“Atmospheres” (2014) Tigran Hamasyan, Arve Henriksen, Eivind Aarset, Jan Bang 
Tigran Hamasyan (piano) Arve Henriksen (trumpet) Eivind Aarset (guitar) Jan Bang (electronics, live sampling)
 
ATMOSPHERES
V/A
ECM
2016-08-31
ティグラン・ハマシヤン

 アルメニア出身のスーパーピアニストTigran Hamasyan のECM第二弾、CD二枚組。
 メンバー4人の共同名義作品なのかもしれません。
 突出した演奏力、エスニック色・・・などなど、以前からあるんだろうなあ、と思っていたこの人のECMへの参画。
 元々強かったクラシック色、Georges I. Gurdjieffへの傾倒、東欧~中東的なエスニック色はピッタリだとしても、激烈色がどうなるのか?興味津々。
 リリース順では前作にあたる”Luys i Luso” (Oct.2014)は、コーラス隊を交えた教会音楽系の作品でしたが、本作は敬虔なムードはそのまま、ジャズ的?編成の作品。
 発表は前後しますが、録音は前作よりも本作の方が先、“Mockroot” (May.2014) の次月の録音のようです。
 メンバーは知る人ぞ知る人選。
 Arve Henriksen は“Kyanos” (2001) Jon Balke & Magnetic North Orchestra、 “Liberetto” (2012) Lars Danielssonなどに参加していた北欧の寂寥感の塊のような人。 
 彼のECMでの作品"Cartography" (2008)にTigran以外の三人の北欧勢は揃っていたので、彼が中心メンバーなのかもしれません。それとは音のイメージは違いますが。 
 Eivind AarsetはNils Petter Molvær の“Khmer” (1996-1997)、“Er” (2005) などに参加しているNils Petter Molværハンドのメンバー、未来的クリエイティブ系。 
 Jan Bang はNils Petter Molvær の“Er”、“Libera Me” (2004) Lars Danielssonなどに参加していた人。
 ECMなのかACTなのか、Nils Petter MolværなのかLars Danielssonなのか、アルメニアなのかドイツなのかノルウェーなのかスウェーデンなのか、中世なのか未来なのか・・・、たった四人なのになんだかすごい集まり。
 ま、どう考えても普通にジャズなどにはなりませんが、ここまでのTigranの作品とも全く違う音。
 というか、同じアーティストの作品とは思えません。

 フリーインプロビゼーションではないのだと思いますが、多くの楽曲がメンバー連名。アルメニアの宗教家?&音楽家Komitasの楽曲が三分の一ほど。
 ECMに移籍する直前の録音“Mockroot” (2014)までは激しい音でしたが、本作はとても静かな環境音楽的な静音ジャズ(最近この言葉、聞きませんね)、いや、ジャズ的でもありません。
 静かなピアノと寂寥感の塊のようなトランペットを中心とした穏やかに漂うような音。
 ギター、電子楽器は控え目な背景の音作りに徹しています。
 ピアノもクラシック的で、明度を落として、遠くから聞こえてくるような音。
 
 CD一枚目、静かに漂うような物悲し気なムードの抽象的な音の流れが続きます。
 Komitasの楽曲になるとメロディがはっきり見え、トランぺットとピアノの漂うような絡み合い。 
 中盤からやっとビートが入り躍動を始めますが、長くは続きません。
 再び音量を落とし、遠くから響くようなピアノと、トランペットが浮遊する静かで物悲しい空気の流れが続きます。
 CD二枚目に入ってもそのムードは変わりません。
 静かで不思議なフリージャズ的、フリーインプロビゼーション的な演奏が続きます。
 全編通じてとても穏やかですが、美しいメロディやノリのいいビートといった、世俗的なモノを超越したような音。
 これを流しながら静かに瞑想・・・なんて感じが合っているように思いますし、どこか違う世界にトリップ、あるいは心が浄化され、安らぐ・・・かもしれません。
 スーパージャズピアニストぶりも聞きたい所ではあるのですが、さて、次はどこに向かうのでしょう。

 近年、この人を含めて若手〜中堅のクリエイティブ系のアーティストが続々とECMに集結しているように思います。
 各々、レーベルの色合いに合っているかどうかはさておき、やはりECMにはそんな人たちを惹きつける何かがあるのでしょうし、参加するアーティストは何か持っている個性的でクリエイティブな人たちなのでしょう。
 次はLeszek Mozdzer、あるいはKurt RosenwinkelGilad HekselmanMike Morenoあたりか・・・?
 まさかの南米系、 Andrés BeeuwsaertAndré MehmariCarlos Aguirreとかはないだろうなあ・・・?




posted by H.A.