“Doo-Bop” (1991) Miles Davis
Miles Davis (composer, primary artist, trumpet) 
Easy Mo Bee (performer, producer) Deron Johnson (keyboards) J.R, A.B. Money (performer) and others
 
ドゥー・バップ
マイルス・デイヴィス



 Miles Davis、制作途上だったHip Hopアーティストとのコラボレーション作品。
 逝去する前にどこまでが出来ていたのかはわかりませんが、全体の完成度は高く、在命中に世に出ていたとしても概ねこの形だったように推察します。
 復帰作“The Man with the Horn” (Jun.1980–May.1981)からのファンクフュージョン路線が、ポップな色合いを強くしながら前作“Amandla” (Dec.1988-1989)で終了し、1990年代ファンクの端緒となるはずだった作品。
 Hip Hop、ポップでデジタル臭の強い演奏ではありますが、やはりMiles Davisの音楽になっていると思います。
 軽快なビート、もの悲し気なコードチェンジのループの中を泳ぐような哀愁漂うミュート。
 全編ミュートでの抑えたインプロビゼーション。
 強烈に吹いていない分だけ、あのクールなMiles Davisが戻ってきたようにも感じます。
 クールで淡々とした背景の中を、ただただ淡々としたクールなトランペットが泳ぐ空間。
 ジャズとかなんとかといったカテゴライズは無用でナンセンスなもので、シンプルにあの時代に求められていたヒップでクールな音がこれだったのかもしれません。
 2017年から見てこれが新しい音なのかどうかは判断できませんが、確かに心地よい音。
 もしまだMilesが存命で、演奏できる状態だったとすれば、やはりHip HopなRobert Glasperの“Everything's Beautiful” (2015)、”ARTSCIENCE” (2016)のようなサウンドを作ったのか、それとも全く別の誰かと組んで全く別の音を作っていたのか・・・?
 そんなことを想像してしまうのもこの人の作品ならでは。
 やはり今の時代ならRobert Glasperなんでしょうかね?
 それでは意外性が無くて・・・

 ・・・とかなんとか・・・・・・・
 ジャズ界の大巨人の最後の作品としてのゴージャスさには欠けるのかもしれません。
 が、出来上がったサウンドに満足することなく、新しいものを求めて最後まで変化し続けたMiles Davisの終り方としてはカッコいいように思います。
 いつも完成度が高いようで、その実、未完成で、次の展開を模索していたMilesらしい遺作。
 その余白を埋めるのは聞く側の想像力のみ・・・


 

posted by H.A.