“Northbound” (2004) Iro Haarla
Iro Haarla (Piano, Harp)
Trygve Seim (Saxophones) Mathias Eick (Trumpet) Uffe Krokfors (Double-Bass) Jon Christensen (Drums)
イロ・ハールラ
フィンランドの女性ピアニストIro Haarla、リーダー作としてはECMでの初作になるのだと思います。
フィンランドの女性ピアニストIro Haarla、リーダー作としてはECMでの初作になるのだと思います。
多くの場面をルバートでのスローバラードで展開する、とても優雅な北欧ジャズ、コンボ作品。
リーダーはこのアルバム時点ですでに中堅~ベテランのようですが、以前の経歴の情報はもっていません。
クラシックっぽさは強くないと思うのですが、ジャズっぽくもない穏やかで優雅なピアノ。
さらにハープと使い分け、いかにもECMの美しく妖しいジャズ。
メンバーはECM御用達の北欧陣。
Trygve Seim、Mathias Eickのノルウェー陣はまだ若手だった時代なのでしょう。
Uffe Krokforsはフィンランド、大御所Jon Christensenはスウェーデン。
スカンジナビア地区混成バンド、いかにもそれらしいひんやりとした、それでいて穏やかな音。
冒頭からECMの真骨頂、ルバートでのスローバラード。
とても優雅なハープの響きと寂寥感の強いホーンの絡み合い。
フワフワとした浮遊感としっとりとした空気。
特別に際立った美メロディがあるわけではありませんが、優し気でどことなく懐かしい感じの音の流れは、Trygve Seim, Mathias Eick、あるいはJocob Young他、近年のECMのノルウェーの人たちの作品のムードと同じ。
さらに周囲の空気が浄化されるような美しい音。
リーダーは派手に弾いたり、突っ走ったりするタイプではないようで、ピアノが前面に出る場面は多くありません。
あくまでアンサンブル中心ですが、とても上品で優雅。
ハープは多用しませんが、それが鳴る瞬間はさらに優雅。
さらにホーン陣はサブトーンたっぷり、寂寥感の塊のような音を出す二人組。
少々フリージャズ、テンション高い系、沈痛系の場面もありますが、ほどほどの時間で、いい感じのアクセント。
そんな演奏が最後まで続きます。
淡くて穏やかな色合いが、北欧をのんびりと旅しているような気分にしてくれる感じ。
タイトルからして、そんな情景を描こうとしているのでしょうね。
とても美しく、穏やかで優しい音。
北欧ジャズというと、一般的にはBill Evans系、あるいはLars Janssonあたりのしっとりとしているようで明るい感じのピアノトリオのイメージが強いのかもしれませんが、こちらの方がもっとそれらしい空気感なのかな、と思ったりします。
とても素敵な北欧旅情ミュージック。
次作“Vespers” (2010)はもっと素敵です。
近年のECM、ひんやりした空気感は維持しつつも、少しテンションを落として、優しく穏やか、淡い音に変わってきているように感じるのですが、その端緒はこの作品あたりなのかなあ?とも思ったりします。
もう少しさかのぼれば、同じく北欧ノルウェーのJan Garbarek、”I Took Up The Runes” (1990)前後、ノルウェー民族音楽路線あたりから徐々に変わってきているようにも感じます。
時代の流れ、世界の空気感の変化、総帥Manfred Eicherさんの感覚の変化もあるのかもしれません。
あるいは、このアルバムのリーダーはフィンランドですが、ノルウェーのアーティストが増えていることも含めて、北欧〜ノルウェーの空気感が強くなっているのかもしれません。
ま、全部はとても聞けないし、好みで選んでいるので、単に私が引っかかるのがそれ系だからなのかもしれませんが・・・
アメリカ系だと“Nothing Ever Was, Anyway” (1997) Marilyn Crispellあたりがその端緒でしょうか。
他に象徴的な作品あったかなあ・・・?
posted by H.A.