“The Complete 1961 Village Vanguard Recordings” (Nov.1961) John Coltrane
John Coltrane (soprano, tenor sax)
McCoy Tyner (piano) Jimmy Garrison, Reggie Workman (bass) Elvin Jones (drums)
Eric Dolphy (bass clarinet, alto sax) 
Garvin Bushell (cor anglais, contrabassoon) Ahmed Abdul-Malik (tanpura) Roy Haynes (drums)
 
The Complete 1961 Village Vanguard Recordings
John Coltrane
Grp Records
1997-09-23
ジョン・コルトレーン

 John Coltrane、名作ライブ“Live! at the Village Vanguard” (Nov.1961)、“Impressions” (Nov.1961,Sep.1962,Apl.1963)に収録されたライブ録音のコンプリート版。
 最強のレギュラーメンバーにEric Dolphyが加わり、他にもインド系を含めてゲストが何人か。
 正規版は名盤、定盤ですが、聞いてみたかったのはEric Dolphy
 そちらでは出番が少ないけども、実際のステージではどんな感じだったのかなあ・・・が気になって。
 結論からすれば、バンドに溶け込んで・・・ではなく、客演の範疇。
 が、登場すれば主役の超強力バンドを食ってしまいそうな凄まじい演奏。
 この期のColtraneのサックスが全く普通に聞こえてしまいそうな爆発力と不思議感。
 この一年前、Miles Davisとの最後の共演、1960年ヨーロッパでのライブ録音諸作では、端正でオーソドックスなジャズを、ゴリゴリと激しくモーダルな演奏で壊しに行っていたのがColtraneだったように聞こえますが、本作ではその役割がEric Dolphy。
 どちらも激情型ながら、モーダルにどこまでも吹き続けるColtraneに対して、離散型で明後日の方向に飛んで行く、が、インプロビゼーションをコンパクトに収めるEric Dolphy。 
 正規版に収められた演奏だけでは見えなかったその対比が見えるます。
 Eric Dolphyとしても”At the Five Spot” (Jul.1961)が本作の少し前の録音。
 不思議かつ爆発的インプロビゼーションを展開する名作 “Out to Lunch!” (1964) まではまだ時間がありますが、“Out There” (Aug.1960)で既にぶっ飛んだ演奏を始めていた時期。
 そろそろ普通のジャズの枠組みの中で納まるのが心地悪くなっていた時期なのでしょう。
 Coltraneにしても、自由にやらせてくれたのであろう新興レーベルのImpulseで新しい音を求めていたところ。
 この期のColtraneがEric Dolphyと一緒に演奏がしたかった理由がわかるような気もします。
 正規版には収められなかったEric Dolphy 入りの"Chasin' the Trane"、“Impressions”を聞くとその違いが際立っているように思います。
 ひたすら吹きまくるColtraneに対して、Dolphyが吹き始めると時空がゆがむというか、別の世界に連れて行こうとしている・・・
 にもかからずキリッとしたサックスの音が全体のサウンドを引き締め、混沌にはなならない・・・
 そんな微妙で絶妙なバランスが最高にカッコいいと思います。
 では、John ColtraneはEric Dolphyに影響を受けたのか?
 よくわかりません。
 音楽のムードはこの時点で確立しているし、フレージングも少し前から後まで変わらないように思います。
 いずれにしてもJohn Coltrane的には後の彼の激烈な世界に突入した序盤。
 シンプルなリフ、コードの繰り返しと、激しいリズム隊、強烈な高揚感の激しいインプロビゼーションの組み合わせが陶酔感を誘う、あのJohn Coltraneの音楽。
 Eric Dolphy的には、そんなJohn Coltraneの音楽の中で、爆発的ながら、時空をゆがめるような、しかもキリッとした演奏を聞ける希少な録音。
 あの時代のジャズの凄みが満載の一作。
 一曲一曲が長尺な演奏。
 私が正規版を編集したならば、全く別の演奏を選択しただろうなあ・・・・
 と想像してしまう素晴らしい演奏揃いの素晴らしい記録です。
 John Coltraneにしろ、Eric Dolphyにしろ、Miles Davisにしろ、普通の人とは違う、一線を越えた何かがあるんだろうなあ。
 CD4枚、通して聞くことはなかなかできませんが、1セットごとに聞くと、あの時代のニューヨークの、あの決してキレイでもゴージャスでもない地下空間にトリップ出来るような感じがします。




posted by H.A.