ちるような高音が美しくて、儚い音。
 ACTでの“Scattering Poems” (2001,2002)のスムースでポップな人とは別人みたいだなあ・・・
 すっかりECMのJulia Hülsmann・・・
 というか、典型的なECM、エキゾチシズム、寂寥感、妖しさが強烈な、静かなコンテンポラリージャズ。

 大名作“Vespers”(2010) Iro Haarlaと似た感じのとても素敵なジャケット。
 あちらは北欧的な航空写真ですが、こちらはどこの国か分からない、夜の曇り空、少し沈んだ感じの美しい航空写真。
 そのポートレートそのままの音です。
 
 
 

posted by H.A.