“Kulu Sé Mama” (Jun.10.16,Oct.14.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor saxophone)
Pharoah Sanders (tenor saxophone, percussion) McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums) 
Donald Rafael Garrett (bass clarinet, bass, percussion) Frank Butler (drums, vocals) Juno Lewis (vocals, percussion, conch shell, hand drums)
 
Kulu Sé Mama (Expanded Edition)
Universal Music LLC
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、公式作品としては“Ascension” (Jun.28,1965)に次ぐアルバム。
 その間で録音された “Sun Ship” (Aug.1965)、“First Meditations” (Sep.2.1965)は世に出ることはなくお蔵に入りし、発表されたのが本作。
 半年ほど間を開けた二つのセッションから構成され、違うムードの演奏が収められています。

 後のOct.14.1965のセッション、LPレコード片面を占める長尺なタイトル曲は、ボーカル入り激烈フリージャズ。
 前月のセッションに当たる“First Meditations”とは雰囲気が全く異なります。
 重々しいアフロビート、パーカッションの響きを背景にして、呪術的なボーカルとPharoah SandersとColtraneのサックスが、“Ascension”の一部のソロのように、常軌を逸したような絶叫の連続。
 全体のサウンド自体は、ダークで妖しいムードも含めてエスニックなジャズの範囲ですが、サックスが普通ではない空気感を作っています。
 切羽詰まって叫び続ける・・・そんな感じ。
 このサックスの凄まじい音を真正面からとらえることが出来るか、怖い、あるいは別のことを感じて敬遠してしまうかで、好みが分かれるのだと思います。

 LPレコードB面は先のJun.10.16.1965のセッション、Pharoah Sanders他の参加は無く、カルテットのメンバーでの演奏。
 こちらも激しい演奏ですが、“First Meditations”、あるいは“A Love Supreme” (Dec.1964)的な調性が取れたジャズ。
 “Vigil”はJohn ColtraneとElvin JonesのDuo。
 とても激烈な演奏で、“Live! at the Village Vanguard” (Nov.1961)あたりと比べてみると、サックスの音量が上がり、同じところをグルグルとも旋回しているような感じのフレージング。
 が、ビート感は一定しているし、絶叫するような場面は多くはありません。
 “Welcome”は全編ルバートでのスローバラード。
 サックスは鬼気迫るようなこの期の音使いではなく、かつての優しい系に近い演奏。
 長い演奏ではありませんが、安らかで感動的な音。
 このB面の激烈な演奏から穏やかな演奏でクールダウンする流れが、かつての定番。

 が、そんな普通のことでは満足できないColtrane。
 Jun.10,16.1965のセッションから、タイトル曲のOct.1965の間に演奏のスタイルが変わっています。
 そのきっかけは“Ascension” (Jun.28,1965)なのか、Pharoah Sandersの参加なのか?
 ここから先は沈痛で激烈な魂の叫びのようなフリージャズの世界。
 凄いのですが、体調を整え、しっかり身構えて聞かないと・・・




posted by H.A.