“Transition” (May26.Jun.10.1965) John Coltrane
John Coltrane (tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison (bass) Elvin Jones (drums)
 
Transition
John Coltrane
Impulse Records
ジョン・コルトレーン


 John Coltrane、激烈フリーの“Ascension” (Jun.1965)直前の録音の人気作。
 “A Love Supreme” (Dec.1964)以降の調整が取れた激烈ジャズですが、やはり何かただ事ではないムードも漂っているのでしょう。

 LPレコードA面は激烈モードのタイトル曲からスタート。
 シンプルなリフでハイテンションな演奏。
 終始ドラムソロのようなポリリズミックなビートに激しいピアノのリフの繰り返し。
 激しいサックスのインプロビゼーションが混ざり合いながら、陶酔感を誘う空間を作るいつものこのカルテットの演奏。
 そんな激烈な演奏もさることながら、続く優しい系のバラード演奏“Dear Load”も絶品。
 この期ではフリービートの全編ルバートでのスローバラードが増えてきているのですが、珍しく“Ballads” (Dec.1961,Sep.1962,Nov.1962)のような穏やかで淡々としたバラード。
 激烈なタイトル曲の後にこれがあるからカッコよさが倍増。
 かつてからのColtraneのアルバムの組み立ての典型的なスタイル。

 B面は組曲”Suite: Prayer and Meditation: Day, Peace and After, Prayer and Meditation: Evening, Affirmation, Prayer and Meditation: 4 A.M.”一曲。
 タイトル通り、さまざまな祈りと瞑想をイメージした演奏なのだと思いますが、起伏に富んだとても激しい演奏。
 “A Love Supreme” (Dec.1964)をコンパクトにLPレコード片面に収めたような演奏。
 冒頭からいかにもColtrane緊迫感の強い音。
 フリー混じりの激しい展開から、テンポと音量をアップダウンしながら進む音。
 ドラムはずーっとソロ状態、ピアノの激しいコンピングは、この期のこのバンドの定番スタイルの激しい演奏。
 前半のテナーの展開の中に“A Love Supreme”Pt.2のようなカッコいいリフが見え隠れしますが、とても激しい演奏の中に搔き消されてしまいます。
 続く静寂なベースのソロ演奏でクールダウン。
 これは“A Love Supreme” (Dec.1964)、あるいは後の激烈フリーになっても変わらないスタイル。
 ピアノのソロから再びテナーの激烈なソロ。
 フリーキーな音も多い激しい演奏、切迫感はより強くなり、後の同じところを来るグル回るようなフレージングも増えてきました
 が、後のような絶叫には至りません。
 終盤はフリービートで全編ルバートでのスローバラードでドラマチックに幕。
 あっという間の二十余分。
 全編手に汗握るスリル、スぺクタルの連続。
 また、絶叫~激烈フリーの世界からはかなり手前の所で止まった調性の取れた演奏です。
 あるいはその世界への行き方が分からずもがいている姿なのかもしれません。
 それがこの上もない緊張感、緊迫感に繋がっているのでしょうか?
 激しさ、緊張感、緊迫感は“A Love Supreme”よりも上。

 A面B面通じて極めて完成度の高い素晴らしい演奏集です。
 この世紀のジャズカルテットが行きついた完成形がこのアルバム、といっても過言ではないと思います。
 が、本作はお蔵入りし、日の目を見たのはColtraneの死後の1970年。
 リリースされたのは同月に録音された激烈フリージャズの“Ascension”。
 まだ激しくとも調整が取れたジャズの演奏は続いていますが、Coltrane自身の気持ちは次の世界に移っていたのでしょう。




posted by H.A.