“The End Of A Summer” (Mar.2008) Julia Hülsmann Trio
Julia Hülsmann (piano)
Marc Muellbauer (double-bass) Heinrich Köbberling (drums)
ドイツのピアニストJulia Hülsmann、ECMでの第一作。
しっとりしたムードの静かなジャズ。
元気で明るいヨーロピアン・コンテンポラリージャズのかつての作品“Scattering Poems” (2001,2002)と同じトリオですが、さすがにECM、そうはなりません。
冒頭から気怠い感じのメロディ。
オーソドックスなようで何かズレたような不思議な感じのコード進行と、微妙にスケールアウトする静かなピアノの微妙な組み合わせの妙。
疾走、グルーヴもできるはずなのに、あくまで穏やかに音を置いておくようなピアノ。
全編そんな感じの淡くて不思議なメロディ、ゆったりとしたテンポの淡々とした音の流れが続きます。
どの曲もコンパクトにまとめられていて、冒険らしい感じ、攻撃的な場面はありません。
甘いメロディが見え隠れする場面は多いのですが、綿々としたバラードや妖しいムードの展開もありません。
中盤でやっとジャンピーな演奏が出てきますが、あくまで上品に抑制された感じ、全体を見ても二曲だけ。
ECMの真骨頂、ルバートでのスローバラードもあるかな?と思いつつも、それらしいのは中盤の短い“Sepia”一曲のみ・・・
・・・ってな感じで、淡くて曖昧な感じで刺激もない音なのですが、つまらないかといえばそうでもなく、繊細な感じ、全編通じて普通のようで少しひねられた感じが奥深そうでついつい聞き入ってしまう不思議なアルバム。
本作はさらに沈んだ寂寥感の強いワールドミュージック的ジャズ“Fasıl” (Mar.2008) Marc Sinan, Julia Hülsmannと同月のセッション。
本作もECMマジックに掛かったJulia Hülsmann・・・なのかな?
別のレーベルからECMに移籍してきた人の一作目は地味になってしまうのが近年まで続く傾向のように思います。
Stefano Bollani然り、Marcin Wasilewski然り、Tigran Hamasyan然り、Avishai Cohen然り、Wolfgang Muthspiel然り、・・・Aaron Parksなんて・・・
この人も例に漏れず。
結果論ですが、わかるような気もします。
posted by H.A.