“Loaded, Like New” (1995) Wolfgang Muthspiel
Wolfgang Muthspiel (Electric, Acoustic Guitar, Guitar Synthesizer)
Tony Scherr (Electric, Acoustic Bass) Kenny Wollesen (Drums) Don Alias (Percussion)
 
ウォルフガング・ムースピール

 オーストリアのギタリストWolfgang Muthspiel、ギタートリオ+パーカッションでのアルバム。
 “Magic Labyrinth” (1995) Marc Johnson's Right Brain Patrolとほぼ同じ時期の録音でしょう。
 こちらも同様に一風変わったコンテンポラリージャズなギターアルバム。
 冒頭からヘビーで複雑なビート、強いディストーンが掛かったギターが唸る激しい演奏。
 歪んでいてもスムースで美しいギターと、ウネウネと動きまくるエレキベースがカッコいい。
 本作はこの線かと思っていたら、色合いはさまざま。
 スパニッシュ風のガットギターとパーカッションとのDuo、ファンキーなフュージョンチューン、平和な4ビートジャズまで、多種多彩な演奏。
 さらにBeatlesナンバーが二曲入っていて、そちらはクリーントーンのエレキギター、ガットギターで不思議系ながら穏やかなバラード演奏。
 また、ダークで緊張感の高い妖しい音、といったイメージを持っていましたが、冒頭曲を除けば明るい印象。
 アルバム、楽曲ともに幅のある人のようです。
 どれも決まっていてカッコいいのですが、慣れるまではあれれ?の連続。
 マニアックかというとそうでもなく、馴染みやすい演奏、ドラム、ベース、パーカッションを含めて素晴らしい演奏が揃っています。
 でも幅が広すぎるんだろうなあ・・・?
  “Black & Blue” (1992)ではJohn Scofield、Ralph Townerを合わせたようなギタリスト、と思っていましたが、それは一面に過ぎないようです。
 ガットギターは確かにRalph Townerっぽいのですが、エレキギターはジャズ、ロックその他諸々、John Scofield、Bill Frisellその他諸々が混ざり合う誰とも言えないオリジナリティ。
 ディストーションを使った張り詰めたような音使いなどは、この人が現在のコンテンポラリーギターのドンKurt Rosenwinkelに影響を与えたのでは?と勝手に思っています。
 そんなスムースで美しい、歪んだ音。
 音色もさることながら、表現力、テクニック共に凄いことは間違いありません。
 Kurt Rosenwinkelのデビュー作“East Coast Love Affair” (Jul.1996)がこのあたりでしょうか。
 この時点ではWolfgang Muthspielの方が進んでいたように思います。
 現代ギターは多士済々ですが、好みはさておき、Kurt Rosenwinkelに次ぐ、あるいは彼を凌ぐクリエーターはこの人・・・と勝手に思っているのですが、もう時間が経つなあ・・・
 近年の作品は穏やかになって・・・




posted by H.A.