“You're Under Arrest” (Jan.1984-Jan.1985) Miles Davis
Miles Davis (trumpet, Voices, synthesizer)
John McLaughlin, John Scofield (guitar) Robert Irving III (synthesizers, celesta, organ, clavinet) Darryl Jones (bass) Al Foster, Vince Wilburn, Jr. (drums)
Bob Berg (soprano, tenor sax)
Steve Thorton (percussion, voice) Sting, Marek Olko (voice) James "J.R." Prindiville (handcuffs)
 
You're Under Arrest
Miles Davis
Sbme Special Mkts.
マイルス・デイビス


 Miles Davis、“Decoy” (Jun.Jul.Sep.1983)に続くポップ色の強いファンク作品。
 ジャケットも含めて遊び心にあふれたポップファンク路線。
 冒頭から”Jack Johnson”のギターリフに寸劇風のvoice。
 さらにはMichael Jackson、Cyndi Lauperの大ヒットナンバーの素直なアレンジの素直な演奏。
 ちょっとねえ・・・と思っていましたが、後に“Live Around the World” (1988–1991) に収められた“Time after Time”を聞いて妙に納得。
 本作ではテーマメロディ中心、そちらは長尺、多少枯れ気味ながらも最高のトランペットソロ。
 “Somethin Else” (1958)の枯葉、“'Round About Midnight” (1955)のタイトル曲などと同様に、メロディ、コード進行共に、インプロビゼーションを乗せるにも現代最高のバラードの一つなのでしょう。
 三曲に参加したJohn McLaughlinも懐かしく、例によって激しいギターですが、想定の範囲、無難なサウンドに納まっています。
 それでもJohn Scofield作のタイトル曲はMilesの楽曲ベスト10に入りそうなハイテンションな名曲名演。
 複雑なビートに複雑にアップダウンするテーマ、構成と、強烈な疾走感。
 Darryl Jonesの本領発揮のファンキーで弾みまくるとんでもないベースラインに、どカッコいいギターのカッティング。
 こんなベースはRolling Stonesでは弾かせてもらえないんだろうなあ。
 インストでのインタールドでもいいからやってしまえば、盛り上がってカッコいいと思うんだけど・・・ 
 それに乗ったトランペットの激しいインプロビゼーションと、これがJohn Scofield?と思ってしまう凄まじいまでのギターソロ。
 まさにジェットコースターファンク。
 まさか録音テープ、早回ししていないよねえ・・・と疑ってしまうような凄まじさ。
 これはバンド全員が一世一代の名演でしょう。
 まだLPレコードが流通していた時代なのでしょうから、B面から聞けばよかったのでしょうが、CDの終盤に配置するのはあまりにももったいない大名曲、大名演。
 “Decoy”の後半に近い演奏はあり、この路線を広げていった欲しかったなあと思いますが、後にはこの種の曲は無かったと思います。
 これがCMか何かで一番最初に聞いたエレクトリックMilesだったような気もします。思い出せないけども。
 最後もすっとぼけたようなムードで終わるポップで異色なMiles Davis。
 Robert Irving III、John Scofieldとのコラボレーションも本作が最後。
 続くはヨーロッパでの客演作?“Aura” (1985)を挟んで、また違ったテイスト、Marcus Millerが主導するクールな人気作“Tutu” (Jan.-Mar.1986)。
 まだまだ変化、進化は続きます。


 

posted by H.A.